裁判以外でトラブルを解決する方法「ADR」とはどんなものか
ファイナンシャルフィールド / 2019年2月23日 10時20分

日常的に身の回りで発生する、トラブルやもめ事を解決する方法として、まず思いつくのは「裁判(訴訟)」でしょう。 しかし、日本においては、何事にも裁判で白黒を決するという文化、慣習がまだまだ根付いていないのも現実といえるでしょう。また、いざ裁判所で起訴することを考えた時に、最初に脳裏に浮かぶのは、ずばりお金(コスト)の心配でしょう。 そこで、近年注目を集めている裁判以外でトラブルを解決する方法が、ADR(裁判外紛争解決手続)です。2018年はアマチュアスポーツ界の複数の団体で、さまざまな問題が明るみに出ました。その場面でも第三者による仲裁が注目されています。
ADRとは?
ADRとは、身の回りで発生する民事上の紛争を、第三者である専門家が公正中立な立場で、当事者双方の言い分をしっかりと聞き取り、柔軟に和解解決を図る手法をいいます。
つまり、裁判では、裁判所が最終判断を下すことにより解決を図るのに対して、ADRは、当事者双方の自由な意思と努力(歩み寄り)によって解決を目指す方法といえます。
ADRの手続きは、紛争の一方の当事者からの「申し立て」によって開始されます。その時、相手方当事者がADRを望まない場合には、ADRは成立しません。
当事者双方が納得した上で「あっせん、調停、仲裁」の方法によりADR手続きが実施されるので、解決を強制されることもありません。当事者双方からいつでもADRを終了させることもできます。
ADRのメリット
第一に、裁判と比べてコスト面でのメリットが大きいといえます。
裁判では訴訟手続きに要する費用のほか、弁護士費用や鑑定のための費用など、当事者に大きな負担を強いることも少なくありません。ADRの場合は、「認証紛争解決事業者(法務大臣の認証を受けた事業者)」ごとに明示された手数料、費用が主なコストとなるため、極めて少額で解決に至るケースも多くあります。
第二に、解決までの時間が短いというメリットがあげられます。裁判では、第一審でも半年から2年程度を要するケースも多く、さらに控訴、上告ともなれば多大な時間がかかります。
ADRの場合には、元々早期の解決を目指しており、目安として3回のADR実施で3ヶ月程度での解決とされています。
そのほかのメリットとして、裁判と違って「手続法」がないため、手続き自体が簡便であり、臨機応変に対応できる点や、手続きが非公開であるため、プライバシーに関する紛争などにも向いている点などがあげられます。
一方、デメリットとして覚えておきたい点は、裁判とは違い、強制執行力がないことがあげられます。ADRの場合は、解決後の紛争の蒸し返しなどを避けるため「和解契約書」を作成します。なお、一定の要件により、時効の中断や訴訟手続き中止などの法的効果が付与されることになります。
ADRはだれが実施するの?
ADRを実施するのは、民間事業者の申請に基づいて、法務省が法律に定められた基準をクリアしているかを審査し、法務大臣が認証した機関(認証紛争解決事業者)が実施します。認証紛争解決事業者の一覧は、法務省の「かいけつサポート」というホームページで確認することができます。
また、平成31年1月24日現在で155の機関が活動しています。その内訳の多くは、弁護士、司法書士、土地家屋調査士などの「士業団体」の都道府県組織です。ほかに、業界ごとに、○○協会などの事業者が名を連ねています。
ちなみに、先頭の認証番号0001番は、昨年何かと目にした「公益財団法人日本スポーツ仲裁機構」です……。
まとめ
法務省(かいけつサポート)によると、認証紛争解決機関による取扱実績は平成28年度の終了件数で1109件、成立件数は395件とのことです。また、ADRによって和解成立に至った割合は、同じく平成28年度で35.6%です。
ADRは、平成19年4月1日に施行された「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(ADR促進法)」に始まった、まだ歴史の浅い制度です。国民への認知度向上や手続きのさらなる簡素化など、普及に向けた課題が多くあると思われます。
しかし、「友人に貸したお金が返ってこない」「隣にできた飲食店が深夜までうるさい」など突然自分の身に降りかかるかもしれないトラブルやもめ事。それらを、コストをかけずに解決するための方法のひとつとして、ADRの存在を覚えておきましょう。
出典:法務大臣による裁判外紛争解決手続の認証制度(かいけつサポート)
執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
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