新入社員です。はじめての給料が出たのですが、給与や残業代はどう計算されていますか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年5月19日 9時0分
4月から新生活が始まった新社会人の皆さんは、すでに初任給をもらったことでしょう。学生時代、アルバイト先から受け取れる給与は、「時給×労働時間」とシンプルだったはずです。 ただ、正社員になったあとは、「基本給+各種手当」の合計から、社会保険料、所得税などの各種控除が引かれるという、これまでにもらったことのないような項目が記載されている明細を受け取ることになります。今回は、この明細を読み解いてみましょう。
給料は毎月変わるの?
入社した時に、会社から交付された雇用契約書を見ると、労働条件や給料についての内容が詳細に記入されています。
給与の欄に記載してある基本給や通勤手当、資格手当など、固定で支給される部分は理解しやすいでしょうが、そのほかの各種手当に関して、どんな計算をされているのか、理解は難しいことでしょう。変動のある時間外手当や休日労働などの割増賃金の計算方法は、労働基準法には記載されていますが、実態の計算方法は会社ごとに異なるため、意外と理解しにくいのです。
雇用契約書には、割増賃金についての記載は、労働基準法どおりの25%、50%、35%と、シンプルに割増率のみ記載されているのではないでしょうか。
正確には、労働基準法には、25%「以上」、50%「以上」、35%「以上」というように、時間外もしくは休日に労働した場合には、「○○%以上の割増賃金を支給しなさい」と規定されています。労働基準法に規定されている割増率を整理すると、図表1のようになります。
【図表1】
法定「内」なのか法定「外」なのかで、割増率は変わる?
前述の表を見て、「時間外」について割増率がいくつかあるものの、何が違うのかと思った方もいるでしょう。「時間外労働」というのは、1日8時間、週40時間を超えたときと労働基準法に明記されています。これが「法定労働時間」ですから、労働基準法に定められているルールどおり割増賃金を支払おうとすると、1日もしくは1週間について、この数字を気にする必要があります。
つまり、たとえば会社からは9時から17時半までが所定労働時間といわれたとしましょう。この会社は、通常12時から1時間などの昼食のための休憩がありますから、実質の労働時間は7時間30分となります。
そうなると、もし18時まで労働したとしても、この30分に対して25%の割増率を与えられるかというと、必ずしもそうなりません。これは1日8時間を「超えていない」から、割増賃金を支払っていなくても、労働基準法違反とはならないのです。
また、土日が休日と定められている週休2日制となっている会社の割増率も同様の考え方です。土曜日に出勤しても、1週間40時間を超える部分について、時間外労働の25%の割増率で、「休日労働」の35%が適用されないこともあります。
具体的な残業代の計算のしかたとは
残業代の計算を具体的に計算してみましょう。月給制の場合、1時間当たりの賃金に換算します。
原則は、「月給÷1年間における1ヶ月平均所定労働時間」が計算式となります。この「月給」には、次の手当は、例えば、家族手当、扶養手当、子女教育手当、通勤手当、別居手当、単身赴任手当、住宅手当、臨時の手当など、家族数、交通費、距離や家賃に比例して支給する手当は含まれません。
つまり、基本給以外にどんな手当が含まれているのか、どの手当が残業代の計算に含まれるのかによって時間単価が異なります。
皆勤手当や資格手当など、「一律」に支給される手当は残業代の計算に含まれますので、この点を理解しておかないと、時間単価が正しいかどうかの判断ができません。この1時間当たりで計算された金額に割増率を上乗せして時間にかけます。
もう一点、前段の「時間外」か「休日」などについて注意点をお話しします。もし土曜日に出勤した時でも、休日労働でなく、時間外労働の25%が適用となると説明はしましたが、割増率がないこともあります。それは、「振替休日」をとるケースです。
「振替休日」なのか、「代休」なのかは似たような言葉ですが、区別なく使っている方も多いかもしれません。土曜に出勤して、振替を行わず法定休日に労働した場合には、休日労働となり35%の割増率となります。法定休日をあらかじめ他の勤務日とあらかじめ交換して労働させ、事前または事後に休日を与えた場合には、休日の割り増しが不要です。
この「法定休日」は原則として、週に1回決められている休日のことをいいます。雇用契約書を見て、土日祝日は、「休日」とかかれているだけかもしれませんが、どれが「法定休日」なのか会社に確認しておきましょう。
このように、時間外、休日という言葉をちゃんと理解してみると、会社から受け取る給与明細は、労働時間や割増率についての知識があってはじめて作成できることがわかるはずです。別稿では、1日8時間、1週40時間と超えても、残業とみなされない場合、変形労働時間制やみなし労働などについてご説明します。
出典
厚生労働省 しっかりマスター 労働基準法編
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。
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