ややこしくて分からない!? JREITと不動産会社株式の違い
ファイナンシャルフィールド / 2019年5月16日 9時30分
多少の貯えはあるけれど、どうしたら増やせるのか困っている人が多い時代です。 最近話題になることの多いJ-REIT(以下REIT)ですが、その個別銘柄は上場株式とほぼ同じ手順で購入・保有ができ、そのうえ2019年5月7日時点での分配金利回りは63銘柄平均で4%前後と比較的高い利回りが期待できます。 上場不動産会社株式と比較する中で、REITの本質と利点・注意点を確認してみましょう。
REIT(不動産投資信託証券)とは
REIT(不動産投資信託証券)とは、投資家から資金を集め、ビル・マンション・店舗などの不動産へ投資を行い、得られる賃貸料や不動産の売買益を投資家に分配する、投資法人の発行する証券のことです。
投資家は、個人の少額資金でさまざまな不動産のオーナーになることができ、運用は専門家に任せて成果の分配を受け取ることができます。REITには「個別銘柄」と「REITを投資対象とした投資信託」がありますが、ここでは個別銘柄について話を進めることにします。
2019年5月現在、上場REITは63銘柄あり、投資家はそれぞれの銘柄の証券を「投資口」単位で購入することで、年2回の分配金を受け取ります。63銘柄、平均の分配金利回りは4%前後になっています。
不動産会社株式との違い
REIT銘柄には、不動産会社と関係のある投資法人もあり、名前もよく似たケースがあります。「平和不動産」と「平和不動産リート投資法人」、「東急不動産」と「東急リアル・エステート投資法人」、「野村不動産」と「野村不動産マスターファンド投資法人」などです。
今回は、「野村不動産」と「野村不動産マスターファンド投資法人」(以下、野村REIT)を例にとって違いを見てみましょう。
収益の内容
野村不動産の収益(売上)は、大きく分けて住宅部門(マンションの分譲販売)、賃貸部門、サービスマネジメント部門の3部門になります。一方、野村REITの収益は賃貸収益のみになります。これを図示すると次のようになります。
※1、※2を元に筆者が作成
野村不動産の場合は、3部門あるので相互にカバーして安定を維持できる事業構造である反面、住宅販売は好不況の影響や在庫ストックの問題が起きます。野村REITは、賃貸事業オンリーで比較的好不況の影響を受けにくいという利点があります。
利益の構造
REITは賃貸収益のみのシンプルな収益構造ですが、収益(売上)から純利益までの段階を見ると、次のようになります。
前項で記載の通り、事業構造が違うので単純比較はできませんが、収益(売上)に対して利益率が大きく違います。
最も注目したいのは、経常利益と純利益の差です。野村不動産の場合は計上利益680億円が純利益460億円になるのに対して、野村REITの場合は経常215億円と純利益214億円でほとんど変わりません。
これは、投資法人への課税制度のためで、一定の条件のもと(利益の90%を分配する)で非課税になるためです。投資法人の段階では利益に対して法人税が掛からず、投資家に分配されるしくみになっています。
資産内容
資産内容を見てみると、野村不動産は事務所など有形固定資産が総資産の50%を超え、また販売用資産の在庫の計上も相当あるのに対して、野村REITは賃貸用資産のみであり、投資法人が身軽な経営体であるのが分かります。
REITの問題点
一見良いこと尽くめに感じるREITですが、不動産価格は好景気時には高騰するため、調達価格が高くなり採算面で厳しい場合や、金利変動の影響、不動産市況が急激に悪化する場合も考えられます。
また、毎期1割の内部留保はできますが、不動産会社や一般の事業会社に比べて事業の幅や内部留保は乏しく、分配金の減少や資産内容の劣化が起こり得ることは考慮が必要です。
まとめ
REITは保有する収益物件をホームページや決算説明資料で開示しており、関心をもって見れば、先行きの見通しもある程度分かります。
REITファンドの投資信託もありますが、銘柄数も63と限られているREITの個別銘柄を個別株式の売買同様に証券会社で取引するのも、運用難の時代のひとつの選択ではないでしょうか。
出典:
※1 野村不動産ホールディングス「2018年3月期 決算説明資料」
※2 野村不動産マスターファンド投資法人「2018年8月期決算説明会」
執筆者:植田英三郎(うえだ えいざぶろう)
ファイナンシャルプランナー CFP
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