国民年金保険料の免除制度。将来もらえる年金額はどう変わる?
ファイナンシャルフィールド / 2021年11月16日 0時0分
国民年金は老後の経済的支えの1つとなりますが、家計の状況によっては保険料の支払いが困難になる場合もあるかと思います。 国民年金には、そのような場合に利用できる保険料の免除・納付猶予制度があります。制度の内容と、免除や猶予を利用したときに将来の年金はどう変わるのか見ていきましょう。
国民年金保険料の免除と納付猶予
国民年金保険料の支払いが困難になったとき、利用できる制度に「保険料免除制度」と「保険料納付猶予制度」の2つがあります。
保険料免除制度とは
一定の所得以下の世帯で、国民年金保険料を支払っている人が申請を行うことで保険料の免除を受けられる制度です。このとき、一定の所得かどうかは申請者本人以外に、世帯主と配偶者も審査の対象となります。
保険料の免除には、所得を基準とした4つの種類があります。それぞれに応じて保険料が免除された期間分について、保険料を全額納付した場合と比較して将来の年金額は図表1のとおりとなります。
分かりやすい例だと、保険料を40年間納付した場合と、40年間全額免除となった場合では、受け取れる老齢基礎年金の年金額(令和3年度)の目安は図表2のとおりになります。
上記のように、たとえ保険料が40年間全額免除された場合であっても、免除制度においては年金額がゼロにはならないことが分かります。また、免除期間中も老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金を受け取るために必要な受給資格期間にカウントされます。
保険料納付猶予制度とは
20歳から50歳未満で、本人と配偶者が一定の所得以下の場合、申請を行うことで保険料の納付について猶予を受けられる制度です。免除制度と同様に、猶予期間中も老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金を受け取るために必要な受給資格期間として扱われます。
免除制度との違いは、保険料が猶予された期間分については、将来の老齢基礎年金の受給額には反映されないという点です。そのため、保険料を追納しない限り、老齢基礎年金の受給額は増えません。
免除制度や納付猶予制度を利用するメリット
免除制度や納付猶予制度を利用せずに保険料を支払わないでいると、保険料の未納扱いになります。未納中は老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金を受け取るために必要な受給資格期間にカウントされませんし、各年金を受け取れない可能性もあります。
免除制度を利用することで、将来の老齢基礎年金の年金額にも反映されます。また、免除や猶予期間中であっても、けがや病気で障害を負ったり、死亡した場合でも障害年金や遺族年金を受け取ることができます。
追納をして年金額を増額できる
保険料の免除であれ納付猶予であれ、10年以内であれば保険料を追納して老齢基礎年金の受給額を満額に近づけることができます。
収入に余裕ができたら、将来、年金をより多くもらうために追納しておくべきですが、免除や猶予を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降は、当時の保険料に一定の加算額が上乗せされることには注意が必要です。また、追納した場合、その期間は納付期間として取り扱われます。
免除や納付猶予には審査がある
免除や納付猶予を受けるためには、申請して審査に通る必要があります。
申請書は、住民登録をしている市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口へ持参、もしくは郵送での提出となります。申請後は日本年金機構にて審査が行われ、決定通知書により本人に通知されます。
申請は原則として毎年度必要です。ただし、全額免除または納付猶予の承認を受けた人が、翌年度以降も全額免除・納付猶予の申請を希望する場合は、継続して申請があったものとして審査(継続審査)が行われます。
特例による免除や納付猶予
免除や納付猶予には、いくつかの特例があります。
例えば、2020年2月以降、新型コロナウイルス感染症の影響による収入減少を理由とした臨時特例の免除制度や、失業や災害などにより保険料を納めることが困難な場合に、本人などの所得の審査を行わずに免除が承認される特例免除もあります。
また、学生については在学中の保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」もあります。学生納付特例制度は、本人の所得が一定以下であれば保険料の納付猶予を受けられ、家族の所得は審査対象となりません。
それぞれの特例の申請には必要な書類が異なりますので、漏れのないよう確認するようにしましょう。
国民年金保険料の支払いが困難なときには忘れず申請を
国民年金保険料の支払いをしないまま放置しておくと保険料未納扱いとなり、将来、年金がもらえなくなったり、年金額が少なくなってしまうだけでなく、万が一のときに助けになるはずの障害年金や遺族年金も受給できなくなってしまう可能性があります。
保険料の支払いが困難になったときは免除制度や納付猶予制度を利用できるため、忘れずに申請を行うようにしましょう。
出典
日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)
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