サラリーマンをリタイアした後の定期健康診断、あなたならどうしますか?
ファイナンシャルフィールド / 2019年1月21日 10時0分
サラリーマンをリタイアすると、いろいろと変わることがあります。長年、会社制度の一環として受けていた定期健康診断(あるいは人間ドック)もそのひとつ。リタイア後は自己の判断と費用負担で、どうするかを決めなくてはなりませんね。
定期健康診断は、実は法律で定められた「義務」なのです
何となく “義務感”で受診しているように思える定期健康診断ですが、労働安全衛生法で、「会社(事業者)が実施すること」「サラリーマン(労働者)が受診すること」を、ともに義務として定めています。
毎年実施される定期健康診断は、会社から見れば各人の就業の可否や適正配置などの判断材料にもなり、また、本人にとっては病気の発見や予防に役立ちます。
定期健康診断と人間ドックは、どこが違うの?
定期健康診断ときくと、人間ドックを思い浮かべる方もいるでしょう。定期健康診断と人間ドックの違いは、ざっくりと申し上げれば[人間ドックの方が、検査内容項目が多くて費用も高い]でしょうか。
定期健康診断は、労働安全衛生法により回数(年1回)や検査内容項目(法付随の規則で11項目)が定められていて、健康状態の確認や生活習慣病のチェックが目的です。
一方、人間ドックは検査内容項目がより多く(標準的な検査項目が定められているほか、任意で各種オプション追加も可能)、検査時間もより長くかかります。しかし、生活習慣病以外の病気や、がんなどの早期発見も期待できるようです。
会社や健康保険組合によっては、定期健康診断の代わりに人間ドックを受診させている場合があります。また、人間ドック費用に対して手厚い補助措置がされていることもありますが、ケースバイケースでしょう。
サラリーマンを退職した後、定期的な健康診断はどうなるの?
サラリーマンを退職すれば、会社の定期健康診断は当然なくなります。また、退職後2年間は在職中の健康保険組合に継続加入できる制度があり、在職中は会社が折半負担してくれていた保険料が全額自己負担になるものの、人間ドックの補助措置が続く場合もあります。
そして、健康保険組合をぬけると国民健康保険に加入することになります。国民健康保険は法が定める定期健康診断のほかに、40歳以上75歳未満の被保険者・被扶養者を対象とした「特定健康診査」があります。
2008年4月より、同診査や特定保健指導の実施が医療保険者(国民健康保険や被用者保険)に義務付けられています(75歳以上は、後期高齢者医療制度のもとでの健診となります)。
以上を踏まえると、サラリーマンをリタイアして(健康保険組合の継続加入も終了して)国民健康保険に加入した後に、自分の健康状態を定期チェックして病気の早期発見に備えるやり方としては、次のいずれかが考えられます。
特定健康診査の受診状況、そしてまとめ
公益社団法人国民健康保険中央会の直近公表値によれば、2016年度の国民健康保険での特定健康診査の対象者数約2065万人のうち、受診者数は約755万人で、受診率は36.6%(前年比約0.3ポイント向上)でした。
対象者の6割以上が未受診という計算となりますが、その全員が自費で人間ドックを受けているわけでもないでしょうから、リタイアを機に、定期健康診断の受診をやめてしまった人もそれなりにいるものと思われます。
老後・リタイア後の課題として、医療保険の見直しの話題は多く見聞きしますが、これは“病後”の手当てや対策の領域です。一方で、健康状態を定期チェックして病気や病変の早期発見に備えるのは“病前”の領域となります。
先ほどの2つのやり方についても、応用策はいろいろと考えられます。
例えば(1)で人間ドックの受診機関を変更するやり方。人間ドック受診機関の比較サイトなどもたくさん用意されていて、検査内容・項目や費用を簡単に比較検討することができます。これまでの人間ドックの検査データも踏まえながら、より新しい機器やより安価で受診ができる場合もあります。
また(2)の国民健康保険の特定健康診査で、基本項目や追加項目以外にも、気になる項目を自己負担で個別に追加受診するようなやり方もあるでしょう。
「人生100年時代」。リタイア後の時間も一段と長くなる中で、健康維持は誰もが気になるテーマのひとつでしょう。考え方・やり方は人それぞれで、正解はありません。
しかし、“病前”の備えとして、定期的な健康状態のチェックに、それなりの気配りやおカネをかけておくことは有用だと思います。
出典
公益社団法人 国民健康保険中央会「市町村国保特定健診・保健指導実施状況(速報値)~平成28年度 特定健康診査等実施状況概要」
執筆者:上野慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士
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