相続の争いを避けるために知っておくべきルール
ファイナンシャルフィールド / 2019年3月18日 9時0分
相続での争いを避けようと、生前に相続対策を考える人が増えてきているようです。 相続対策には遺言書の作成や生前贈与などがありますが、何も配慮をせず自分の思うように決めてしまうと、逆に争いのタネをまく結果になるかもしれません。 今回は相続における遺留分について紹介します。
ケース別、遺留分の割合
遺留分とは、民法で定められている一定の相続人が最低限相続できる財産のことを言います。相続では亡くなった人(被相続人)の意思を尊重するため、遺言は優先されるべきものでしょう。
しかし、被相続人が財産の全てを自由に処分できるとしたら、残された家族の間で不平等が生じるかもしれません。なかには経済的に生活に困るケースが発生するかもしれません。そのような事態を防ぐために、民法では相続人が最低限相続できる財産を保証しているのです。
遺留分の割合は次のように定められています。
・配偶者または子が相続人になる場合は、遺留分の総額は相続財産の1/2です。
・直系尊属のみが相続人になる場合は、遺留分の総額は相続財産の1/3です。
・兄弟姉妹には遺留分がありません。
次に、相続人のケース別に遺留分の割合をみていきましょう。
1. 配偶者のみの場合
配偶者の遺留分は、被相続人の財産の1/2です。たとえば財産が6000万円ならば遺留分は3000万円となります。
2. 配偶者と子の場合
配偶者の遺留分は、被相続人の財産の1/4(1/2×1/2[法定存続分/以下同])です。子の遺留分も、被相続人の財産の1/4(1/2×1/2)です。子が複数の場合は、子の遺留分を子の人数で分けます。
例として、財産が6000万円で子が2人ならば、遺留分は配偶者が1500万円、子1人あたり750万円ずつとなります。
3. 配偶者と直系尊属(父母)の場合
配偶者の遺留分は、被相続人の財産の1/3(1/2×2/3)です。直系尊属(父母)の遺留分は、被相続人の財産の1/6(1/2×1/3)です。父母がともに健在の場合は、1/12ずつとなります。
4. 配偶者と兄弟姉妹の場合
配偶者の遺留分は、被相続人の財産の1/2です。兄弟姉妹には遺留分がありません。
5. 子のみの場合
子の遺留分は、被相続人の財産の1/2です。子が複数の場合は、子の遺留分を子の人数で分けます。例として、財産が6000万円で子が2人ならば、遺留分は子1人あたり1500万円ずつとなります。
6. 直系尊属(父母)のみの場合
直系尊属(父母)の遺留分は、被相続人の財産の1/3です。父母がともに健在の場合は、1/6ずつとなります。
7. 兄弟姉妹のみの場合
兄弟姉妹には遺留分がありません。
このように遺留分が認められるのは配偶者と子(代襲相続人を含む)、直系尊属であり、兄弟姉妹は含まれないことに注意が必要です。遺留分権利者について確認するとよいでしょう。
遺留分の計算はどうするのか?
遺留分を計算するには、遺留分の基礎となる財産に上記の遺留分の割合を掛けます。遺留分の基礎となる財産は次のように算出します。
(遺留分の基礎となる財産)=(被相続人が相続開始時に持っていた財産)+(被相続人が贈与した財産)-(消極財産[債務])
被相続人が贈与した財産に含まれるのは、おもに次のものです。
・特別受益とされるものとして、相続人が被相続人から生前に贈与を受けるなど、特別に被相続人から受けた利益。過去にさかのぼるにあたり期限はありません。
・特別受益以外で相続開始前の1年間にされた生前贈与。
・当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってされた贈与。1年前の日より前のものも含まれます。
これらの財産を遺留分の計算にあたって考慮するのは、被相続人が全財産を特定の人に生前贈与してしまうと遺留分がなくなってしまうからです。
注:執筆時点(2019年2月)の法令に基づいて記載しています。
生前贈与や遺言で気をつけること
遺言書を作成するときや生前贈与をするときは、遺留分について配慮するとよいでしょう。
重要なポイントは2つ。
1つ目は、配偶者、子、父母が遺留分権利者になることを知っておくことです。
2つ目は、相続人への生前贈与が遺留分の計算に含まれることです。
生前贈与した分を考えずに、現在の財産だけで配分を考えて遺言書を作成すると、遺留分が確保できない状況になってしまうかもしれません。
これから生前贈与や遺言書の作成を考えている人は、遺留分について改めて確認してはいかがでしょうか。
執筆者:伊達寿和(だて ひさかず)
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員
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