「サブリース」で家賃保証があるから絶対安心!は嘘。認識すべきリスクとは
ファイナンシャルフィールド / 2018年12月13日 10時0分
サブリース業者によるシェアハウス投資について、融資した銀行の不正行為を含めて、大きな社会問題となったことは記憶に新しいところです。 そもそも不動産投資における「サブリース」とはどのような仕組みなのでしょうか? 改めてそのリスクなどを確認してみましょう。
業者による「サブリース」のセールスポイント
「サブリース」とは、大家さん(所有者)から、不動産管理会社などが部屋を一括で借り上げて、第三者に転貸する仕組みです。これによって、大家さんは一定の条件で家賃が保証され、不動産投資の最大リスクである空室リスクから解放される、というふれ込みとなっています。
業者のセールスポイントとなるサブリースのメリットは、一般的には以下のようなものです。
(1)空室が出ても、安定的に家賃収入を確保できる
(2)ローン返済の全期間の家賃保証が設定できる
(3)わずらわしい賃貸管理をすべて任せることができる
(4)確定申告が比較的簡単にできる
やはり、「空室リスク」や「家賃保証」というキーワードに、敏感に反応してしまう大家さんも多いようです。不動産投資という大きな決断の中で、何かしらの「安心感」を求めるのは当たり前のことと思います。
不動産の賃貸管理システムには、大きく分けて「一般管理」と「一括借り上げ(家賃保証)」の2種類があります。業者によって細かな条件は違いますが、一般管理のほうが管理手数料は安価に設定されています。
いずれのシステムも、入居者募集、賃貸借契約、家賃集金、苦情対応、室内清掃、リフォーム手配などが共通業務として設定されていますが、一括借り上げでは、プラス家賃保証というメリットが付加されるため、管理手数料は家賃の10~15%程度に設定されています。
本当にメリットなのか?
仮に、総戸数10戸のアパート1棟に投資したと想定してみましょう。サブリースの管理手数料が10%で、ローン返済の全期間家賃保証の契約をしました。サブリース業者は、毎月家賃から管理手数料10%を差し引いた金額を、大家さんに振り込みます。
この状態は、「10戸の内どんなに空室が多くても家賃の90%は確保している」ということを意味しますが、反対に、「どんなに満室の状態が続いたとしても家賃の90%しか収入がない」ということでもあります。
つまり、言い方を変えれば、「始めから10戸の内1戸は常に空室(空室率10%)が確定している」と捉えることができます。ここでお考えいただきたいのは、常に空室率10%という状態が、不動産投資を行ううえで正常な状態であるかということです。
もちろん、物件の立地条件や物件そのものの良しあし、家賃設定など、さまざまな条件にも左右されますが、ほかに何かしらの改善点がないかなど、大家さん自身が空室率を抑える努力をすべきだと思います。
次に「ローン返済の全期間家賃保証」についてはどうでしょうか?一般的にサブリース業者が保証するのは、あくまでも「家賃の90%」であることを理解しなくてはなりません。
家賃とは、今の金額設定が将来的にそのまま続くということはなく、建物の築年数の経過とともに数年ごとに見直されることになります。
つまり、家賃は「時価」であると言えます。その家賃の金額設定の決定は、建前としては業者と大家さんが協議のうえでということになっています。しかし、実際にはサブリース業者が主導して、必ず入居者が決まる家賃設定にするのが通常です。
そして、改定した後(値下げ後)は、大家さんには改定後の家賃の90%が支払われます。
つまり、「ローン返済の全期間家賃保証」とは、ローン返済の保証を約束するものではありません。家賃が値下げされれば、「手取り家賃収入」が、「ローン返済額」を下回る危険性があることを理解しておく必要があるでしょう。
まとめ
不動産投資は、「比較的リスクも少なく、安定したリターンを得られる」「ワンルームマンション投資などは、低コストで特別な知識やノウハウがなくても取り組める」「管理を任せることで、手間なく不労所得が得られる」など、魅力的な宣伝文句がさまざまあります。
もちろん、これらのすべてが間違っているということでは決してありません。「サブリース」の問題点の1つには、「業者に丸ごとすべて任せてしまうという姿勢」があるではないかと感じています。
不動産投資に限らず、投資をするには「その責任は自らが持つ」という心構えが少なからず必要なのではないでしょうか?
Text:高橋 庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
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