就業規則を読んでみよう!(5)何歳まで働くの?65歳、70歳。書き換えられる定年退職制度。
ファイナンシャルフィールド / 2018年8月13日 9時0分
就業規則には「労働時間」や「賃金」「退職」「福利厚生」などの規定が盛り込まれているため、ライフプラニングにおいて必要不可欠です。 厚労省の「モデル就業規則」を読み進めながら、ライフプランとの関連性を紐解いていきます。 今回は、就業規則の第7章「定年、退職及び解雇」です。 「何歳まで働きますか?」 ライフプランのご相談では、必ずといっていいほど、ご相談者さんにこの質問をします。みなさんすぐには答えられません。当たり前ですが、この質問の目的は「ライフステージ」の認識を促すためのものです。
人生100年時代。「自分がいつまで働くか」を想定しておくことが必要
人生100年時代と言われています。国もこれを前提として、さまざまな方面で制度設計の組み替えをしています。例えば定年退職です。今は原則、60歳定年制を採用している企業が多くありますが、昔は55歳のときもあったようです。
今から考えると、「えっ、そうなの?」と驚かれるかもしれませんが、それだけ日本人が長寿になっているということなのでしょう。長寿の時代をこれから生きるには、ライフステージをある程度認識し、自分がいつまで働くかをあらかじめ想定しておく必要があります。
これに関連深い項目が就業規則第7章「定年、退職及び解雇」です。この項は、ひとくくりにいうと「退職」に関する記載です。
「60歳定年制」の中、定年を65歳まで引き上げる会社も増加中
まず、第49条「定年等」について見ていきましょう。
定年は、「労働者が一定の年齢に達したことを退職の理由とする制度」と定義づけられています。それゆえに「定年退職」と言うわけです。さらに、ここでは定年の年齢について記されています。
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律「第8条」では、定年の年齢を60歳未満にすることはできないと明記されています。また、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律「第9条」では、事業主の義務として、65歳までは高齢者の雇用を確保しなければならないとしています。
これを受けて、会社は定年退職制度について見直しを進めています。
(1)定年の引き上げ・・・定年を60歳超にする。
(2)継続雇用制度の導入・・・60歳を定年としつつも、65歳までは雇い入れる。
(3)定年の定めの廃止・・・そもそも定年退職制度を設けないため、労働者は何歳まで働いても良い。
ここ数年の傾向としては、60歳定年制を維持しながら、退職者を65歳まで再雇用するケースが多いようです。また、大企業を中心に、定年を65歳まで引き上げる会社も少しずつ増えています。
婚姻・妊娠・出産・育児・介護にともなう解雇は禁止されている
次に続く第50条「退職」、第51条「解雇」については、どちらかというと予定外に会社を辞めるケースを想定しているため、長期に及ぶライフプランの性質上あまり重要とは言えません。しかし、ここで注意しておきたい点は「解雇における禁止事項」です。
労働基準法では、就業規則において解雇の理由を制限しているわけではありません。しかし、契約法では「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、無効とする」としています。
つまり、雇用自体が契約であるため、しっかりとした理由がない限り、会社から一方的に解雇されないようになっています。
特に、婚姻・妊娠・出産・育児・介護にともなう解雇が禁止されていることは、ライフプランを作るうえで押さえておきたい事柄です。
今をもとに将来を想定してライフプランを立てよう
現在、65歳以上が高齢者、75歳以上が後期高齢者と区分されています。しかし、65歳以上の高齢者も、75歳以上の後期高齢者も、元気な方は元気ですから、高齢者の定義を見直そうという議論がされています。
人生100年時代の到来の中で、私たちは何歳まで働くのでしょうか。現行法では、就業規則にもあるように、60歳、65歳が人生のひとつの節目になっていますが、そのうち65歳、70歳と繰り上がっていくのかもしれません。
今の就業規則は、未来の私たちにとって書き換えられる可能性が多分にあります。国の施策が企業のルールを決め、企業のルールが私たちの人生設計(ライフプラン)に影響を及ぼします。
今が大事か、将来が大事かという議論ではなく、今をもとに将来を想定することがライフプランです。就業規則は、それを考える良いヒントでもあります。
次回は、定年退職とかかわりの深い第8章「退職金」について、ライフプラン(人生設計)を考えるうえでのポイントを整理していきます。
Text:重定 賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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