「年金」は老後のためだけではない? けがや病気にも役立つって本当ですか?
ファイナンシャルフィールド / 2021年10月20日 23時10分
私たちが保険料を支払っている国民年金そして厚生年金の仕組みは、老後に関わる老齢年金の給付だけではなく、けがや病気で一定の障害の状態になった際に受給できる障害年金もあります。 障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があり、けがや病気の時期や障害の程度によって、受給できる年金やその額が異なります。
障害基礎年金
障害基礎年金は、次の要件をすべて満たした際に受給できます。
■受給要件
1.障害の原因となった病気やけがの初診日が次のいずれかの間にあること。
ここでいう「初診日」とは、障害の原因となった病気やけがにおいて、初めて医師等の診療を受けた日のことをいいます。
●国民年金に加入している期間
●20歳未満または日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満の人で、国民年金の制度に加入していない期間
ただし、老齢基礎年金を繰り上げ受給している方は対象外です。
2.障害の状態が、障害認定日または20歳に達したときに、 障害等級表に定める1級または2級に該当していること。
「障害認定日」とは、障害の状態を定める日のことで、その障害の原因となった病気やけがについての初診日から1年6カ月を経過した日のことをいいます。また、障害認定日に障害の状態が軽くても、その後重くなったときは「事後重症の請求」を行うことにより、障害基礎年金を受給できます。
3.初診日の前日に、初診日がある月の2ヶ月前までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること。
ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件は不要となります。また、特例として、以下の条件をすべて満たす場合は納付要件を満たしていると判断されます。
●初診日が2026年4月1日前にあること
●初診日において65歳未満であること
●初診日の前日において、初診日がある2ヶ月前までの直近1年間に保険料の未納期間がないこと
障害厚生年金
障害厚生年金を受給できる方は、以下の要件をすべて満たす方です。
■受給要件
1.厚生年金保険の被保険者である間に、初診日(障害の原因となった病気やけがで初めて診察を受けた日)があること。
2.障害の状態が、初診日から1年6ヶ月を経過した障害認定日に、障害等級表に定める1級から3級のいずれかに該当していること。また、障害認定日では障害の等級が軽くても、その後症状が重くなり、障害等級表に定める状態となった場合は、障害基礎年金と同様に「事後重症の請求」を行うことにより、障害厚生年金を受給できます。
3.障害基礎年金と同様の保険料納付要件を満たしていること。
障害厚生年金の場合は、等級が3級まである点が障害基礎年金と異なります。また、以下のような障害手当金の制度もあります。
■障害手当金(一時金)
障害厚生年金の制度には、障害基礎年金にはない「障害手当金(一時金)」の制度があります。この制度を受けるための要件については、以下のとおりです。
1.厚生年金保険の被保険者である間に、障害の原因となった病気やけがの初診日があること。
2.障害の状態が、次の条件すべてに該当していること。
●初診日から5年以内に治っていること(症状が固定していること)
●治った日の症状が障害厚生年金を受け取ることができる状態(障害年金等級1~3級)よりも軽いこと
●障害等級表に定める障害の状態であること
3.障害基礎年金と同様の保険料納付要件を満たしていること。
(出典:日本年金機構「障害年金」(※1))
障害年金を受けることができる障害の程度とは?
障害等級表に詳しく定められていますが、障害等級1級と2級に該当する場合は、障害基礎年金および障害厚生年金の受給対象です。しかし、障害等級3級に該当する方は障害厚生年金のみが対象となり、障害基礎年金を受け取ることはできません。
1~3級の障害の程度については、以下の目安に基づいて判断されます。ただし、身体障害者手帳の等級と、障害年金の等級は異なりますので注意が必要です。
■1級から3級の障害の程度
1級:他人の介助を受けなければ自分の身の回りのことができない程度の状態であること
●入院や在宅介護を必要とし、活動の範囲がベッドの周辺に限られる
など
2級:日常生活に著しい制限を受けるか、そのような制限を必要とする状態であること
●家庭内で軽食をつくるなどの軽い活動はできても、それ以上重い活動はできない
●入院や在宅で、活動の範囲が病院内・家屋内に限られる
など
3級:労働状況に著しい制限を受ける、または労働に対して著しい制限を加えることを必要とするような状態
●日常生活にはほとんど支障はないが、労働については制限がある
など
(出典:日本年金機構「障害認定に当たっての基本的事項」(※2))
障害年金の受給額
障害年金の受給額は、障害基礎年金と障害厚生年金によって異なります。
■障害基礎年金の受給額
1級:老齢基礎年金満額×1.25(令和3年度受給額:97万7125円)
2級:老齢基礎年金満額と同額(令和3年度受給額:78万900円)
ちなみに、年度年齢18歳未満など加算対象となる子どもがいる場合は、その子どもの人数によって加算されます。
■障害厚生年金の受給額
1級:報酬比例の年金額×1.25
2級:報酬比例の年金額
ちなみに配偶者がいる場合は、加給年金額が加算されます。
3級:報酬比例の年金額(ただし、58万6300円の最低保証額あり)
障害手当金(一時金):報酬比例額の年金額×2(ただし、117万2600円の最低保証額あり)
ここでいう報酬比例の年金額については、以下の計算式にて求められた額となります。
{平均標準報酬月額×1×(7.125/1000)× 平成15年3月までの加入期間の月数}+{平均標準報酬月額×1×(5.481/1000)× 平成15年4月以降の加入期間の月数}
報酬比例の年金額の計算は自分で算出することはなかなか難しいので、詳細は年金事務所にて確認するようにしてください。
(出典:日本年金機構「障害年金」(※1))
まとめ
年金には、原則として65歳から受け取れる老齢年金と、今回説明した病気やけがによる障害年金、さらに亡くなった方の遺族に支払われる遺族年金があります。それぞれに受け取れる要件が決まっていますが、共通しているのは納付要件を満たしていることです。
不測の事故や病気などで障害の状態になった際に、障害年金が受け取れないことがないように、保険料は未納の期間を作らないように心がけておくことが大切です。
出典
(※1)
日本年金機構「障害年金」
(※2)
日本年金機構「障害認定に当たっての基本的事項」
日本年金機構「障害年金ガイド 令和3年度版」
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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