世帯年収800万円の家庭、老後に備えておく金額とは
ファイナンシャルフィールド / 2019年1月14日 22時30分

「老後のために貯蓄を始めたい」と思っても、いくら貯蓄すれば良いか分からないという悩みをよく聞きます。 そこで、老後のために準備しておきたい金額を現役世代の年収から考えてみました。ご自身のケースと比較し、資産形成の参考にしていただければと思います。
老後の生活費をイメージすることから始めよう
老後資金の準備をするにあたり、まず考えるべきことは老後の生活費がいくらかかるか、ということです。その際、一般的には高齢世帯の1ヵ月あたりの平均支出額が用いられます。
しかし、老後の生活費は現役時代の支出水準によって、各家庭で異なることでしょう。支出水準は年収によって左右されますから、まずは現役世代の年収から現在の生活費を考え、それをもとに老後の生活費を導き出したいと思います。
世帯年収800万円〜900万円家庭の老後の生活費は?
2017年総務省統計局の家計調査「年間収入階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出」よると、世帯年収800万円〜900万円の世帯数の分布が多く、かつ、家族人数が多く、65歳以上の人数が比較的少ないようです。このことから、現役世代の世帯年収は800万円〜900万円の家庭が多いと推測できます。
そこで、世帯年収800万円〜900万円の家庭の老後必要額を考えることにします。上記家計調査により、この年収世帯の世帯主の年齢は53歳で、支出は1ヵ月あたり約36万円であることがわかりました。この金額には税金や社会保険料は含まれていません。
では、毎月36万円を支出していた50代家族が高齢になった時、1ヵ月あたりの支出額はいくらになるでしょうか。
一般的に高齢世帯の支出は現役時代に比べて70%に減ると言われています。実際、上記家計調査の支出を調べてみると、50代の平均世帯支出34万円に対し、65歳以上の世帯支出は24.7万円で72%に減っています。
よって、50代の頃に毎月36万円を支出していた家庭は、65歳以降、その70%である約25万円を支出すると予想できます。税金や社会保険料の金額を3万円とすると、毎月の支出額は28万円になります。
受給できる年金は、年収から導くことができる
次に、年金受給額を計算します。しかし、その前に、この世帯が共働きかどうかを考える必要があります。共働きか、そうでないかで、受給できる年金額はずいぶん異なります。
上記家計調査によると、配偶者が働いている割合は半数以上であることから、共働き家庭が多いということが分かりました。
次に夫婦それぞれの年収を考えます。
50代男性の平均年収は、国税庁の「平成30年民間給与実態統計調査」より約670万円と発表されていますから、世帯年収800万円の妻の年収は約130万円ということになります。「130万円の壁」を考えると納得できる数字です。
では、夫の年収670万円、妻の年収130万円の50代世帯の年金受給額を考えます。
年金は、過去の年収や職業によってその金額は異なります。そこで、夫は22歳から65歳まで会社員として働き、その間の平均年収を男性の平均年収である530万円として考えます。
一方、妻は10年間正社員として平均年収250万円で働き、その後は夫の扶養に入り、年収130万円でパートをしていたとします。
夫婦それぞれが受給できる年金は、老齢基礎年金と老齢厚生年金です。老齢基礎年金は金額が決まっています。平成30年の年金額は、満額で約78万円です。次に老齢厚生年金を考えます。厚生年金は「年収×0.55%×年金加入年数」で簡易的に計算が可能です。よって、夫の厚生年金は
530万円×0.55%×43年=125万円です。
老齢基礎年金78万円と合計すると203万円です。
次に、妻の厚生年金は
250万円×0.55%×10年=13.8万円です。
老齢基礎年金と合計すると約92万円です。
夫婦合わせて年金額は295万円、月額約25万円であることが分かりました。老後の支出額が1ヵ月あたり28万円でしたから、毎月3万円の赤字が発生するわけです。寿命を100歳とすると老後の赤字額総額は、
3万円×12ヵ月×35年=1,260万円となります。
ポイントは早めの対策
もし、退職金や貯蓄があり、それらを老後の生活費にまわせるのであれば、準備すべき金額はその分少なくなります。しかし、なければ1,260万円を今から用意しないといけないわけです。もし、50歳から60歳までに1,260万円貯めることをゴールに積立を始めるとすると、毎月の積立額は約10万円になります。
しかし、30歳から積立をはじめるなら、毎月の積立額は約3.5万円です。早めに準備を始めることがいかに大切であるかは一目瞭然です。とくに40代〜50代は、子どもの教育費で積立をするのが厳しくなる時期です。
貯め時は独身時代、あるいは子どもが小さい時です。老後まで先が長いですから、準備に取り掛かることを考えないかもしれません。しかし、老後が近づいてからだと積立額が大きすぎて逆に大変です。自分のため、家族のため、早め早めの対策を取り、老後の資産形成を始めましょう。iDeCoやつみたてNISAを活用して、効率的に積立を行うこともおすすめです。
Text:前田 菜緒(まえだ なお)
CFP(R)認定者
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