働きながら年金を受給する場合、「収入制限」に注意!
ファイナンシャルフィールド / 2021年7月9日 22時40分
年金が受給できる年齢以降も、再雇用などで働き続けることを選択する方が増えています。 働きながら年金を受け取るときに注意したいのが、収入によっては年金の一部、もしくは全部が支給停止になる可能性があるということです。どんな仕組みで、いくら以上で支給停止になるのか解説します。
働きながら年金を受け取るときのルールとは
「在職老齢年金」という制度をご存じでしょうか。勤務先の賃金と年金の合計額が一定以上になった場合に、老齢厚生年金がカットされる仕組みのことです。
この制度は、60歳以上で老齢厚生年金を受け取っている人が対象で、会社員や公務員など「厚生年金」に加入して働き続ける場合に適用されます。雇用契約ではなく自営業やフリーランスなど「国民年金」のみに加入する働き方を選んだ場合は関係ありません。
(参考・引用:厚生労働省「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました」、日本年金機構「在職中の年金(在職老齢年金制度)」(※1))
いくら稼いだら年金が「支給停止」になる?
在職老齢年金では「賃金+年金」がいくらになるのかがポイントです。
<年金の支給停止が始まる基準>(2021年時点)
●60~64歳……月28万円(2022年4月以降は月47万円)
●65歳以上……月47万円
基本月額(加給年金額を除いた老齢厚生(退職共済)年金(報酬比例部分)の月額)と総報酬月額相当額((その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12)の合計額が上記の金額以下なら、年金を全額受け取ることができます。
ここでいう賃金とは、総報酬月額相当額【その月の標準報酬月額+その月以前1年間の標準賞与額の合計÷12】のことです。手当などを含んだ給与と、賞与を1ヶ月あたりにならしたものを合計すると、おおよその金額がわかります。
年金は、基本月額を指します。老齢厚生年金の月額から加給年金(配偶者や子どもの状況に応じて加算される年金)を除いたものです。
基準を超えたら年金はいくらになる?
支給停止になる基準を超えそうな場合、年金がどれくらいカットされるのか確認しておきましょう。65歳以上の場合は以下のように計算します。
●支給調整後の年金額=基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)÷2
例えば、基本金額(年金)が月10万円、総報酬月額相当額(賃金)が月40万円の場合は次のとおりです。
●10万円-(10万円+40万円-47万円)÷2
⇒ 年金1万5000円が支給停止、受給できるのは月8万5000円
⇒ 収入は賃金40万円+年金8万5000円=月48万5000円
給与だけじゃない! 雇用保険の給付にも要注意
再雇用で賃金が大きく下がった場合などは、雇用保険の「高年齢雇用継続給付」の対象になる可能性があります。60歳以上65歳未満で、60歳時点の賃金の75%未満になった方などを対象に、その低下率に応じて給付金を支給する仕組みです。
定年後の収入ダウンをカバーできるありがたい制度ですが、これも、年金と同時に受け取る場合は年金の一部が支給停止になります。
例えば、60歳時点の賃金が月40万円だった人が、その後に月15万円で働くことになった場合、高年齢雇用継続給付金は2万2500円です。年金の支給停止額は、この給付金の4割相当ですので、9000円になります。
つまり、手元に入ってくるお金は15万円+2万2500円-9000円=「16万3500円」です。これに加えて年金が受給できる場合もありますが、金額によってはさらに在職老齢年金での支給調整もかかります。
(参考・引用:厚生労働省「雇用保険と年金の併給調整について」(※2))
雇用保険についてはもう1点、「65歳未満で老齢厚生年金を受給できる方が失業給付を受ける場合、その期間中は年金が全額支給停止される」ということも知っておくとよいでしょう(※3)。
まとめ:老後の働き方を考えるため年金制度を理解しておこう
年金制度は複雑でわかりにくいと思うかもしれません。しかし、何も知らないままだと「思ったよりもらえる金額が少ない」という事態になって老後の生活設計に支障がでるかもしれません。
まずは老後の理想の働き方を考えて、その場合に賃金・年金・給付金を考慮した手取りがいくらくらいになりそうか、一度試算してみるのがおすすめです。年金事務所などに問い合わせて確認できますよ。
(※1)
厚生労働省「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました/(3)」
日本年金機構「在職中の年金(在職老齢年金制度)」
(※2)
厚生労働省「雇用保険と年金の併給調整について」
(※3)
厚生労働省「雇用保険と年金の併給調整について」P3
日本年金機構「老齢年金ガイド(令和3年度版)」P16
(出典)
日本年金機構「60歳台前半(60歳から65歳未満)の在職老齢年金の計算方法」
日本年金機構「65歳以後の在職老齢年金の計算方法」
執筆者:馬場愛梨
ばばえりFP事務所 代表
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