地主の疑問 自分の土地を定期借地権を使って貸しだすメリットとデメリットは?
ファイナンシャルフィールド / 2018年8月24日 10時30分
平成4年8月に借地借家法が施行され、定期借地権が創設されました。定期借地権とは、期限付きで土地を賃貸して、期間満了時には立退料などの負担もなく、土地の所有者に更地にして返還される権利のことをいいます。 つまり、「定期借地権付き分譲マンション」とは、土地は賃貸で地代を支払い、建物のみ購入して、期間満了時にはマンションの建物を解体して更地に戻して地主に返還されるマンションです。 定期借地権付き分譲マンションで主に利用されているのが「一般定期借地権」と呼ばれるもので、存続期間は50年以上となっています。
定期借地権のメリット
土地の所有者(地主)はさまざまですが、例えば、昔広い敷地を有していたお寺さんが地主のケースや福利厚生施設などの跡地も多く見られます。
地主にとってのメリットは、先祖代々の土地の所有権を手放すことなく、ある程度まとまった資金を得ることができることや契約期間が満了した時点で借地に建っている建物を買い取りすることなく、更地として返還される点などが挙げられます。
一方、買主にとっては、好立地で広いマンションが比較的手頃な価格で買えることが最大のメリットといえるでしょう。概算ではありますが、定期借地権付きマンションの価格は、同じ立地条件の所有権による分譲マンション価格の約8割程度といわれています。
新築時には向こう50年以上の契約期間とされるため、マンションを子供の代に財産として残す必要がない場合などは、向こう50年間、好立地のマンションで生活できることが最高のメリットという考え方もあります。
定期借地権付き分譲マンションとして有名なのは、2003年に銀座1丁目に建てられた銀座タワーです。
25階建て総戸数180戸のタワーマンションで、当時の価格で70平方メートル4000万円台という安い価格設定だったため大人気となりました。
定期借地権付き分譲マンション特有のコスト
まず、定期借地権の特有のイニシャルコストとして、土地の権利金や保証金(いわゆる退去時に返金される敷金)が挙げられます。また、別途前払賃料を請求されるケースもあるので確認が必要です。
次に、ランニングコストとして、地代や解体積立金を毎月支払う必要があります。この他に通常の分譲マンションと同様に、管理費や修繕積立金も毎月負担することとなります。また、新築購入時に、解体積立基金として一定額を一括払いする場合もあります。
逆に、土地の所有権は有していませんので、固定資産税や都市計画税については土地の分を負担する必要はありません。(建物の所有権の分のみ負担)
借地権付きマンション購入の注意点
最も注意しなければならない点は、長期の住宅ローンが組みにくいという点です。
金融機関によっては定期借地権付きマンション向けの住宅ローン商品を取り扱っていますが、所有権のマンションと異なり、ローンの返済が終了した後、定期借地権の残存期間が10年以上であることとの条件が付されることが一般的です。
そのため、新築時に定期借地権が50年の場合、35年ローンを組むことができますが、売却したいときに買い手がローンを組みづらい(組めない)可能性があります。
自分が住み続けるだけと割り切っている場合は問題ありませんが、将来、売却することを考えている場合は希望通りに行かないことがあることに注意が必要です。
また、売却価格そのものも築年数経過とともに資産価値が低減していきますので、過度に期待はできません。
まとめ
以上のように、定期借地権付きマンションを購入する場合にはさまざまな制約があります。
何よりも立地条件重視、比較的手頃な価格、子供の代には財産として残す必要がないなどの条件を吟味の上、検討されることをお勧めします。
これらの条件をクリアできる方にとっては、流通量はそれほど多くはないですが、好立地居住できる思わぬ掘り出し物を手にすることができるかもしれません。
Text:高橋 庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー,住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
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