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高齢者の就業をとりまく状況とは?

ファイナンシャルフィールド / 2019年6月30日 10時40分

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人生100年時代において、高齢者の金融資産不足の問題がクローズアップされています。90歳代まで生きることがごく普通になった今日、老後資金の不足は高齢者のみならず、全世代で現役期から考えておくべきテーマになりつつあります。   今回は、老後資金の不足を就業によってカバーする際の課題について、エイジフリーも含めて考えてみることにします。  

高齢者家計の問題

日本ファイナンシャル・プランナーズ協会(日本FP協会)が総務省の高齢者世帯の家計調査(2018年)を元に作成したデータによると(※1)、高齢者夫婦世帯(夫65歳以上、妻60歳以上で構成する夫婦一組)のうち世帯主が無職の世帯の平均収入は、約22.3万円でした。
 
それに対して、総支出は約26.5万円であり、約4.2万円のマイナスになっています。これを、各家計では貯蓄で埋めている状況ですが、年間約50万円の赤字は、90歳以上まで生きることが普通になった今日では、なかなか大変な金額と言えます。
 
また、多くの高齢者が住む都会では、月26.5万円の支出は決して余裕のある生活費とは言えず、現在現役で余裕のある生活をしている人ほど将来の不足が懸念されます。
 

家計の寿命の延長

人生100年・90年は当たりまえの時代に家計の収支の不足を補うには、支出の削減や収入増を図らなければなりません。
 
しかし、支出を減らすのは、あまり楽しい選択ではないと思われます。資産運用で資産を増やすことはリスクが多い今日、やはり体力と知力に合わせた就業による収入増が家計の寿命延長に役立つのではないでしょうか。
 
また、高齢期をアクティブに楽しく暮らすことは、高齢期のもう一つの懸念となる認知症対策になることは間違いありません。
 

70歳以上高齢者の就業状況

総務省統計局の人口推計(※2)と内閣府の高齢社会白書(※3)によると、平成28年時点での総人口における70歳以上の高齢者が占める比率は19.2%です。そのうち、就業者の比率は13.8%、336万人になります。
 
これを現役世代(15~64歳)、準高齢者(65~69歳)、高齢者(70歳以上)に分けて、時系列に見てみると以下の表のようになります。
 

 
この表で現役世代の就業比率が高くなったのは、専業主婦の就業の結果と推定されます。また、65歳~69歳の比率の上昇は定年延長の結果と思われます。
 
意外なのは70歳以上の就業比率が2000年以前に比して相当低下していることです。これは農業をはじめとする自営業者の減少の結果と推定されます。
 

働いている高齢者は何歳まで働きたいと思っているか

先述の内閣府の平成29年版高齢社会白書で、現在働いている高齢者に「何歳頃まで収入を伴う仕事をしたいですか」と質問したところ、「70歳くらいまで」「75歳くらいまで」「80歳くらいまで」「働けるうちはいつまでも」の合計が79.7%となりました。約8割の人が、高齢期にも就業意欲を持っていることが分かります。
 
また、「75歳くらいまで」「80歳くらいまで」「働けるうちはいつまでも」の回答の合計を見ても、全体の57.8%を占めています。
 

高齢期の就業

昨今は、さまざまな業界で深刻な人手不足が問題となり、60歳代の労働市場での戦力化は急速に進んでいます。さらに、各業種での人手不足の対応策として、急遽、外国人労働者を受け入れる法整備が整えられました。
 
このような環境でも、70歳代の就業は容易ではありません。60歳代まで現役で会社・団体に勤務している場合は、65歳~68歳まで定年延長、再雇用がほぼルール化されていますが、その先はなかなか見えないと言えます。
 
元の会社や団体から、さらなる就業機会が得られるケースは極めて少ないのではないでしょうか。70歳以降も就業を希望する際の相談先は、高齢者向け就職紹介事業者やシルバー人材センターとなります。
 
この場合の最大の難点は、職種と年齢になります。
 

エイジフリー社会は実現するか

財団法人社会経済生産性本部は、『「エイジフリー社会の実現をめざして」~年齢に中立な経済・社会の構築を~』という提言を、平成18年に報道機関向けに発表しています。
 
・引退のエイジフリー化 ・処遇制度のエイジフリー化 ・就職選択のエイジフリー化
 
の3つを掲げていますが、これは労働市場での年齢による制限の多さを示すものです。
 
この提言が出されて10年以上経過しますが、実際の70歳代の高齢者の求職市場での職種は、単純作業がほとんどです。過去のキャリアを活かせる知的労働はあまり目にすることがありません。
 
経済産業省の「生涯現役社会に向けた 雇用制度改革について」(2018.10)を見てみると、雇用不足(人手不足)であるにもかかわらず、「医療福祉」「情報通信」「技術」「事務」「販売」で高齢者の就労が進んでいない状況も伺えます。
 

得意技と生涯現役の意思を持つ

仕事をしたい人のエイジフリー化は今後実現していくと思われますが、仕事を何歳までしたいと思うかは人それぞれです。ただ、既述の通り60・70歳代で仕事をしている人で、働き続けたいと考えている人のウエイトが高いのも事実です。
 
社会参加を楽しみながら長寿化時代の老後資金を確保しようとする人は、50歳代までに高齢時でも通用する得意技や資格を持ち、生涯現役のマインドを持つのも、一つの選択ではないでしょうか
 

まとめ

高齢者の老後資金と就業について、最近ホットな話題となっている「働き方改革」で取り上げられている点を参考にしました。個人でできることは「得意技を持つこと」と、「生涯現役という発想もあると意識すること」ではないでしょうか。
 
出典
(※1)日本ファイナンシャル・プランナーズ協会「高齢者世帯(無職)の家計収支(1か月平均額)」
(※2)e-Stat  「人口推計 年齢(5歳階級),男女,月別人口-総人口,日本人人口」
(※3)内閣府「平成29年版高齢社会白書(全体版) 4高齢者の就業」
財団法人 社会経済生産性本部『「エイジフリー社会の実現をめざして」~年齢に中立な経済・社会の構築を~』
経済産業省「生涯現役社会に向けた雇用制度改革について 平成30年10月」
 
執筆者:植田英三郎(うえだ えいざぶろう)
ファイナンシャルプランナー CFP
 

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