税制改正でどうなる!孫への教育資金目的の一括贈与なら非課税になる?
ファイナンシャルフィールド / 2019年3月3日 8時30分
毎年度行われる税制改正は、前年度の12月中、遅くとも1月には与党の税制改正大綱が発表され、3月までに国会で審議されて可決・成立する流れとなっています。税制改正法案が成立すると、4月1日から施行されるものが多く、なかには1月1日に遡って適用されるものもあります。 したがって、この時期はまだ法案が成立していませんが、関係者は新税制に対応するため、税制改正大綱が公表された段階で準備に取り掛からなければ施行に間に合いません。 改正される税制、新設・廃止される税制はたくさんありますが、今回は、人生の3大資金の1つである教育資金の贈与が、税制改正によってどうなるのかを見ていきます。
教育資金一括贈与非課税措置とはどのようなものか
2019年3月31日までの時限措置となっている「教育資金の一括贈与非課税措置」が誕生したのは、2013年度の税制改正です。
当時の税制改正大綱には、「60 歳以上の世代が資産全体の6割を保有するなかで、こうした資金を若年世代に移転させるとともに、教育・人材育成をサポートするため、子や孫に対し行われる教育資金の贈与について一定の額を非課税とする措置を講ずる」と記されています。
つまり、将来的に相続税を支払うような裕福な家庭が想定されますが、「祖父母が孫に教育資金を一括で生前贈与してもその分の贈与税はかからず、祖父母の相続財産も減らせるので相続税も節税できます」という制度です。
その結果、孫の親権者である父母がそのお金を子どもの教育資金に充てることができ、これにより子世代の家計に余裕が生じて消費が活発になり、経済が活性化するという効果をねらったものといえます。
教育資金の非課税枠は、学校等に支払われる教育費として最大1500万円(塾や習い事など学校等以外に支払われる教育費については最大500万円)に達するまでとされ、孫がいる富裕層に広く利用されています。このため、当初は2015年までの時限措置だったのですが、2016年から使途の範囲に通学定期券代や留学渡航費などを加えて、2019年3月31日まで延長されました。
教育資金の一括贈与非課税措置は、基本的に、将来のための教育資金(原則として受贈者が30歳になるまで利用できる)を今のうちに一括で贈与しておくというものです。制度上、親から子への贈与でも利用できますが、親が子のために支払う教育資金は、そのつど支払えば贈与の対象とならないので、実際には祖父や祖母が孫の教育資金として一括で贈与するケースがほとんどです。
その方法は、一般に贈与者である祖父母が信託銀行等に教育資金管理契約による専用口座を開設して教育資金の信託等をし、受贈者である孫が教育資金として学校や塾などに支払うために、そのつど信託銀行等から払い出すというものです。
受贈者は払い出した金銭を教育資金の支払いに充当したことを証明するために領収書等を信託銀行等に提出しなければなりません。実際には、ほとんどが孫の親権者として父母が払い出しています。
前年の所得が1000万円を超えると利用できなくなる
教育資金の一括贈与非課税措置も、導入から数年の間でニーズのある人の利用が一巡したこともあり、最近は導入当初に比べて新規契約数が大幅に減少しています。また、格差の固定化につながらないよう機会の平等を確保するため見直しが必要との指摘もあり、2019年度の税制改正大綱によれば、おもに次の(1)~(4)の見直しを行ったうえで、2021年3月31日まで2年間延長されます。
1.受贈者の所得制限
贈与時の前年の合計所得金額が1000万円を超える場合は適用を受けることができない(2019年4月1日以後に信託等により取得する信託受益権等に係る贈与税について適用)。
2.非課税で払い出しができる教育資金の制限
2019年7月1日以後、払い出し時点で23歳以上の場合は、学校等以外に支払われる費用(教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講するための費用は除く)について適用を受けることができない。
3.贈与者死亡時の未使用残高の取り扱い
贈与者の死亡時に未使用の残高がある場合、贈与者の死亡前3年以内に行われた贈与については、受贈者が次の(1)~(3)の場合を除き、相続税の課税対象とする。
(1)23歳未満である場合
(2)学校等に在学している場合
(3)教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合
4.教育資金管理契約の終了事由の見直し
30歳到達時に3.(2)(3)の期間に該当する場合は、その期間終了時または40歳到達時 のいずれか早い日まで適用を受けることができる(2019年7月1日以後に受贈者が30歳に達する場合)。
教育資金の一括贈与非課税措置は、2年後に再度見直しを行うこととされています。このような時限措置は、経済情勢や利用状況などによって見直しが行われて延長されることがあるので、制度の概要を理解し、適用要件を確認しておくとよいでしょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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