40歳で夫と共働きです。老後「月38万円」が、ゆとりある生活のために必要と聞きました。夫婦でそれだけの年金を受け取るために、年収はいくら必要ですか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年5月18日 3時0分
「現役時代は夫婦共働きで頑張るので、せめて老後は働かずにゆとりある生活を送りたい」 共働き世帯の人の中には、将来もらえる年金が夫婦2人分で比較的多いことから、老後は働かず年金でゆとりある暮らしをしたいと考える人も多いのではないでしょうか。 本記事では、老後に夫婦世帯が旅行や趣味を楽しめるゆとりある生活を送るために必要な金額や、その金額を年金だけで賄うには現役時代にどれくらいの年収が必要なのかを解説します。 あわせて、ゆとりを生むための年金以外の老後資金対策も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
老後にゆとりある生活を送るために必要な生活費の目安は
老後に好きな旅行や趣味などでお金を使って過ごす「ゆとりのある生活」にはどれくらいの費用が必要なのでしょう。
公益財団法人生命保険センターが2022年に行った「生活保障に関する調査」によれば、夫婦2人で老後にゆとりのある生活を送るために必要な金額は、図表1の通り月額で平均約38万円です。
金額にはバラツキも見られますが、35万円以上必要と考えている人が40%以上いることも考えると、この約38万円は「老後のゆとりある生活」に必要な金額の1つの目安と捉えられます。
図表1
この38万円の内訳を見ると、最低必要な日常生活費が23万2000円、ゆとりのある老後生活を送るために必要なお金はこれとは別に14万8000円必要で、合わせて37万9000円となります。上乗せ額の用途は図表2の通り「旅行やレジャー」「日常生活費の充実」「趣味や教養」などが多くなっており、各々が描く「ゆとりある生活」のイメージが見えてきます。
図表2
公益財団法人生命保険文化センター 老後の生活費はいくらくらい必要と考える?
共働きで月約38万円を年金で受給するための年収は?
それでは「ゆとりある生活」を送るために必要な月38万円を受給するには、共働き世帯で年収がどれくらいであれば可能なのでしょうか。2人とも会社員や公務員といった完全な共働き世帯で2人の年収も同等と仮定すれば、1人で月38万円の半分である月19万円、年額に直すと「月19万円×12ヶ月=228万円」を年金で賄えればよいことになります。
では、月19万円の年金受給額を得るための年収はどれくらいになるのでしょうか。まず20歳から60歳まで40年間働いたと仮定すれば、老齢基礎年金は令和6年度満額で81万6000円となるため、厚生年金の報酬比例部分は「228万円-81万6000円=146万4000円」が必要となります。
報酬比例部分は「平均報酬月額×5.481÷1000×480ヶ月=146万4000円」の計算式となり、必要な平均報酬月額を逆算すると「146万4000円÷5.481×1000÷480ヶ月=55万6467円」、年収にすると55万6467円×12ヶ月=約668万円です。つまり1人当たりの年収で700万円弱、共働きの夫婦2人世帯では1400万円近い年収が必要です。
老後資金の対策は年金だけではない
共に公務員や大企業勤めなど安定的かつ高収入の共働き夫婦であれば、世帯年収1400万円は不可能ではありません。また、そのような夫婦であれば、60歳で退職したとしても、年金受給開始年齢である65歳までの生活費「38万円×12ヶ月×5年=2280万円」を2人の退職金で確保することも難しくないでしょう。
しかし共働き世帯の平均的な世帯年収は800万円程度に過ぎず、多くの世帯にとってはハードルが高いと考えられます。
そもそも最低限必要な生活費が23万円であることを考えると、ゆとりある生活を送るために月38万円もの金額が必要かどうかは個人によって異なるでしょう。
また、老後資金の確保は年金以外にもさまざまな対策があり、iDeCoやNISAなど老後に向けた資産形成の手助けとなる制度は、年収の多寡にかかわらず、早く取りかかることでその効果を高められます。
他にも少し長く働く、繰下げ受給の活用で月々の年金額を増やすなど、経済的な面で老後を快適に過ごすための選択肢は多岐にわたります。これら複数の老後資金対策を組み合わせることで、老後の不安を和らげ、ゆとりある生活に少しでも近づけることは可能です。
まとめ
共に高い収入を得ている共働き世帯であれば、60歳以降は働かず、年金だけで「老後のゆとりのある生活」に必要な費用を賄うことも可能です。しかし、それ以外の多くの世帯にとっては現実的とは言えないため、老後資金の確保に向けた複数の対策を組み合わせ、早めに取り組むことが大切です。
また、思い描く「老後のゆとりのある生活」は個々人によって違います。まずは、老後にどのような生活を送りたいのかを考えた上で、早めに老後資金の対策を実践してみてはいかがでしょうか。
出典
公益財団法人 生命保険文化センター 老後の生活費はいくらくらい必要と考える?
公益財団法人生命保険文化センター 2022(令和4)年度 生活保障に関する調査
執筆者:松尾知真
FP2級
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