若い人に知ってもらいたい【若年者納付猶予制度】ってどんな制度?
ファイナンシャルフィールド / 2019年6月20日 23時15分
「漢字がたくさん続くと拒否反応を起こす!」と、特に若い読者の方から声が聞こえてきそうですが、「若年者納付猶予制度」は若い人を対象にした制度です。
一律の保険料である「国民年金保険料」
会社員や公務員などのお勤めの方や、お勤めの方に「扶養されている方」を除いて、日本国内に住む20歳~60歳の方は原則として国民年金の保険料を納めなくてはなりません。
2019年度(4月~翌年3月)の国民年金の保険料は、1ヶ月当たり1万6410円です。国民年金は収入の多寡に関わらず、一律の保険料です。なので、人によっては「高い!こんなの払えるか!」とお感じになる方もいらっしゃるでしょう。
国民年金の保険料は、日本年金機構から届く「納付書(のうふしょ)」という書類を持って、コンビニエンスストアのレジや銀行の窓口などで納めることができます。納めずに放っておくと、催促されることもあります。
「若年者納付猶予制度」とは
国民年金保険料を支払えない場合、「若年者納付猶予制度」を利用できないか、検討することになります。
「若年者納付猶予制度」の手続きを行うと、国民年金の保険料の支払いが猶予されます。国民年金の保険料を「納めなくて良い」と、国から認められるようなイメージです。なので、催促を受けることもありません。
他にも以下のメリットがあります。
(1)「受給資格期間」の計算に含めてもらえる
(2)将来、万が一、障害を負ったり、亡くなった場合でも、「障害基礎年金」や「遺族基礎年金」をもらうことができる
(3)「若年者納付猶予制度」の対象になった期間の保険料は、将来、追納(ついのう)することができる
デメリットは…
(4)(追納をしなければ)若年者納付猶予制度の対象になった期間の分だけ、将来の「老齢基礎年金」の金額が減る
(5)付加保険料や国民年金基金の掛け金などを納めることができなくなる
上述の(1)について、補足します。「受給資格期間」とは、年金を受けるために必要な加入期間のことです。「受給資格期間を満たしていれば」65歳から老齢基礎年金をもらうことができますが、「受給資格期間を満たしていなければ」65歳から老齢基礎年金をもらうことができません。
「受給資格期間を満たしている」かどうかは、以下の計算式で判断します。
「国民年金の保険料を納めた月数」+「若年者納付猶予制度の対象になった月数」+「国民年金の保険料を免除された月数」+「学生納付特例の対象になった月数」
以上を合計して「120ヶ月以上」なら、「満たしている」と判断します。
以上を合計して「120ヶ月未満」なら、「満たしていない」と判断します。
(3)の追納とは、「若年者納付猶予制度」の対象になった期間の国民年金の保険料を、「後で納める」ことです。「後で」というのは、「10年以内」という意味です。
例えば、平成31年4月の国民年金の保険料が、「若年者納付猶予制度」の対象になったとしましょう。子の場合、追納ができるのは令和11年4月末までです。
ただし、「若年者納付猶予制度」の対象になった年の翌年から数えて3年目以後に追納する場合、当時の保険料(例えば、2019年度なら1万6410円)に、加算額が加わります。
「若年者納付猶予制度」の対象になった期間に対し、追納を行えば、「国民年金の保険料を納めた期間」として扱われます。
(4)は(3)とは逆に、「若年者納付猶予制度」の対象になった期間に対し、追納を行わなかった場合です。2019年度の老齢基礎年金は、20歳~60歳までの40年間、国民年金の保険料をフルに納めていた場合、78万100円となります。
例えば、20歳~60歳までの間に1年間「若年者納付猶予制度」の対象になった期間があり、39年間国民年金の保険料を納めていた場合はどうでしょうか?
78万100円×39年間÷40年間=76万597円になります。
つまり、「若年者納付猶予制度」の対象になった期間の分だけ、将来の老齢基礎年金の金額が少なくなってしまうのです。
「若年者納付猶予制度」の対象になるのは、どんな人?
「若年者納付猶予制度」は若年者というネーミングの通り、若い方が対象ですが、具体的には20歳~50歳未満の方が対象になります。なお、学生の方は、この制度の対象外です(学生の方は、「学生納付特例制度」を検討することになります)。
「国民年金の保険料を納めるのが経済的に苦しい」という方が対象ですが、「ただ苦しい」というのではなく、明確な所得の基準があります。本人と配偶者の、それぞれの前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内でなくてはなりません。
(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
「若年者納付猶予制度」は、どうやって手続きをするの?
年金手帳または基礎年金番号通知書などの必要書類を持って、住所地の市・区役所や町村役場の国民年金課、もしくは年金事務所に足を運びましょう。
市・区役所や町村役場の国民年金課、もしくは年金事務所には「国民年金保険料免除・ 納付猶予申請書」という書類がありますので、記入して提出します。
「国民年金保険料免除・ 納付猶予申請書」は日本年金機構のホームページからもダウンロードすることができますので、郵送でも手続きができます。
郵送で手続きをする場合、マイナンバーカードの表・裏両面または下記(1)および(2)のコピーを添付してください。
(1)マイナンバーが確認できる書類:通知カード、個人番号の表示がある住民票の写し
(2)身元(実存)確認書類:運転免許証、パスポート、在留カードなど
「若年者納付猶予制度」の申請ができる期間は、以下の通りです。
・過去期間……申請書が受理された月から2年1ヶ月前まで。
・将来期間……翌年6月(1月~6月に申請したときは、その年の6月)分まで。
ただし、1枚の申請書で申請できるのは、7月から次の年の6月までの12ヶ月間分となります。また、過去期間のうち、すでに国民年金の保険料を納めてしまった期間については、「若年者納付猶予制度」の対象にはなりません。
「国民年金保険料免除・ 納付猶予申請書」の「継続希望区分」の「はい」の欄に〇をすると、毎年の申請が不要となり、翌年以後も「若年者納付猶予制度」の対象になる場合があります。
以上、「若年者納付猶予制度」のお話でした。国民年金保険料の納付書が届いたら、放置せずに保険料を納めるか、「若年者納付猶予制度」などの手続きを行うようにしましょう。
出典:日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」
日本年金機構「国民年金保険料 免除・納付猶予の申請について」
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
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