6月から新制度スタート!~ふるさと納税に関して自治体が“3分類”された状況とは?(前編)
ファイナンシャルフィールド / 2019年6月22日 9時15分
今年6月からふるさと納税に関する制度が大きく見直されました。返礼品の過剰な“サービス合戦”にブレーキをかけて、制度の適正な運用をはかろうとする趣旨のようです。 その結果、返礼費用の割合が高かったり、返礼品が地場産品でなかったりした自治体は、是正措置を求められることになったのです。
実は、納税ではなく「寄附」です
この制度、「納税」といわれますが、実態は、都道府県や市区町村など自治体への寄附です。自分の出身地や応援したい自治体に寄附をすると、寄附額から2000円を差し引いた額が、所得税や住民税から特例控除される制度です。控除額には上限があります。
ふるさと納税制度は2008年度に始まりましたが、2015年度から導入された控除上限の引き上げや、確定申告不要なワンストップ特例(要件あり)などにも大きく後押しされて、寄附額と適用者数は近年急増。
2017年度のふるさと納税受入額は、約3653億円という状況でした。(「ふるさと納税に関する現況調査結果」<2018年7月 総務省公表>による。末尾※1参照)
見直しされた内容とは?
今回の改正では、総務大臣が次の基準に適合した自治体を指定し、指定を受けたところだけが制度の対象となりました。(末尾※2参照)
(1)寄附金の募集を適正に実施する地方団体
(2)返礼品を送付する場合には、返礼割合を3割以下とし、かつ地場産品とすること
この改正は、今年6月1日以後に支出された寄附金について適用となり、指定対象外の自治体へ6月1日以降に支出しても制度の対象外となります。政府は、今年4月に指定の申出書を各自治体から受け付け、次のとおり新制度がスタートすることとなりました。
<新制度の対象自治体数>
1783(46道府県+1737市区町村)
(注)東京都は申出書を提出せず。また提出した1787のうち「大阪府泉佐野市」・「静岡県小山町」・「和歌山県高野町」・「佐賀県みやき町」の4自治体は指定されず。
<指定された期間等>
・1740自治体(新基準に適合) :2020年9月末日まで
・43自治体(新基準に一部不適合):2019年9月末日まで
(注)43自治体は、今年7月に延長(2020年9月末日まで)するための申出を行うことができる。
<指定更新>
・更新の申出(毎年7月)と審査により毎年10月から1年間更新される。
これまではなかった”試験”が一斉に行われて(東京都はそもそも受験せず)、【合格1740、追試43、不合格4】となったような状況です。
指定されなかった4自治体は、マスコミ報道でもたびたび取り上げられていましたが、[高い返礼率、必ずしも地場産品とはいえない多彩な返礼品群、返礼品以外にネット通販ギフト券などを提供]等、いわば”行きすぎたサービス”で多額の寄附金を集めたことで、新制度の指定から今回は外れた模様です。
また、新基準に一部不適合とされた43自治体については、今年7月の申出内容によって2020年9月末日まで延長するかどうかを判断されます。まさに”追試”のようですね。
集めた寄附金額の多寡だけではないようにも見える指定結果 受入額ベスト20の自治体で見てみると……
先ほどの「ふるさと納税に関する現況調査結果」の資料には、3ページ目に「(参考)ふるさと納税の受入額及び受入件数(受入額の多い20団体)」が掲載されています。
20自治体の明細と今回の指定結果を組み合わせて作成したのが、次の表です。
(注)「ふるさと納税に関する現況調査結果」及び添付の自治体別集計結果(2018年7月 総務省公表)をもとに筆者が集計・取りまとめしたもの。なお、元資料の受入額を億円単位に調整し、受入件数は省略した。
まとめ~後編に向けて
これらの集計結果を見ると、受入額上位でありながら「〇(通常期間で指定)」になったところも多く、必ずしも2017年度に集めた金額の多寡で指定が判断されているわけではないことが確認できます。
総務省は、近年寄附額や適用者数が急増しているブーム状況も踏まえて、返礼等に関して節度ある対応を各自治体に対して折々に呼び掛けてきました。2018年11月1日時点の各自治体の対応状況ならびにその後の動向などを精査して、今回の指定対応を決めた模様です。
次回の後編では、指定状況についてもうひとつの視点から確認しながら、ふるさと納税の今後について考えたいと思います。
出典
(※1)総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(平成29年度実績)」
(※2)総務省「ふるさと納税に係る総務大臣の指定について」
執筆者:上野慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士
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