“相続”が発生したらすぐ手続きを! 期限はいつまで? 過ぎたらどうなる?
ファイナンシャルフィールド / 2022年6月8日 2時50分
もしも家族が亡くなったら、悲しみに暮れる間もないほど次々に各種手続きが必要になります。相続の手続きもその1つです。 相続の手続きには、明確な期限が定められているものがいくつもあります。いつまでに何をする必要があるのか、おおまかな流れを確認しておきましょう。
相続手続きの流れと期限
人が亡くなると、相続が発生します。相続に関する各種手続きは、期限が以下のように定められています。
■3ヶ月以内:相続放棄の申し出
相続には、財産も借金もすべて受け継ぐ「単純承認」、財産も借金もどちらも受け継がない「相続放棄」、財産の範囲内で借金も受け継ぐ「限定承認」の3種類があります。
相続人は、おのおのがどの方法で相続をするか否かを選べますが、相続放棄か限定承認を選ぶ場合は、「自己のために相続の開始があったことを知ったとき(基本的には亡くなった日)」から3ヶ月以内に、家庭裁判所に申し出る必要があります。
■4ヶ月以内:準確定申告
亡くなった人の代わりに確定申告を行うことを「準確定申告」といいます。亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得や税額を計算して、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に税務署に申告します。
ただし、亡くなった人が確定申告を必要としない人だった場合は、この手続きは不要です。
■10ヶ月以内:相続税の申告と納付
相続税が発生する場合は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に、申告と納付を済ませましょう。まだ遺産分割の協議が終わっていない状態でも、ひとまず法定相続分で相続したと仮定して手続きします。
もしも仮に遺産分割協議が終わっていない場合には、「申告期限後3年以内の分割見込書」を相続税申告書に添付することによって、分割協議が済んだ後、さかのぼって特例の適用を受けることができます。
一方で、相続財産が基礎控除額「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」以下の場合など、相続税がかからないケースがあります。ただ、その場合でも相続税が「0円」であることを申告することが必要なケースもありますので注意してください。
■1年以内:遺留分侵害額の請求
遺留分とは、一定の相続人について、法律で最低限認められている相続時の取り分のことです。例えば遺言で「長男にすべての財産を相続させる」と書いてあったとしても、次男は自分の遺留分を請求できます。
この相続があることを知ったときから1年以内、知らなかった場合でも相続開始のときから10年以内に、家庭裁判所に申し立てる必要があります。
■2年以内:埋葬料・葬祭費の請求
亡くなった人が加入していた健康保険(公的医療保険)から受け取れるのが、埋葬料や葬祭費です。
どちらも葬儀を執り行った人に支給されるものですが、亡くなった人が協会けんぽ(全国健康保険協会)や健康組合などの健康保険に加入していた場合は「埋葬料(埋葬費)」、国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入していた場合は「葬祭費」となります。
時効を迎えると請求できなくなるので要注意です。亡くなってから2年以内に手続きを済ませるようにしましょう。
■3年以内:死亡保険金の請求
民間の保険会社で死亡保険などに加入していた場合は、保険金を請求できます。保険は「3年」で請求する権利が消滅する(時効を迎える)ため、なるべく早めに保険会社か保険代理店に連絡して、請求手続きを進めましょう。
■3年以内:遺産分割協議を完了させる
前述のように、相続税の申告・納税(10ヶ月以内)時点で遺産分割協議が終わっていなかった場合は、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しているはずです。3年たってもまだ遺産分割協議が済んでいない場合、税金の軽減措置などが受けられなくなります。
■5年10ヶ月:相続税の還付請求
相続税を納めすぎていた場合は、税務署で手続きすれば、払い過ぎた税金が戻ってきます。税務署で「更正の請求手続き」をしましょう。相続の開始があったことを知った日の翌日から5年10ヶ月を超えると、できなくなってしまうので注意が必要です。
期限を過ぎてしまったらどうなる?
「手続きをすっかり忘れていた」「親族間の話し合いがもつれた」など、決められた期限を守れない人もいるでしょう。期限内に手続きを完了できなかった場合、次のような事態に陥る可能性があります。
・相続税の軽減措置が利用できなくなる
・延滞税を支払う必要が出てくる
・受け取れたはずのお金が受け取れなくなる
いずれも金銭的に大きなデメリットがあるため、できるだけ早く、漏れなく手続きを終えるようにしましょう。
まとめ
相続の手続きには期限が定められているものが多数あります。「あと10ヶ月ある」と思っていても、お葬式やお墓の手配や保険金の請求などをしていると、あっという間に時間が過ぎていき、余裕がなくなってしまうかもしれません。
期限を過ぎてしまうと、余分に税金を負担することにもなります。相続人同士で連絡を取り合いながら、迅速に手続きを進めていきたいところです。
出典
裁判所 相続の放棄の申述
裁判所 遺留分侵害額の請求
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)
国税庁 相続税のあらまし
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.4102 相続税がかかる場合
国税庁 第27条《相続税の申告書》関係
国税庁 [手続名]相続税の申告書の提出期限から3年以内に分割する旨の届出手続
国税庁 [手続名]相続税及び贈与税の更正の請求手続
富津市 国民健康保険に加入していた方が亡くなられたときの葬祭費支給
大阪市 後期高齢者医療に加入されている方が亡くなられたときは、葬祭を行った方に葬祭費が支給されます。
観光産業健康保険組合 被保険者本人の死亡―埋葬料(埋葬費)
全国健康保険協会 ご本人・ご家族が亡くなったときの給付金 埋葬料(費)・家族埋葬料編
執筆者:馬場愛梨
ばばえりFP事務所 代表
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