年収が下がるとなぜ年金受給額が減るの? 仕組みを解説
ファイナンシャルフィールド / 2021年11月30日 11時10分
「年収が下がると将来もらえる年金が減る」ということを知っている人は多いでしょう。しかしこれは、厚生年金に加入する会社員や公務員に限ったことだというのはご存じでしょうか。 ここでは、公的年金の仕組みや年金額の計算方法を分かりやすくまとめました。本記事を参考にして、年収と年金受給額の関係について理解を深めてみましょう。
公的年金の仕組み
日本の公的年金制度は、日本に住む20~60歳未満の人が全員加入する「国民年金(基礎年金)」と、会社に勤める人や公務員などが加入する「厚生年金」の2階建てです。年金の加入者は次の3つに区分されています。
●加入する制度:国民年金
●該当者:個人事業主、学生、厚生年金の加入要件を満たさないフリーター、無職など
●保険料の負担:自己負担
●加入する制度:国民年金+厚生年金
●該当者:会社員、公務員など
●保険料の負担:勤務先の企業や団体と折半
●加入する制度:国民年金
●該当者:第2号被保険者の扶養に入っている配偶者
●保険料の負担:負担なし(第2号被保険者全体で負担)
3区分のうち会社員や公務員などの第2号被保険者は、現役時代の年収に応じて受給できる年金額が変わります。なぜなら、厚生年金(老齢厚生年金)の受給額は、働いていたときの給与などの金額をもとに計算するためです。
以下で、国民年金・厚生年金の受給額の計算方法を説明します。
国民年金(老齢基礎年金)の受給額の計算方法
国民年金(老齢基礎年金)の受給額は、保険料を納めた期間から計算します。満額をもらえるのは、20~59歳の40年間(480ヶ月)、保険料を全額納めた場合です。
年間の年金受給額計算式は、次のとおりです。
年金受給年額=78万900円(満額のときの年金受給年額)×(保険料納付済月数+全額免除月数×4/8+3/4免除月数×5/8+半額免除月数×6/8+1/4免除月数×7/8)÷480ヶ月(加入可能月数)
例えば、全額免除期間が2年間(24ヶ月)ある場合の年金受給額は、次のように計算できます。
78万900円×(456ヶ月+24ヶ月×4/8)÷480ヶ月=76万1378円
ただし、60~64歳に受給を開始する「繰り上げ受給」を申請する場合は、受給開始年齢に応じて、一定割合が受給額から減額されることに留意が必要です。また、66~70歳に受給を開始する「繰り下げ」受給を申請すると、受給開始年齢に応じて一定割合が増額されます。
厚生年金(老齢厚生年金)の受給額の計算方法
老齢厚生年金の受給額は、基本的には「報酬比例部分」と「定額部分」の合計で決まります。このうち現役時代の年収に左右されるのは、報酬比例部分です。報酬比例部分は次の式で計算します。
報酬比例部分=(平均標準報酬月額×生年月日に応じた率×平成15年3月までの被保険者期間の月数)+(平均標準報酬額×生年月日に応じた率×平成15年3月以降の被保険者期間の月数)
平均標準報酬月額とは平成15年3月までの被保険者期間の毎月の標準報酬月額(※1)を合計し、平成15年3月までの被保険者期間の月数で割って求めます。
平均標準報酬額は、平成15年4月以降の被保険者期間の毎月の標準報酬月額および標準賞与額(※2)を合計し、平成15年4月以降の被保険者期間の月数で割った金額です。報酬比例部分は、現役時代の給与や賞与が多いほど、金額が大きくなります。
(※1)手当などを含む税引き前の給与の額を、一定幅に区分した報酬月額に当てはめた金額
(※2)税引き前の賞与額から千円未満を切り捨てた金額
一方、定額部分の計算式は次のとおりです。
定額部分=1628円×生年月日に応じた率×被保険者期間の月数
実際の受給額には、報酬比例部分・定額部分のほかに、配偶者や子の状況、60歳以降の就業状況、繰り上げ・繰り下げ受給の状況などが反映されます。
年収と年金受給額の関係を理解しよう
年収が下がると年金受給額が減るのは、主に会社員や公務員です。年金受給額は年収に比例するわけではなく、老齢厚生年金の報酬比例部分だけが年収に応じて増減します。
年収と年金受給額の関係について理解すると、将来もらえる年金がどれくらいあるのかを試算しやすくなります。年金受給額の見通しをしっかりと立てて、定年までの働き方や老後資金の計画に活かしましょう。
【出典】
日本年金機構 老齢基礎年金(昭和16年4月1日以前に生まれた方)
日本年金機構 老齢厚生年金(昭和16年4月2日以後に生まれた方)
日本年金機構 令和3年4月分からの年金額等について
日本年金機構 厚生年金保険の保険料
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
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