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障害年金のウソ? ホント?(8)「障害年金を受給すると就労先に知られてしまう? 」

ファイナンシャルフィールド / 2021年12月21日 10時30分

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障害年金の相談を受けていると、ちょっとした思い違いをしている人や、誤ったうわさ話を信じ込んでいる人が少なくないことに気づきます。そうした人たちは、後になって「しまった! 」となりかねません。   そんなことにならないために、あらかじめ正しい知識を身に付けておきましょう。第8回は「障害年金を受給すると就労先に知られてしまう? 」です。

原則は、本人が言わない限り、就労先に知られることはない

障害年金を受給すると就労先に知られてしまうのではないか、と気にして障害年金の受給をためらっている人がいます。障害年金の受給は、国民として、あるいは被保険者として当然の権利であって、何ら隠す必要はないのですが、それはわかっていても就労先に知られたくない事情があるのでしょう。
 
結論からいうと、障害年金を受給していても、受給している本人が言わない限り、就労先に知られることはありません。重要な個人情報として制度的に守られているからです。
 
ただし、もっと正確にいうと、これは原則です。例外は、やはりあります。その例外をチェックしておきましょう。
 

例外は、同一傷病で傷病手当金も受給する場合

【例外その1】
本人が障害年金と並行して同一傷病で傷病手当金も受給する場合

 
傷病手当金は健康保険の制度で、傷病のために休職した場合に受給できます。細かい条件を省いてざっくりといえば、休職前の給料の約3分の2が保障されます。月給が30万円だった人が休職をして、月給がゼロになった場合は、20万円が支給されるわけです。期間は通常1年6ヶ月間です。
 
ところが、傷病手当金と障害年金は制度上、両方を満額受給することはできず、どちらか多い額に調整されます。傷病手当金のほうが障害年金より高額になる場合が多いので、仮に、傷病手当金が20万円、障害年金が12万円として考えてみます。
 
この場合は、障害年金の12万円が満額支給され、20万円マイナス12万円の8万円が傷病手当金として支給されます。合わせて20万円になります。
 

障害年金の受給について記入する欄がある

上記の理由から、傷病手当金を支給する健康保険としては、障害年金の受給の有無を把握したいわけです。このため、傷病手当金の申請書には、障害年金の受給について記入する欄があります。
 
ただし、障害年金といっても、傷病手当金と調整されない種類もあります。例えば、発達障害やうつ病などの精神疾患で障害年金を受給している人が就労中に胃がんなどの内臓疾患で手術を受け、傷病手当金を受給する場合などです。
 
この場合は、調整はありませんので、本来は障害年金の受給を明らかにする必要はありません。ただ、調整があるかどうかは、多くの人にとって判断が難しい場合があります。
 
こうした事情から、すべての障害年金の受給の有無の記入を求める健康保険もあれば、障害厚生年金に絞って記入を求める健康保険もあります。この辺は、自身が加入している健康保険の傷病手当金の申請書を点検してみないとわかりません。
 

障害年金を含む年収が180万円以上になった場合も

【例外その2】
障害年金を受給していることが家族の就労先に知られる場合

 
次の2通りがあります。
 
(1)障害年金を含む年収が180万円以上になり、家族の社会保険の扶養から外れるとき
 
家族の社会保険の扶養に入る年収の条件は、一般が130万円未満、障害者が180万円未満です(このほか、同居の場合は、原則として年収が被保険者の年収の半分未満であること、などの要件もあります。以下同様)。
 
障害年金だけで年収が180万円以上になる場合は多くはありませんが、障害者自身もパート勤務などに就いていれば、ありうることです。扶養から外れる場合は、その理由となる年収を明らかにする必要があり、年金額のわかる通知書などのコピーを家族の勤務先に提出します。
 
この通知書には、年金の種類が書かれており、障害年金を受給していることがわかります。なお、家族の扶養から外れた場合は、一般的には自身で国民年金保険料と国民健康保険料を納付します。
 

新たに家族の社会保険の扶養に入る場合も

(2)障害年金を受給中に新たに家族の社会保険の扶養に入るとき
 
上記の(1)のように、障害者は年収が180万円未満の場合、家族の扶養に入ることができます。新たに家族の扶養に入るときも、年金額のわかる通知書などのコピーを家族の勤務先に提出します。
 
障害年金を受給していることをどうしても家族の就労先に知られたくない場合は、扶養に入るのをあきらめるか、扶養に入った後で障害年金を請求するしかありません。
 

「ウソ」だけど、特別な場合には「ホント」になりうる

これらのほか、関係機関の事務処理上のミスやハッカーによるサイバー攻撃での情報流出などで障害年金の受給が他人に知られる可能性もありますが、そこまで心配していてはキリがありませんね。
 
「障害年金を受給すると就労先に知られてしまう」の「ウソ・ホント」の判断は「ウソ」だけど、特別な場合には「ホント」になりうるといえるでしょう。
 
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士

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