【権利】夫の死後もわが家に住み続けるために…配偶者居住権について解説
ファイナンシャルフィールド / 2022年6月28日 10時10分
自宅の所有者が自分ではなく配偶者の場合、その配偶者が亡くなってしまったら、住み慣れたわが家を出ていかなければならないのでしょうか? 所有者が亡くなったあとも、その配偶者が自宅に住み続けることを可能にする制度が配偶者居住権です。 本記事では、配偶者居住権とは何かや登記について、メリット・デメリットなどを、自宅の所有者を夫の場合として詳しく解説します。
配偶者居住権とは何か
配偶者居住権とは、妻が夫の所有していた自宅に終身または一定の期間、無償で住み続けることができる権利です。
配偶者居住権の成立要件
1 妻が法律上の配偶者であること
2 夫が亡くなったときに、妻が夫の所有していた自宅に居住していたこと
3 次のいずれかにより妻が配偶者居住権を取得したこと
(1)遺産分割(相続人間での話しあい)
(2)遺贈(配偶者居住権に関する遺言がある場合)
(3)死因贈与(配偶者居住権に関する死因贈与契約がある場合)
(4)家庭裁判所の審判(相続人の間で遺産分割の話し合いが整わない場合)
登記
配偶者居住権を第三者に対抗するために登記が必要です。
夫の自宅を相続した妻が自宅を第三者に売却したとします。この場合、妻に配偶者居住権があることを知らない第三者が明け渡しを要求する可能性があります。このような場合も登記があれば、妻は第三者に配偶者居住権を行使して対抗できます。
配偶者居住権のメリット・デメリット
メリット
1 住居の確保
配偶者居住権により、自宅に住み続けることが可能です。
2 生活費の確保
例えば、夫の法定相続人は妻と子1人。相続財産は自宅(2000万円)と預金(2000万円)とします。
妻の相続財産:自宅(2000万円)預金(0円)
子の相続財産:預金(2000万円)
妻の相続財産:配偶者居住権(1000万円)預金(1000万円)
子の相続財産:自宅の所有権(1000万円)預金(1000万円)
(1)の場合妻の金融資産(預金)はゼロですが、(2)の場合は1000万円になります。このように配偶者居住権があれば、妻は生活費も確保できます。
デメリット
1 自宅所有者に無断で自宅の賃貸や増改築を行うことは不可
配偶者居住権は自宅所有権ではありません。したがって自宅所有者の同意がなければ、賃貸・増改築はできません。
2 配偶者居住権の売却は不可(民法第1032条第2項)
配偶者居住権は相続発生時に自宅に住んでいた妻だけに認められる権利です。したがって第三者への売却はできません。
例えば妻が老人ホーム入居を希望した場合、自宅所有権を持っていなければ自宅を売れず配偶者居住権も売却できないため、入居はできません。
まとめ
述べてきたように、配偶者居住権にはメリットばかりでなくデメリットもあります。取得すべきかどうか選択に迷う場合は弁護士、税理士などの専門家と相談することをおすすめします。
出典
e-Gov法令検索 民法
前橋地方法務局 配偶者居住権とは何ですか
相続サポートセンター 配偶者居住権とは? メリット・デメリットと制度の問題点
相続サポートセンター 配偶者居住権とは?利用が向いているケースやメリット・デメリットなども解説
法務省 残された配偶者の居住権を保護するための方策が新設されます。
執筆者:桜井鉄郎
1級ファイナンシャルプランニング技能士 宅地建物取引士
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