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家族で相続を話し合う際の注意点

ファイナンシャルフィールド / 2019年6月6日 9時0分

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相続放棄や限定承認、遺産総額の算出方法といった相続の基本的なことについては、以前に触れました。今回は、相続について家族で事前に話を進める際に注意しておかなければならない、認知症が及ぼす影響について解説します。   

認知症が及ぼす影響とその対策

ご存じのとおり日本では高齢化が進んでおり、内閣府によると2025年には高齢者の5人に1人は認知症を発症すると推定されています。
 
認知症と診断された場合、法律行為や契約行為が制限され、さまざまな問題が生じます。家族が認知症になる可能性を考慮した早めの対策が大切です。

(1)家族が認知症と診断された場合の諸問題

民法では、医師の診断書において認知症と診断された人は、意思能力のない者として扱われます。その意思能力がない人の法律行為は、「無効」もしくは「取り消せる」ことになっています。
 
法律行為には相続対策も含まれるため、医師の診断で認知症とされた人が行う相続対策などは無効として扱われることになります。
 
具体的には、不動産に関する取引、預貯金の解約や引き出し、生命保険への加入なども該当します。当然のことながら、生前贈与や遺言書の作成などもできなくなりますので、事実上、相続対策はできないことになります。

(2)認知症とその対策

被相続人が認知症と診断された場合、意思能力のない者として扱われますので、上記のように、贈与や遺言書の作成など、相続対策はできなくなります。
 
被相続人名義の財産については、本人の承諾なしに手をつけることはできません。認知症を発症してからでは、もはや手遅れとなってしまいます。対策として、「後見制度」および「家族信託」の2つをご紹介します。
 
A 後見制度による対策
後見制度には、「任意後見制度」と「法定後見制度」があります。
 
「法定後見制度」は認知症を発症してから活用する制度です。
 
「任意後見制度」は法定後見制度と違い、被後見人(父、母など)の意思で後見人を選出し、その後見人に財産の処分を託すことができます。つまり、任意後見制度であれば相続対策が可能ということです。
 
任意後見制度を利用する場合、後見人と被後見人との間で「任意後見契約」を締結し、被後見人に認知症の症状が見られるようになってから、後見人が資産の管理・運用・処分をすることになります。
 
B 家族信託(民事信託)による対策
家族信託とは、親が元気なうちから、子に財産の管理を任せる手法のことです。元気な(意思能力のある)うちに信託契約を締結し、財産の管理と処分を託します。
 
 〇家族信託の機能
  ・委任契約の代用 ⇒ 元気なうちから財産の管理・処分を託す。
  ・後見制度の代用 ⇒ 本人の意思能力低下後における財産の管理・処分を託す。
  ・遺言の代用   ⇒ 本人死亡後の資産承継先を自由に指定できる。
 
※3つの機能を1つの信託契約で実現可能です。 
 

 
  委託者:財産の所有者で、管理を託す人(老親)
  受託者:託された財産の管理・処分を行う人(子)
  受益者:信託財産から経済的な利益をもらう人(信託財産の実質的なオーナー)
  信託財産:管理・処分を託した財産
 

まとめ

このように、相続開始前に家族で注意すべき点として、認知症が挙げられます。その対策として今回は、「任意後見制度」「法定後見制度」および「家族信託」の概要を簡単に解説しました。
 
次回以降は、「後見制度」および「家族信託」について、より詳しく解説したいと思います。
 
出典:内閣府「平成29年版高齢社会白書(概要版) 3 高齢者の健康・福祉」
   ※1 一般社団法人家族信託普及協会「制度の概要」
 
執筆者:内宮慶之(うちみや よしゆき)
内宮慶之FP事務所代表
CFP認定者(日本FP協会所属)、ファイナンシャルプランニング
 
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