2019年度の税制改正から読み取る未成年者による投資
ファイナンシャルフィールド / 2019年3月20日 10時50分
選挙権の年齢が引き下がり、そして成人の年齢の引き下げが行われます。 成人年齢の引き下げは、「投資の世界」にどのような影響があるのでしょうか?そもそも、未成年者は投資ができるのでしょうか?
未成年の方による投資
未成年者による投資が可能か否かというと、微妙です。
未成年者は、本人の名義で証券会社などに「未成年口座」などを開設することが可能です。しかし、それには、さまざまな条件があります。
例えば、その未成年者が居住者であること、そして、本人名義の銀行口座があること。これは、投資資金の入金や出金に銀行口座を通すためですね。
また、未成年者の名義で投資を行う場合、証券会社などに「証券総合口座」を開設するに当たって、親権者や未成年後見人の全員の同意を得られることが必要です。実際の取引(株式の売買や投資信託の購入や解約など)は、親権者や未成年後見人の中の、お一人が行わなくてはなりません。
なので、親権者や未成年後見人の中のお一人を「親権者登録」します。
「親権者登録」をする親権者や未成年後見人にも条件があります。
未成年ではないこと、居住者であること、そして、(未成年者の名義で「未成年口座」を開設しようとしている証券会社)とすでに、なんらかのお取引があること、などです。
未成年者にも、親権者や未成年後見人にも、まださまざまな条件があるのですが、本稿では主だったものを載せてみました。
ジュニアNISA
NISAやつみたてNISAには、「居住者で成人」という前提があります。
なので、未成年者、つまり20歳未満の方は「ジュニアNISA」を利用することになります。
ジュニアNISAとNISAとの最大の相違点は、何といっても年齢なのですが。他にも毎年の投資資金の上限が「NISAは120万円」なのに対し、「ジュニアNISAは80万円」というような違いがあります。
そして、NISAは売却代金や分配金などは、いつでも引き出すことができるのに対し、ジュニアNISAは、売却はいつでも可能だけど、売却代金や分配金の引き出しは時期まで待たなければならないというルールがあります。
ちなみに、時期とは「3月31日時点で18歳である年の前年12月31日」のことです(「12月の最終営業日」などとはなっていないので、現実的は1月4日などの「年明け最初の営業日」、ということになると思います)。
ところで、ジュニアNISAをご利用の未成年者が、成年に達した場合には、どうなるのでしょうか?
ジュニアNISAをご利用中の未成年者が、20歳になった後の1月1日を迎えた時点で、(ジュニアNISAを利用している銀行や証券会社で)NISAが自動的に開設されます。そして、ジュニアNISAにて保有していた株式や投資信託は、NISAにロールオーバー(移管)します。
ジュニアNISAの現状
昨年の12月末時点で、NISAとつみたてNISAを併せて、1246万6912口座なのに対し、ジュニアNISAは31万2735口座です。
筆者の周りで、ジュニアNISAを利用しているのは、やはり「富裕層」と言われる方々ですね。
お金持ちのお祖父さまやお祖母さまの相続対策のために、お孫さまに生前贈与をなさり、その贈与された資金を、お孫さま名義の未成年口座やジュニアNISAで運用している場合が多いようです。
未成年口座やジュニアNISAで気に留めておきたいこと
未成年口座やジュニアNISAを利用する場合、投資資金を出してくれるのがお祖父さまやお祖母さまでも、実際の運用は「親権者登録」を済ませた親権者もしくは未成年後見が行います。そして、親権者登録ができるのは、お一人です。
もし、親権者、つまり父母が離婚することになった場合はどうなのでしょう。
例えば、投資資金を出してくれたのが、「父方」のお祖父さまやお祖母さま、あるいはお父さまだったとして、もし父母の離婚後の親権が「母」になったとしたら?
親権が父母のいずれのものになろうが、未成年口座やジュニアNISAにある株式や投資信託、そして投資用の資金は「(未成年の)子ども」のものなのです。しかし、親権ということは「未成年の子ども」の財産の管理権も含まれますから、実際にジュニアNISAを管理、運用するのは「母」になるのではないでしょうか。
このような点にも注意する必要があります。
2019年度の税制改正により
2023年からのお話なのでまだ先のことですが、つみたてNISAを含むNISAの利用年齢が「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられます。
同時に、ジュニアNISAを利用できる年齢も18歳までになります。なので、先述の「払い出し」の制限についても、変更がなされるものと考えられます。
出典:金融庁「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査(平成 30 年 12 月末時点(速報値))」
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
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