古い実家を相続したが空き家として放置したまま。売却した場合の税金はどうなるの?
ファイナンシャルフィールド / 2022年6月30日 5時30分
「先日、一人暮らしの親が亡くなり、実家を相続しました。自分は別の場所で家族と暮らしているので、実家は空き家になっています。このまま放置しておくと、固定資産税などが高くなってしまうと聞いているので売却したいと思っています。その場合に税金はどうなるのでしょうか? 」といった問い合わせがありました。 平成27年度の税制改正により、「特定空き家」と認定されると、土地の固定資産税が6倍、都市計画税が3倍と大幅な増税になる恐れがあります(※1)。「特定空き家」と認定される前に売却することをお勧めしますので、売却した場合にかかる税金と特例制度について解説します。
不動産を売却したときにかかる税金
不動産を売却すると、その売却益(譲渡所得)に対して譲渡所得税がかかります。その税率は、不動産を所持していた期間によって、売却した年の1月1日時点で5年を超えている場合は「長期譲渡」、5年以下であれば「短期譲渡」として以下の税率がかかります。
長期譲渡の税率: 20.315%(所得税15.315%、住民税 5%)
短期譲渡の税率:39.63%(所得税 30.63%、住民税 9%)
譲渡所得税=譲渡所得×税率={譲渡価格-(取得費+譲渡費用)}×税率
この場合の取得費とは、親が実家を購入したときにかかった購入代金や購入諸費用に、建物の減価償却費相当額、相続人が相続したときの登記費用等を加えた金額です。親が購入したときの購入代金等が分からない場合は、5%ルールといって売却代金の5%を取得費とします。
譲渡費用は、仲介手数料や売却時にかかった諸費用を合計します。
譲渡所得税の他には印紙税がかかります。印紙税は売買契約書等に貼る印紙代金として納税します。2022年3月31日までの税率軽減措置は2年間延長され、2024年3月31日まで軽減された金額となっています。例えば、1000万円を超える5000万円以下の契約では1万円、5000万円を超える1億円以下の契約では3万円の印紙税がかかります。
空き家を売却したときに受けられる3000万円特別控除とは
国は、空き家をなるべく少なくするために、空き家を売却した場合に税金を優遇する特例制度を設けています。一定の要件を満たせば、譲渡所得から最大3000万円を控除して良いという制度です(※2)。
一定の要件のうち、特に注意すべき点を説明しておきます。
昭和56年5月31日以前に建築された家屋
新耐震基準が適用される前に建築された古い家屋であること。ただし、売却する際には新耐震基準を満たしているか、取り壊してさら地にしなければなりません。
1.区分所有建物登記がされていない家屋
マンションやアパートなど、区分所有建物は適用外です。
2.相続の開始直前に被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと
被相続人が亡くなる前は一人で住んでいたこと。ただし、被相続人が要介護認定を受けて老人ホームに入居していた場合でもこの条件にあてはまります。
3.相続開始から3年後の年の12月31日までに売却すること
さらにこの制度の適用期間である2016年4月1日から2023年12月31日までの間であること。
4.売却代金が1億円以下であること
相続税の取得費加算の特例とは
また、相続税の取得費加算の特例とは、相続を開始して空き家となっていた実家などを一定期間内に売却した場合は、その相続人が相続税を払っていたら、払った相続税のうち一定額を取得費に加算して良いとする特例制度です(※3)。
譲渡所得税={譲渡価格-(取得費+譲渡費用+加算相続税額)}×税率
この特例制度は、上記の3000万円特別控除とは選択適用(どちらか一つの適用)となります。この特例制度を受けるための条件は以下の3つです。
1.相続や遺贈により財産を取得した人
2.その財産を取得した人に相続税が課税されていること
3.相続開始の翌日から、相続税の申告期限の翌日以降3年以内に売却していること
取得費に加算して良い加算相続税額の算出式は以下の通りです。
加算相続税額=相続税額×{相続税課税価格の計算の基礎とされた財産の売却価格÷(相続税課税価格+債務控除額)}
終わりに
一人暮らしの親が亡くなり、実家を相続するケースも多くなっています。そのまま空き家として放置すると土地の固定資産税が高くなるばかりではなく、近隣住民に迷惑がかかるとして、最悪では自治体から取り壊し命令が出されることもあります。
古い実家を相続したが利用するあてがないといった場合は、一定の要件を満たせば売却にあたって特例措置も受けられるので、税理士等の専門家に相談することをお勧めします。
出典
※1:東京都主税局 「特定空家等」に該当すると土地に対する固定資産税・都市計画税の税額が高くなる場合があります
※2:国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
※3:国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
執筆者:村川賢
一級ファイナンシャル・プラニング技能士、CFP、相続診断士、証券外務員(2種)
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