親が認知症になる前に準備すべきこととは?
ファイナンシャルフィールド / 2019年5月26日 10時0分
人生100年時代と言われ寿命が延びるとともに、認知症になる高齢者数も確実に増加しています。 残念なことにこの病が未だ治る病気でない以上、発症してからではできなくなってしまう法律行為(自宅の改築や売却、老人ホームへの入居契約等)を踏まえた上で、親がしっかりしているうちにどう準備したらよいのか、費用面や利便性などを勘案してある程度の備えを考えておきたいものです。
成年後見人制度(公的制度)
判断能力が不十分であるという理由から法律行為が行えない人のために、後見人が必要な契約等を締結したり財産を管理したりして、本人の保護を図るのが成年後見人制度です。
親の判断力が低下した場合の選択肢ではあるでしょう。成年後見人制度には、二つあります。
1.法定後見人制度
すでに判断能力が不十分な場合に、申し立てにより家庭裁判所によって選任された後見人等が、本人に代わって財産や権利を守り、本人を法的に支援する制度です。
利用したい場合は、本人の住所を管轄する家庭裁判所へ申し立てをします。
<デメリット>
あくまでも本人を守る制度であるため、将来の相続に備えた子供への贈与などは本人の財産を減少させることから、行うことができません。また、第三者が後見人の場合、たとえ子供であっても、本人の財産総額などは教えてもらえず、本人や子供が望むようなお金の使い方や財産分与ができない可能性があります。
<費用>(東京家庭裁判所)
申し立て時:申し立て費用1万円程度、鑑定費用10万円~20万円など、十数万~20万円程度かかる可能性があります。
家族が法定後見人になることができた場合は、上記費用を受け取らないこともあり得ますが、家族が後見人の際は、成年後見監督人がつけられることが多いようです。
つまり、この制度を利用し続ける間、ずっと月額1~2万円以上の費用が発生し続けることになります。
2.任意後見人制度
将来、判断能力が不十分となった時に備えるための制度です。本人が元気で判断能力があるうちに、将来判断能力が低下した場合に備えて、任意後見人を選び、公正証書で任意後見契約を結んでおきます。後見人には家族を指定することもできますが、デメリットや費用は法定後見人制度と同様です。
民事信託(家族信託)
成年後見人制度は、本人の財産が守られるメリットはありますが、実際に家族が望むお金の使い方ができるかどうかは別問題というところに落とし穴があります。
そこで、老後の生活や介護に必要な資金の管理や給付等の目的に従い、保有する不動産や預貯金等を信頼できる家族に託し、その管理・処分を任せる仕組みが民事信託です。
信託契約作成時に弁護士などの専門家に間に入ってもらい、作成した信託契約は公正証書の形で公的機関に証明してもらうのが一般的です。
比較的家族の意向が反映されやすく、本人の意識がしっかりしているうちに納得した準備をすることができます。
<費用一例>
財産:実家土地2,000万円+家屋1,000+現金2,500万円=5,500万円のケース
信託契約書の作成費用:55万円
(土地2,000万円+家屋1,000+現金2,500万円)×1%
公証証書作成費:43,000円
司法書士に支払う費用:26万円
土地と家屋につき、それぞれ8万円ずつ。信託目録 10万円。
登録免許税:11万円(土地:8万円 家屋:3万円)
土地:2,000万円×0.4%
家屋:1,000万円×0.3%
総額:963,000円
さらに信託監督人をつける場合、司法書士に依頼すると毎月数万円の費用が必要になります。
上記以外の代替案
上記が正攻法ではありますが、そのほかに何か方法はないのでしょうか。
親が認知症になり財産が凍結されて困るのは、
•実家を売りたくても売れない
•実家を貸したくても貸せない
•親の預金を引き出したくても引き出せないことではないでしょうか。
自宅を売る、あるいは貸す必要があるのは、親が介護施設に入るための入居金などの大きなお金が必要な場合や、介護施設での生活が長くなり生活費が足りない場合でしょう。
介護施設を選ぶ際には、入居金が低めなところや、自宅を売らなくても親の年金収入の範囲内でやりくりできるところが見つかれば、ある程度これらの不安に対抗できます。
また、親が元気なうちにリバースモーゲージで自宅を抵当にお金を借りることができれば、介護施設の費用にあてがう現金を確保することができるかもしれません。
次に親の預金をどう引き出すかですが、委任状を書いてもらえば、引き出すことはできます。親の意識がしっかりしているうちに、多めに書いておいてもらうことも対策の一つでしょう。
親の緊急入院などに備えて、親から現金を預かっておくことができれば、いざという時に親のために役立てることができます。
介護が長引くことも想定して、生前贈与で多めに現金を親から子供に移転しておくことができれば、親子ともに安心かもしれません。
執筆者:岩永真理(いわなが まり)
一級ファイナンシャル・プランニング技能士
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