いろんな意図がある地域通貨。でも流行のキャッシュレス決済で向かい風?
ファイナンシャルフィールド / 2019年2月13日 10時30分
地域通貨は、市や町単位のある一定地域だけで流通するお金です。既に導入している実例を見ると、モノを購入する、サービスを利用した際に支払うといった通常の通貨としての機能のほかに、環境問題への対応や相互扶助など、その地域特有のメッセージを込める狙いが見えてきます。
既に3000人の利用者、400店舗が参加
電子地域通貨の導入事例として有名なものに、飛騨信用組合が取り組む「さるぼぼコイン」があります。
これは、岐阜県高山市、飛騨市、白川村の地域限定で利用できる地域通貨です。2017年12月から導入しており、既に約3000人が参加。飲食店や小売店、ホテル、ガソリンスタンド、タクシー会社など、750以上(2018年9月現在)の店舗が参加しており、地域に根差した通貨として着実に実績を積み重ねています。
クレジットカードより加盟店手数料が安い
「さるぼぼコイン」は、スマホアプリをダウンロードして利用します。チャージは飛騨信組の窓口で、10万円まで可能です。預金通帳とも連携しています。口座利用者は200万円までチャージできますので、高額の買い物にも対応しています。
地域通貨は、キャッシュレス決済の意味もあります。クレジットカードの決済が普及してこなかったのは、店舗にとってクレジットカードの加盟店手数料の負担が大きいことが原因ともされています。しかし、「さるぼぼコイン」では、クレジットカードに比べ加盟店の負担が少ないシステムを実現しております。
街のコミュニケーション機能を高める「アトム通貨」
もう一つ、地域通貨の代表的な例として、東京・高田馬場駅周辺で使われている「アトム通貨」を紹介します。
鉄腕アトムの手塚プロダクションがあるこの地域では、アトムが壁画や看板に描かれ、街の顔として親しまれています。「アトム通貨」は2004年、アトムの誕生日である4月7日を記念して発行されました。
アトム通貨実行委員会では発行の経緯について、街のコミュニケーション機能を高めて、子どもたちが犯罪が巻き込まれないよう街の見守り機能を高めたいということを挙げています。同じようなアイデアが近隣の早稲田大学にもあり、学生ボランティアの育成を目的とした協業として「アトム通貨」がスタートしました。
「アトム通貨」は誰かに何かしてあげたい、感謝を伝えたいという思いを応援する「サンクスマネー」で、加盟店や団体が環境活動や社会貢献活動などに利用されています。
キャッシュレス決済の普及で地域通貨は消える?
さて、地域通貨の将来ですが、筆者は現在の地域通貨についてあまり良い見通しを持っていません。
「アトム通貨」のように、決済としての通貨の機能よりも、地域のコミュニケーションツールとして普及しているものは別として、「さるぼぼコイン」のような地域の消費者に対してキャッシュレス機能やポイント付与をメリットとしている地域通貨は伸び悩むのではないかと考えています。
その理由は、今、政府が進めようとしている消費税アップに伴うポイント還元制度と機能がダブること、また、電子通貨としての機能は、より進んだブロックチェーンの普及で取り込まれていくと考えられるためです。
ちなみに「ささぼぼコイン」では、飛騨信用組合がブロックチェーン技術を活用した実証実験を行いましたが、具体的に運用するには時期尚早であるとし、従来のサーバーによる管理で行っています。
執筆者:丸山隆平(まるやま りゅうへい)
経済産業ジャーナリスト
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