北海道の新球場 命名権契約が国内過去最高の理由とは?
ファイナンシャルフィールド / 2022年5月16日 23時40分
2022年度に新庄剛志BIGBOSS(監督)を起用し、話題となっている北海道日本ハムファイターズ。2023年3月からは北海道北広島市の「ES CON FIELD HOKKAIDO(以下、エスコンフィールド北海道)」に本拠地を移します。 「エスコンフィールド北海道」は建設が始まる前の2020年にネーミングライツを売却したことでも知られています。果たして、これはどのような戦略があるのでしょうか。
ネーミングライツとは
近年、多くのスポーツ施設や文化施設には施設名にスポンサーの企業名が付いているのが当たり前になりました。これは施設を保有する自治体や企業が命名権(ネーミングライツ)を売却していることによるものです。日本で初めて公共施設にネーミングライツが導入されたのは東京スタジアムで、2003年から「味の素スタジアム」として親しまれています。
ネーミングライツを売買することのメリットは、売却する側にも購入する側にもあります。ネーミングライツを売却する施設の運営団体は、施設の維持管理費などの負担が減ります。地方自治体にとっては経費の節約にもつながるでしょう。
一方、購入する企業にとっては、地域の住民や施設の利用者に対して大きな宣伝効果を得られます。テレビの報道などでも、施設名を呼んでもらう機会が増えます。それに施設がある自治体に住む人に対して、ネーミングライツを購入した企業が地域活性化に貢献していることが伝わります。特に地域に根付く中小企業にとっては、大きな宣伝効果となるでしょう。
日本ではこれまで、既存の施設を維持するためにネーミングライツを売却するというのが一般的でした。また契約期間は3~5年で、「味の素スタジアム」の場合でも契約更新が行われています。
一方でアメリカでは、今回の「エスコンフィールド北海道」のように、施設を建設する前に長期にわたる契約を行い、建設費用を確保するやり方が一般的です。メジャーリーグのホームグラウンドを建設する際には、20年を超える契約をするケースもあります。
着工前に異例のネーミングライツ契約をした理由
北海道日本ハムファイターズの現在の本拠地は「札幌ドーム」。これは球団ではなく札幌市が所有しているものでプロサッカーの北海道コンサドーレ札幌の本拠地でもあります。
球団が所有する施設ではないため、広告収入が入っても球団に還元される割合が少なく、さらに球団側は本拠地として利用するために高額な費用を払っていました。また、球場をファンにとって魅力的なものとしたくても「間借り」している状態だったため柔軟に対応できませんでした。
「エスコンフィールド北海道」を建設するにあたって、球団は不動産会社の日本エスコンと10年以上にわたる大型契約を結んだことが明らかになっていて、1年当たりの契約金収入は日産スタジアム(横浜市)の4.7億円を超え、日本最高額と言われています。
これは総額600億円ほどといわれる建設費用の10%ほどを占めるのではないかとも考えられています。着工前に契約を結んだのは日本では異例のことですが、球団側は本拠地建設にかかる多大な費用負担を軽減できます。
一方、このネーミングライツ契約には、まちづくりへの共同参画も含まれていて、日本エスコンも新球場のオープン前から名前を宣伝できるだけでなく、球場周辺のまちづくりに参加できます。
「エスコンフィールド北海道」は天然芝を使用し、開閉式の屋根をそなえた収容人数3万5000人の球場となる予定です。また、球場にはホテルや温泉の入った複合型施設が併設され、球団のファンだけでなく地域住民や観光客にとっても魅力的な街となることが期待されています。
サービスの充実や地域活性化にも
新球場の建設中からネーミングライツを導入するという手法は、アメリカのスタジアムやアリーナ建設ではすでに導入されていますが、日本で導入されるのは異例のことです。しかしメリットが知られれば、国内の他の公共事業でも取り入れることができ、経費の節減や税金の負担軽減、さらにサービスの充実や地域活性化などの効果を得られる可能性が高まるでしょう。
出典
北海道ボールパーク HOKKAIDO BALLPARK F VILLAGE
北海道日本ハムファイターズ ボールパークプロジェクト
【日本エスコン】プレスリリース
【北広島市】ボールパーク特設サイト
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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