子どもに原因があり、相続でトラブルになる
ファイナンシャルフィールド / 2019年3月9日 12時0分
身近な家族ほど相続がもとで「争族」になる、といわれます。いくつかの原因がありますが、子どもに問題があるケースを考えてみます。 父親が亡くなり、母親と子ども1人が相続する場合は、配偶者居住権を尊重しつつ、遺産を配分することで、トラブルは発生しにくいかもしれません。しかし、以下のケースでは、かなり問題が生まれます。
子ども同士の仲が悪い
相続人となる子ども同士の仲が悪いと相続は大変です。亡くなった親の配偶者が健在の場合は、配偶者が緩衝機能を発揮し、少しは緩和されるでしょう。相続人が子ども同士だけだと話がこじれる場合があります。
例えば、残された配偶者が高齢のため1人で生活することが困難なときは、誰が実家に入るか、誰が親を引き取って一緒に生活するかを決めようとしても、仲が悪いと財産分与と合わせて、合意点を見つけるのに苦労することがあります。
また、1人の子どもが、最後まで親と同居し生活面の面倒をみていたケースでは、本人は他の兄弟より「多くの遺産をもらえる」と考えがちです。ところが他の兄弟は「なるべく平等に」と考えます。仲がいい兄弟でもトラブルのもとになると思いますが、仲が悪ければなおさらです。配分方法を巡って、協議ができないかもしれません。
子ども同士が、別の要因で疎遠となり、親の葬式までほとんど顔を合わせていない場合も、トラブルがよく起こります。とくに遺産が家と土地だけの場合などは、配分が難しくなります。実家を売却して均等にという考えが自然ですが、全員が一致するとは限りません。
親が亡くなる前に、トラブルを予想してきちんと遺言書を残していれば、それに沿った解決が可能になります。遺言書がない場合、全員が相手の立場を尊重し合い、第三者に仲介してもらうなどして、妥協点を見出すことです。それが難しいときは、家庭裁判所の調停が必要になります。
子どもの人数がかなり多い
子どもの人数が多い場合、個々の意見がまとまりにくく大変です。とくに相続すべき子どもたちが、70歳以上の高齢者、結婚した女性と家の事業に協力してきた男性との間で、考え方の相違がある場合も苦労します。遺産分割案づくりの段階で、自分の主張を通そうとすれば収拾がつかなくなることもあります。
子どもの何人かが、海外または遠方で生活している場合も同様です。普段接触の機会が少なかったこともあり、他の兄弟たちとは、明らかに空気感が違うからです。葬儀のときにようやく顔を出し、全く別の感覚で発言、自分の論理だけで相続問題を考える傾向が強くなります。
こうした事態を避けるためには、親が事前に自分の意志を全員に伝える機会をつくるか、きちんと遺言書を用意しておく必要があります。
親との折り合いが悪く、早々に自宅を飛び出し音信不通になっている子がいる場合も注意が必要です。例えば、親の訃報をどこかで聞きつけ、葬儀などのときに舞い戻ってきて、「自分は冷遇されたので財産分与は多く」と主張されることも。また、音信不通のままで所在がわからず、法律に沿って財産を分与しようとしても出来なくなる事態も生まれます。
配偶者が口出しをする
実際に多く見られるのは、配偶者が何かと口出しをすることです。当然ですが、配偶者には夫や妻の親の財産に関して、相続権はありません。ところが「貴方は弱腰だ!」「もっと兄さんに強く言って!」などと発言、決められたことにも何かと注文をつけ、自分の配偶者に有利な方向にもって行こうとします。遺産を巡る会合に、堂々と出席しようとする人もいます。
こうした事態をなくすためには「配偶者には口出しをさせない」「会合には参加させない」といった当然の原則を、相続人同士で確認しておく必要があります。配偶者の意向に影響されることは、相続に関しては絶対に避けるべきです。
問題を抱えた子どもがいる
最近では平均寿命が延び、亡くなる親の年齢も90歳を超えることも珍しくありません。当然、相続する子どもたちも70歳以上が増えてきます。そのため、認知症を発症している、脳梗塞などで倒れ半身不随の障害がある、といったケースも出てきました。
相続人に1人でも健常者がいれば、その人が中心となって相続の手続きを進め、障害を持った人のサポート態勢をどうするかを、決められるかもしれません。それでも親から相続する遺産が少ない場合は、将来への不安が残ります。
もし、相続人が知的障害をもっている、認知症を発症している人だけの場合は、さらに深刻な事態になります。認知症などを抱えている人は、法律行為を行う意思能力がないと見なされ、遺産分割に参加できません。成年後見人制度を利用し、行政に成年後見人を選任してもらい、遺産分割の作業を進めます。
また、相続人が未成年の場合、親権者が法定代理人になれないため、特別代理人を選定してもらう必要があります。
介護に協力した人への報酬
2019年から、介護に協力した人に対して正当な評価がされます。
例えば、長男夫婦が親と同居しており、親の介護を主として長男の妻が行っていた場合に、これまでは、相続時に介護の苦労をどう評価するかが問題で、決まった基準もありませんでした。
長男の妻が行った介護への協力を評価して、長男に対し他の兄弟よりも多めに遺産配分をするとしたケースはこれまでもありました。しかし一方で、長男以外の兄弟が、法律では遺産は「子どもだけによる均等な配分」を強く主張し、トラブルとなる場合も多々ありました。
しかし、今回の制度改正により、介護などでの貢献は「特別寄与料」が正当な権利として認められ、上記例の場合でいうと、長男の妻がこれを受け取れるようになりました。長男の妻には法的な相続権はありませんが、長男以外の相続人が相続財産の中から、一定の基準に従って「特別寄与料」を支払う制度になりました。
介護に対する正当な評価がなされたことは、時代の流れを正しく反映した妥当な制度改正といえます。
執筆者:黒木達也(くろき たつや)
経済ジャーナリスト
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