無料で法律相談できる「法テラス」って? 利用条件はある? どんなトラブルの相談が多い?
ファイナンシャルフィールド / 2021年8月26日 4時10分
「法テラス」。名称は聞いたことがあるけれど、実際にどのような相談にのってくれるのか、本当に無料で受けられるのか、など疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。法テラスについて詳しく見ていきましょう。
法テラスの役割
日本司法支援センター。
法テラスの正式名称です。「法テラス」というと、民間の支援機関やNPO法人かと間違えそうですが、政府全額出資の法務省所管法人です。
法的トラブル解決の「総合案内所」として、全国で必要な情報やサービスの提供を受けられるようにと、長崎や鹿児島の離島にも事務所があります。心に光を「照らす」場、悩みを抱える人が一息つく「テラス」でありたい、との思いから名付けられています。
法律は、なかなか必要な情報にたどり着けなかったり、専門家にツテがなかったりします。弁護士に相談するにも、経済的事情で頼めないこともあります。これらの問題を解決するために置かれたのが法テラスです。
業務内容と私たちとの関わり
実は、法テラスが実施した認知度調査では、「まったく知らない。聞いたことがない」が43.7%と、まだまだ知名度が低いのが実情です。
その法テラスとはどのようなところなのか? 主な業務は次のとおりです。
1.情報提供業務
2.民事法律扶助業務
3.犯罪被害者支援業務
4.国選弁護等関連業務
5.司法過疎対策業務
この中から、知っておきたい3つの業務について説明します。
1.情報提供業務
サポートダイヤル(電話、メール)および地方事務所での面談などを通じて、法制度に関する情報と、相談機関・団体(弁護士会、司法書士会等)に関する情報を無料で提供します。昨年度の問い合わせ数は、計60万件近くに上ります。
また、日本語以外に9カ国語で対応しており、多くはアジア圏の言語です。
2.民事法律扶助業務
経済的に余裕のない方が法的トラブルにあった際に、無料で法律相談を行い(「法律相談援助」)、必要な場合、弁護士・司法書士の費用の立替え(「代理援助」「書類作成援助」)を行います。
利用には一定の条件があり、無料の「法律相談援助」は、資力条件と民事法律扶助の趣旨に適すること(報復や宣伝目的はNG)の2点があります。
資力条件は、例えば、4人家族の場合は手取り月収が29万9000円以下(東京、大阪などは加算あり)で、資産が一定額以下であることも必要です。誰もが無料、とはいかないのです。なお、相談は1回30分、同じ問題で3回までです。
「代理援助」と「書類作成援助」は、上記に加え「勝訴(和解、示談含む)の見込みがないとはいえないこと」という条件が追加されます。着手金や実費を立替えてもらった後には、償還(支払い)が必要です。こちらは「無料」ではないので注意が必要です。
訴訟にかかる費用目安が法テラスのホームページ(末尾記載)に載っているので、参考にしてください。
3.犯罪被害者支援業務
殺人、傷害、性被害、DVなどの犯罪被害にあった方やその家族の状況に応じ、支援情報の提供や、弁護士費用の援助制度の案内などのサポートを行っています。
どんな相談や援助が多いのか?
最後に、具体的な相談内容や援助した事件分野について見ていきます。まず、サポートダイヤルへの問い合わせ内容です。
表1.
日本司法支援センター(法テラス)ホームページから著者作成
相談の守備範囲がとても広いことがわかります。また、男女・夫婦間の問題は女性からの相談が圧倒的に多いことも見て取れます。
次に、無料の「法律相談援助」の事件別内訳です。
表2.
日本司法支援センター(法テラス)ホームページから著者作成
自己破産と離婚、多重債務が上位を占めています。表1.のサポートダイヤルから具体的な相談に発展するケースが多いのでしょう。
次に、犯罪被害者支援ダイヤルへの問い合わせ内容です。
表3.
日本司法支援センター(法テラス)ホームページから著者作成
架空請求やネット取引などの消費者被害が非常に多いですね。ただ、相談に至るケースは氷山の一角かもしれません。なお、2018年からDV、ストーカー、児童虐待に関して、資力に関わらず法律相談を行う「DV等被害者法律相談援助業務」が開始されています。
なお、この支援ダイヤルを知るきっかけを聞いたアンケートでは、「再利用」という回答が36.8%で最多を占めています。資料には「利用者の高い満足度がうかがえる結果と言える」とありますが、反復・長期化し解決に時間を要する事案が多いことを裏付けているともいえるのではないでしょうか。
以上、法テラスの概要について説明してきましたが、昨年から、やはりコロナ禍の影響による相談が増えているようです。収入減による借金返済の遅れ、休業時の補償相談など、労働問題や金銭の借り入れを中心に毎月1000件以上の相談が寄せられています。
生活を守るためのセーフティーネットとしての役割は一層大きくなっていると思われます。
出典
日本司法支援センター(法テラス)ホームページ
執筆者:伊藤秀雄
CFP(R)認定者、ファイナンシャルプランナー技能士1級、第1種証券外務員、終活アドバイザー協会会員、相続アドバイザー。
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