「実家を売却したいけど、父親が認知症になってしまってどうにもできない・・・」 そんな事態を防ぐ家族信託って知っていますか?

ファイナンシャルフィールド / 2018年9月10日 9時40分

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「将来、私が認知症になったらどうしよう?」「万が一の場合、残された妻に自宅は相続させたいのだが管理できるかどうか心配」など、ご家族の将来に少なからず不安を感じている方も多いのではないかと思います。   認知症や精神障害などで判断能力が低下してしまった場合に支援する制度には、「成年後見制度」などがありますが、ご家族の中に財産の管理を任せられる信頼できる人がいる場合には、「家族信託」が有効な手段のひとつといえるでしょう。   家族信託は平成19年にできた制度ですので、比較的新しい制度といえます。そのメリットやデメリット、注意点などを理解しておきましょう。  

自宅の所有権者である父が認知症になった!

自宅不動産(土地、建物)の所有権者である父親が認知症と診断され、判断能力が低下してしまった場合に、その息子が父に代わって自宅を売却することはできるでしょうか?
その答えは、「原則、売却することはできません」となります。
自宅を売却する場合には、父が認知症になっても、売却の意思は所有権を有する者が決めることとなっており、たとえ息子であっても勝手に売却することはできません。
成年後見制度を利用した場合はどうでしょうか?
この場合でも答えは、「原則、売却することはできません」となります。成年後見制度による後見人の役割は、被後見人(父)の財産を守ることにあるため、財産の売却などについては家庭裁判所の許可がない限り、できないのが原則となります。
このように、所有権者が認知症となったときに、自宅不動産が簡単には売却できなくなる可能性があることをしっかりと理解しておきましょう。
 

家族信託とは?

家族信託とは、信頼できる家族に所有権のうち、「財産を管理する権利」のみを移す制度です。
所有権には、大まかにいうと「財産を管理する権利」と「財産から得られる利益をもらう権利(受益権)」の2つに分かれます。つまり、家族信託では「財産を管理する権利」だけを信頼できる家族に移し、受益権は所有権者に残せるのです。
財産を管理する権利には、売却、修繕、建て替えなども含まれています。例えば、息子に父の資産である、「自宅と賃貸不動産を管理する権利」を家族信託を利用して移しておいた場合、その後父が亡くなったときでも受益権は配偶者(母)に相続させることができます。
また、受益権には家賃収入などの不動産所得も含まれますので、母は引き続き家賃収入を得ることができます。父が亡くなっても、管理は息子が受け持ち、家賃収入は母が受け取れるため、母の生活に安心感があります。
 

家族信託に関する費用、税金

「家族信託」はその名称の通り、信託銀行などの外部機関に財産を託すのではなく、信頼できる家族に託す制度です。そのため、財産を託した場合の手数料などはかかりません。
また、自宅不動産の所有権を生前贈与した場合には、贈与税、不動産取得税、登録免許税などの負担を考慮しなくてはなりませんが、家族信託の場合には、贈与税や不動産取得税はかかりません。登記の際に発生する登録免許税の税率についても、不動産評価額の0.4 % となり、通常の贈与時の2 % より低くなります。
さらに、成年後見制度を利用した場合には、後見人や後見監督人への報酬が発生する場合もあり、総合的に見ても家族信託は費用面でのメリットも大きいといえます。
 

まとめ

人生100年時代などといわれていますが、多くの高齢者の方が認知症を発症し、またはその疑いがあるとの事実も見逃すことはできません。
今後は、人が亡くなる場合の相続対策はもとより、認知症への対策を事前に講じておくことが重要となってくるでしょう。そのために、「家族信託」の検討は有効な手段のひとつとなるのかもしれません。
Text:高橋 庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー

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