年金受給中の方は知っておきたい「年金生活者支援制度」どんな人が対象?
ファイナンシャルフィールド / 2019年6月26日 8時30分
10月の消費税増税を前に家計の見直しをすることも大切ですが、そんな話ばかりではありません。 今後行われる幼児教育無償化や高等教育の給付などについてはこれまでも触れてきましたが、今回は年金受給中の方にとってぜひ知っておきたい、年金生活者支援制度についてお話ししましょう。
年金を受け取れる人はみんな支援給付金を受け取れるの?
給付金は、すべての年金受給者が受け取れるわけではありません。今回この支援給付金の対象となる方は、まず65歳以上であり、基礎年金が受給できるというのが原則です。その上で、老齢、障害、遺族それぞれの所得の要件があります。
老齢であれば、前年の年金収入額とその他の所得額の合計が87万9300円以下であること。そして、請求される方の世帯全員の市町村民税が非課税であること、という条件があります。例えばご夫婦で、妻の方が所得要件を満たしていても、夫が老齢年金や企業年金を含めてかなりの金額の年金を受け取っている場合、対象から離れてしまいます。
また、世帯全員の所得で判定されますので、二世帯住宅などで共働きの息子と同居などということであれば、もちろん、市民税非課税というのはあまりありませんので、対象外です。障害年金や遺族年金を受給中の方の所得制限は、所得制限は462万1000円+扶養家族の数×38万円以下です。老齢年金より、かなり要件が緩くなっていることがわかります。
はっきりしたことはいつわかるの?
消費税が増税されるのは10月からです。そして、通知が来るのは9月ごろとなります。
年金受給中の方には、通知がたくさんきます。6月に年金額が変更されるという振り込み通知や扶養控除の申告書など、定期的に郵送物が届きます。そのため、郵便物をすべて開けないなど、意外とおざなりになってしまう方も多いものです。
今回、給付金は請求が必要です。「自動的に」振り込まれません。すでに年金を受給中の方は、郵送で届いた請求書を返送しなければなりませんし、2019年4月2日以降に請求される方は、年金の請求と一緒に請求しなければなりません。2019年9月ごろに送付する手続きの案内の中に、見込額が記載されていますので、しっかりと郵便物を確認してください。
以前25年の資格期間が10年になった時も、お便りがきていない、など年金事務所へのご不満もよくお聞きしました。原則として添付書類も不要ですし、請求さえすればいいのですから、返送は忘れないでください。見込み金額がおかしいということでしたら、年金事務所に電話、もしくは来訪して疑問点は解消しておけば、12月の振り込みには間に合います。
給付金を受け取れるのなら、消費税増税は気にしなくてよいの?
受給要件を満たし、請求すれば、以下の額が、毎年振り込まれます。
■老齢年金生活者支援給付金
(1)保険料納付済期間に基づく額(月額)=5000円×保険料納付済期間/480月
(2)保険料免除期間に基づく額(月額)=1万834円×保険料免除期間/480月
■障害年金生活者支援給付金
障害年金が2級の場合は月額5000円、1級の方は月額6250円
■遺族年金生活者支援給付金
月額5000円
年間約6万円程度が生活費として支給されるのです。ここで、以下の総務省家計データを見てみましょう。
出所:総務省「2018年家計調査」
これは夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支です。実収入が約20万円ですので、年金受給世帯は、毎月約4万円が不足することがわかります。消費増税は10月から行われるといえ、実は6月からカップラーメンやアイスクリーム、映画の入場料など、さまざまな品目が値上げされます。消費税増税を全く気にしないということは無理でしょうが、急激に家計が悪化しないような工夫は確かにされているのです。
「年金は少ない」「これでは生活できない」と年金受給者から言われることはよくあります。そして、若い世代からも、「どうせ年金なんて受け取れないでしょう」「保険料を払っても無駄になるし」という言葉もよく聞かれます。ただ、その一方で「払うときは大変だったけれど続けてよかった」という言葉も聞かれます。
今回受け取れる給付金は、「払っていないけれど死ぬまで受け取れる給付金」です。年金を受給中の世帯にとっては消費増税による影響を最小限にできる良い制度と言えます。また、これまでの臨時の給付金と違い、一回限りではないため、あてにできるという意味では家計にとってとてもありがたい制度です。ぜひ、ありがたく受け取っておきましょう。
執筆者:當舎緑(とうしゃ みどり)
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。
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