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高齢者問題を考える「注文を“まちがえる”料理店」とは?

ファイナンシャルフィールド / 2019年5月11日 10時50分

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ここ数年、ファストフード店の店員やビルの清掃員として、定年退職したであろう年齢とおぼしき方が元気に働いていらっしゃる姿を見かけることがあります。ここでは、高年齢者と仕事について、さまざまな角度からご紹介します。  

高年齢者の就労に対する考えは?

厚生労働省の「平成28年版厚生労働白書」によると、60歳以上の男女に「何歳ごろまで仕事をしたいか」と質問したところ6割以上が、「65歳を超えて働きたい」と答えたそうです。また、「働く理由」では、約7割が「経済上の理由」と回答しました。
 
この、「経済上の理由」について詳しくみていきましょう。
 
総務書統計局の「高齢者世帯・特定世帯の家計」によると、二人以上の世帯のうち高齢世帯(世帯主の年齢が65歳以上)における、無職世帯の1カ月の平均実収入は20万162円。可処分所得(所得から、税金や社会保険料などを差し引いた残り。自分の意思で使えるお金)は17万5509円でした。
 
高齢無職世帯の1カ月の平均消費支出が25万7230円なので、可処分所得に対して毎月8万1721円の赤字ということが分かります。
 
高齢者夫婦世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの世帯)の消費支出は26万846円と、夫婦のみの世帯全体の平均28万7022円と2万円程しか変わりません。定年後に所得が減っても、消費支出額はほぼ変わらないということです。
 
つまり、この赤字を補填するために、高齢無職世帯の多くが働くことを希望しているものと考えられます。一方、そのような高年齢者の希望に対し、雇用する側はどのような考えを持っているのでしょうか。
 

高年齢者の雇用確保の課題は?

厚生労働省の「高年齢者の雇用・就業の現状と課題Ⅰ」によると、高齢者の雇用の場の確保にあたっての課題については、「特に課題はない」という意見が28.5%と最も多かったそうです(複数回答)。
 
一方で、同じくらいのパーセンテージを占めていたのが、「高年齢社員の担当する仕事を自社内に確保するのが難しい」で 27.2%でした。また、「管理職社員の扱いが難しい」が25.4%、「定年後も雇用し続けている従業員の処遇の決定が難しい」が20.8%となりました。
 
一概には言えませんが、年を重ねると体力だけでなく認知能力の低下も懸念されます。若い世代と比べて、仕事におけるパフォーマンス力が落ちてしまうことも、雇用側にとっては不安な要素なのかもしれません。
 

「注文を“まちがえる”料理店」とは?

働くことを希望する高年齢者が多いのに対し、高齢者を雇うことを難しいと考えている雇用側も多いというのは、なんとも悲しい話です。ここで、ひとつご紹介したい話があります。
 
2019年3月4、5日の2日間限定ではありますが、厚生労働省内の職員向け食堂で「注文をまちがえる料理店」がオープンし、話題になりました。
 
この料理店では、料理をプロの料理人が担当し、50~90代の認知症の方が接客を行いました。認知症の理解促進と、『「ま、いっか」の気持ちを広げること』を目的とした取り組みです。一般社団法人「注文をまちがえる料理店」が企画したもので、同方針主催では、3回目の実施となるそうです。
 
運ぶ料理を間違えないように何度も確認するスタッフの一生懸命な姿に、同省職員も心があたたかくなるひと時を過ごせたとのことです。
 
最近の日本人は寛容さに欠けるとよく言われているようですが、高年齢者の真面目さと一生懸命さ、丁寧さ、気配りのうまさは、見習うべきところが多々あると思います。
 
これからは、「注文をまちがえる料理店」のように、さまざまな事情を抱えた労働者が、あたたかく迎え入れられるような社会づくりが求められるのではないでしょうか。
 
「人生100年時代」と言われる昨今、長生きによって経済的に困窮し、働かざるをえない高齢者の方も増えていくと予想されます。
 
また、経済的に余裕があったとしても、社会とのつながりや健康のために、「働きたい」と考える高年齢者も増えるでしょう。今後の「高年齢者と仕事」について注目したいところです。
 
出典:
厚生労働省「平成28年版厚生労働白書 第5節就労に関する意識 P72」
総務省統計局「IV 高齢者世帯・特定世帯の家計」
厚生労働省「高年齢者の雇用・就業の現状と課題Ⅰ ,3.高年齢者の雇用・就業の課題 高年齢者雇用確保の課題(事業主)」
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
 
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