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【おさらい】おカネやモノがもらえるわけでもないのに……。「自社株買い」は、どうして株主優遇になるの?

ファイナンシャルフィールド / 2021年9月30日 11時40分

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株式投資をする目的は、いろいろあります。株価が上昇すれば、売ったとき利益が出ます。定期的に配当金をもらえる場合も少なくありません。   そして株主優待。配当金とは別に、自社の製品・施設・サービスが無料や割引価格で提供されたり、自社にゆかりのある物産品や特定の商品・サービスに使える金券をもらえることがあって魅力的です。   いずれも、株主がおカネ、モノ、サービスを具体的に手にできます。しかし、そうしたリアル感がまったくないのが「自社株買い」。これも株主優遇策の1つだといわれますが、どうしてなのでしょうか。

「自社株買い」とは

自社株買い(自己株式取得)とは、会社が発行している株式を自らの資金を使って株式市場から買い戻すことです。株式を発行して資本を充実・維持するという、会社の本来の姿とは真逆の行為になります。
 
もともとは原則禁止でしたが、限定的な条件のもとで認められるにようになりました。そして、資本市場の効率化や活性化、ストックオプション制度導入、さまざまな形態の事業再編など時代ごとの変化を反映しながら、所定の手続きのもとで原則容認されるような形へと大きく変遷しました。
 
では、自社株買いがどうして株主優遇策なのか。日本証券業協会のサイトでは、次の2点が解説されています(※)。
 

●自社株買いした株式を消却する(無効とする)ことで、会社の発行済み株式総数が減少し、「1株当たりの価値」が高くなる。
 
●「1株当たりの当期利益」も増加することになり、自社の利益の一部を株主に支払うのと同じ効果となるため、配当と同様に株主還元策の1つとされている。 

 

株主還元になる仕組み

仮に、次のような自社株買いの事例を想定してみましょう。
 

◇発行済み株式数          200万株
◇自社株買い株式数        20万株(発行済み株式数の10%)
◇当期利益           8000万円
◇株価                 800円

 
この自社株買いを実行し全部を消却すると、発行済み株式数は180万株に減ります。この結果「1株当たりの価値」は、その分だけ増えることになります。
 
当期利益は、配当の原資となるものです。その全部が配当されるわけではなく、逆に当期利益額以上が配当される場合もありますが、1株当たりの当期利益は40円(8000万円÷200万株)から44.4円(8000万円÷180万株)に増えます。その分だけ配当原資のベースが増加し、実際の配当金が増額されることも期待できます。
 
また、株価が1株当たり当期利益の何倍になるのかの数値「株価収益率=PER(Price Earnings Ratio)」で見ると、自社株買いの結果20倍(800円÷40円)から18倍(800円÷44.4円)に減ります。
 
この数値は、低いほどその株価が割安といわれますので、株価が上昇しやすくなります。PERが自社株買いの前後とも20倍で同じだとすれば、株価は800円(40円×20倍)から890円近く(44.4円×20倍)まで上昇することも期待できるわけです。
 
また、会社のすべての資産から負債(借金やまだ支払っていないツケなど)を差し引いたものを純資産(株主資本)といいます。つまり、会社が仮に解散した場合の今の正味価値です。
 
自社株買いして消却をすると、純資産のうち資本金の額が減ります。当期利益を純資産で割り算した数値は増えるので、「少ない株主資本で効率よく利益を上げている」という評価となり、やはり株価の上昇が期待できます。
 
このように、配当金や株主優待品のような目に見える直接的な株主還元ではないものの、1株当たりの価値や評価が上がります。その結果、株価上昇や増配という形で間接的に株主還元の効果がもたらされるのです。
 

まとめ

上場企業が自社株買いを決定した場合、直ちにその内容を開示することが義務付けられています。株式関連サイトでこうした動きの概要を一覧できるものもあり、あるサイトで検索してみると、今年8月の1ヶ月間で100社以上もの自社株買いが公表されていました。
 
会社の評価や株価が上がることは、株主だけではなく会社にとってもよいことです。とはいえ、自社株買いは万能の策ではありません。 
 
自社株買いを公表すると、市場が好感して株価は上昇しやすいといわれます。そうなることも多いですが、絶対ではありません。また株価の上昇が一時的なものにとどまり、長い目で見ると低迷基調が続くようなこともありえます。
 
自社株買いが株主還元策であることは間違いないでしょう。しかし、この1点だけに着目して投資を決断するものではなく、あくまでもいろいろな判断材料の1つとしてとらえるべきです。
 
[出典]
(※)日本証券業協会「投資の時間」~「自社株買い」
 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士

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