親の介護が始まったら。知っておきたい「介護休業給付」とは
ファイナンシャルフィールド / 2019年5月11日 10時30分
いつ、誰にでも起こる可能性のある家族の介護。総務省の調査によると、平成28年10月~平成29年9月の1年間で、約10万人が介護・看護のために離職しています(※1)。 60歳を過ぎても元気に働き続けることが当たり前になりつつある現代。介護のために離職することは、本人や雇用主にとっても非常にもったいないことです。どのようにしたら、無理なく仕事と介護を両立できるのかを考えていく必要があります。 今回は、そんな時に知っておきたい支援制度、「介護休業給付」について解説していきます。
介護休業給付とは?
介護休業給付とは、家族を介護するために介護休業を取得した、一定の要件を満たしている雇用保険の被保険者に対して支給されるものです。介護が必要となった家族1人に対して、最大93日間の介護休業を3回まで分割して取得でき、休業期間は給料の67%が支給されます。
ただし、育児・介護休業法の改正前の平成28年12月31日までに取得したものは、異なる要介護状態でなければ分割できないので注意してください。
また、この場合の「家族」とは意外にも広く、配偶者(事実婚含む)、父母(養父母、配偶者の父母)、子、被保険者の祖父母、兄弟姉妹、孫までが含まれます。
<支給対象者>
(1)家族を介護するために「介護休業」を取得した雇用保険の被保険者であること。休業取得時に退職が確定している場合は対象外です。
(2)「介護休業」の開始日前2年間に、給与が支払われた日数が11日以上ある月が通算12ヶ月以上あること。
期間を定めて雇用されている人の場合
(1)、(2)の条件に加えて、介護休業開始時に(3)~(4)の条件が必要になります。
(3)同じ事業主のもとで、1年以上雇用が継続していること。
(4)同じ事業主のもとで、休業開始予定日の93日後から6ヶ月を経過する日まで労働契約があること。つまり、休業開始から最低9ヶ月は雇用されていないといけません(更新がある場合は、更新後のもの)。
<対象となる介護休業>
(1)負傷、疾病、身体上と精神上の障害により、常時介護が2週間以上必要となる家族のための休業であること。要介護認定を受けていなくても、常時介護の対象となる場合があります。
(2)休業の期間を事業主に申し出て、実際に取得した休業であること。
介護休業給付の支給額っていくら?
支給額は原則として、休業開始前に受けていた平均賃金の67%となります。介護休業中にも給料が支払われている場合は、この給料に対する割合によって支給額が変わります。
また、支給額には上限額と下限額が定められており、月額で33万1650円より多く、7万4400円より少なく支給されることはありません。休業開始前の80%以上の給料が支払われている場合は、支給されません。
介護休業給付の手続きとは
<休業前>
「介護休業申出書」を事業主に提出します。
<介護休業終了後>
原則、事業主側がハローワークで手続きをします。事業主側と本人が提出するものもありますが、ここでは本人が用意するものを記載します。
2種類の書類を提出
・「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」
・「介護休業給付金支給申請書」
その他、内容を確認できる添付書類が必要です。
・「介護対象家族との続柄が分かる証明書(住民票など)」
・本人・対象家族の個人番号(マイナンバー)
提出期間は、休業終了日の翌日から起算して2ヶ月を経過する日の属する月末までです。例えば、4月15日に休業終了する場合は、4月16日から6月30日の間に提出することになります。
介護休業給付の注意点とは
以下のような場合には支給されません。
・休業中に離職した
・休業中に11日以上出勤した
また、介護休業中には、厚生年金保険料、健康保険料、住民税の免除制度はありませんので、この点も注意が必要です。
「介護休業給付」は同一家族の介護で、配偶者や兄弟姉妹も介護休業を取得した場合、要件が満たされていればその分の給付金も支給されます。そのため、家族間で介護を協力し合うことが可能です。
まとめ
これからの「人生100年時代」、介護の問題は働く人の誰もが当事者になりえるものです。
この「介護休業給付」は、介護中の経済面を支え、これまで仕事で積み上げた無形の資産を守る制度です。職場の状況により休業取得は難しいと考えることもあると思いますが、原則として介護休業の申し出を事業主は断ることができません。
介護を担う人と事業主で、支援制度をうまく活用し、仕事と介護の両立を実現させていきたいものです。
出典
(※1)総務省統計局「平成29年度就業構造基本調査 結果の概要」
執筆者:井上美鈴(いのうえみすず)
ファイナンシャル・プランナー,ライフシンフォニア 代表
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