【一物五価】?緑茶と土地の決定的に異なる価値とは
ファイナンシャルフィールド / 2018年8月15日 8時30分
同じモノに複数の価格がつくことは日常生活でもよく見かけます。 例えば、ペットボトル入り緑茶(525ml)の有名ブランドたちではどうでしょうか。
実際に売られている価格は、ずいぶんと幅があります
メーカー希望小売価格は税込151円(税別140円)に設定されているものが多いようですが、街なかの自動販売機(525mlとは異なる容量サイズの場合あり)では130~160円くらい、コンビニに行けば120~130円台くらいで販売されています。
スーパーやドラッグストアならば60~70円台の特価で手に入る場合もある一方で、山上とかの運搬困難な特殊立地では200円台とか300円台になることもあるでしょう。
同じモノが大量に製造されて広く流通している場合には、このような現象は特に珍しくはないと思われます。
「土地」の場合はどうなの? 「一物一価」どころか「一物五価」!
ところで「土地」ではどうでしょうか。土地には同じものは二つとありません。いわばすべてが〝一点モノ〟なのです。例にあげたペットボトル入り緑茶とはそこが決定的に異なるところです。
そんな〝一点モノ〟の土地ならば価格はひとつだけでしょうか?答えはノーです。「一物一価」どころか「一物五価」などといわれ、複数の価格が存在するのです。
「一物五価」の中身とは?
その具体的な中身をざっとご紹介すると次のとおりです。
(1)公示地価
<所轄機関> 国土交通省
<基準時点> 毎年1月1日
<公表時期> 毎年3月下旬(2018年は3/27)
<主な用途> 土地取引(民間、公共用地)の指標
<概要など>
・調査地点数26,000。
・売り急ぎや買い急ぎなどの特殊事情ではない「正常な価格」を示す。
・必ずしも実勢価格ではなく、一等地や地価下落地などでは実勢との開き
が大きい場合もある。
(2)基準地価(都道府県地価調査)
<所轄機関> 都道府県
<基準時点> 毎年7月1日
<公表時期> 毎年9月中旬頃(2017年は9/19)
<主な用途> 公示地価の補完(半年間<1/1 → 7/1>の地価変動など)
<概要など>
・調査地点数21,644。
・公示地価では対象外の都市計画区域外の土地もカバー。
・時点変動を考慮しなければ公示地価の100%程度。
(3)相続税路線価
<所轄機関> 国税庁
<基準時点> 毎年1月1日
<公表時期> 毎年7月上旬(2018年は7/2)
<主な用途> 相続税や贈与税の算定基準
<概要など>
・公示地価の80%程度。
(4)固定資産税路線価(固定資産税評価額)
<所轄機関> 市区町村
<基準時点> 3年ごとの1月1日
<公表時期> 毎年4月頃
<主な用途> 固定資産税や不動産取得税の算定基準
<概要など>
・公示地価の70%程度。
(5)時価(実勢価格)
<概要など>
・実際に取引される価格。
所轄機関もバラバラで複雑に見えますが、主な用途に基づくと次のように整理できますね。
◇税金を徴収するため
(3)相続税路線価、(4)固定資産税路線価(固定資産税評価額)
◇土地取引の指標のため
(1)公示地価、(2)基準地価(都道府県地価調査)
◇実際の土地取引(買う時、売る時)などのため
(5)時価(実勢価格)
なお、(2)・(3)・(4)の各公的地価もベースは(1)ですので、この公示地価が税収(国税・地方税)なども左右するようなおおもとの基準だといえます。
こうした地価たちですが、納税のため以外で個人の日常生活で活用する機会としては、次のような局面が例として考えられます。
1.不動産を買おうとする時
複数の候補物件を比較検討したり、意中の物件の価格が妥当かどうかをみる。
2.不動産を売ろうとする時
仲介業者や買い手との交渉に際しての手持ちデータなどにする。
3.不動産を持っている時
直近の資産価値を知る。
具体的に確認するには
(1)~(4)の各公的地価は、次のサイトなどで具体的に確認することができます。
(1)公示地価および(2)基準地価(都道府県地価調査)
参考URL:国土交通省「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」
(3)相続税路線価
参考URL:国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」
(4)固定資産税路線価(固定資産税評価額)
参考URL:一例として東京都主税局「路線価公開(23区)」
各自治体で同様のサイトが公開されています。
また、(5)の時価(実勢価格)の有力な参考指標として、実際の不動産取引事例と、その価格について次のようなサイトで確認ができます。
参考URL:国土交通省「土地総合情報システム 不動産取引価格情報検索」
まとめ
土地は、個別性が大変強いといわれています。
例えば、同じ路線価がつけられた道路に面していても、それぞれの土地の大きさや形状、道路付けの状態などで、地価は異なって評価されるものです。
また同一の不動産でも実際に取引する時期の経済環境・税制・需給バランス等々によって価格は変動するのが常です。
各地価については「ピンポイントでいくら」というよりも、あくまで「幅のあるもの」としてとらえ、いろいろなチャンネルやルートによって不動産資産を評価する際のツールのひとつとして、利用するとよいでしょう。
Text:上野 慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士,不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
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