これからのマイホーム選び(マンション編)
ファイナンシャルフィールド / 2019年7月4日 9時0分
前回は一戸建てを選ぶときのチェックポイントについてお伝えしました。今回はマンション編です。 特に今後の資産価値を考える場合、マンションは「共同住宅」であることから、事前にチェックしておくべき一戸建てとは異なるチェックポイントがあります。
「マンション」のメリットとデメリット
一戸建てと比較した場合のマンションのメリットとしては、
・(一戸建てに比べ)駅から近い距離にある場合が多い
・セキュリティー面が安心
・共用部の管理や清掃を管理会社が行ってくれる
・一部の物件には豪華な共用施設がある
・エレベーターがあり、また室内もフラットでバリアフリーに近い
前回、一戸建てのメリット・デメリットをお伝えしましたが、マンションのメリット・デメリットは一戸建ての裏返しということになります。
また、デメリットとしては
・上下、左右に居宅が隣接し、音や振動などでトラブルになる可能性がある
・管理費や修繕積立金を支払う必要がある
・敷地内の駐車場にも駐車場料金がかかることが多い
・増築やリフォーム、ペット飼育などに規約による制限がある
・敷地権(土地の所有権部分)の割合が小さい
などがあげられるでしょう。
価格面ではマンションの優位性は薄れている
マンションのメリットの一つに「同じ面積ならば一戸建てよりも安い」というメリットがありました。マンションの場合、一戸建てに比べ、価格に占める土地部分の権利(敷地権)の割合が小さいため、価格が抑えられるメリットがあります。
たとえ駅に近い価格の高い土地であっても多層階に積み上げ、面積当たりの住戸数を増やすことによって敷地部分の価格を薄める効果があります。特に都内の地価が高いところでは、そのメリットが大きくなります。
しかし、マンション価格は上昇を続けています。下のグラフは国土交通省が発表する「不動産価格指数」のうち、南関東圏の住宅の価格指数の推移をグラフ化したものです。
データがある2019年2月まで(ただし2018年12月から2019年1月までの数値は速報値)の数値を見ても2013年頃からほぼ一貫して上がり続けていることがわかります。
これは、マンション開発用地の仕入れ競争が激しくなり、マンション開発用地の価格が上がっていることや建築費が高騰していることに加え、駅から近い物件には価格を上げても需要がある状況が継続してきたことによるものだと考えられます。
一方で、住宅地の価格や戸建て住宅の価格は比較的安定していることがわかります。
本来、土地部分の権利が小さかったために価格が抑えられていたマンションですが、価格面でのメリットは薄れつつあります。
現在のマンション価格は、すでに一般のサラリーマンなどが購入するには高騰しすぎているように感じます。新築マンションの供給戸数も減少傾向にあることから、価格はそう遠くないうちに頭打ちするのではないでしょうか(2、3年前からそのように言われていますが、未だにマンション価格が上がり続けていることには驚きすら感じます)。
一方で、少し都心から離れ、地価が安いエリアでは、マンションと一戸建てが価格面で競合するようになっています。大手のマンション開発業者も駅から近くマンション開発にメリットが出るところしか開発できなくなってきましたが、駅に近いマンション用地の仕入れは困難になりつつあり、今後、駅に近い物件は稀少性が高まるでしょう。
それでもマンションが人気の理由
それでもここまでマンションが売れ続けてきたということはやはりマンションに大きなメリットがあるからだろうと思います。
弊社でも最近、一戸建てからマンションへの買い替えに関する相談が増えているように感じます。特に高齢者で、庭木の手入れやセキュリティー面、駅からのアクセスなどを理由にマンションへの移住をご検討される方が少なくありません。
私の事務所は大田区の北部、世田谷区との区境に近いところにあります。近くには田園調布のほか、多摩川と環状八号線に挟まれた辺りは旧来からの高級住宅地が広がっていますが、周辺には坂道も多く、駅から10分程度の距離でもお年寄りには厳しい場所が少なくありません。
そうした方にとって、駅から近くセキュリティー面でも安心のマンションは魅力的なのでしょう。
マンションの最大の魅力は駅からの距離の近さ
日本は人口減少社会に入っています。世の中では「空き家」の増加が問題になっていますが、空き家は一戸建てに限った話ではありません。
むしろマンションの空き家の方が一見外から見ただけでは空き家とはわからないため、たちが悪いと言えます。
マンションの最大の魅力は駅から近いこと。特にこれからは、交通や生活の利便性の高いことは重要なポイントです。駅から徒歩10分以上離れたところにあったり、駅や生活利便施設との間に坂道があったりするような立地のマンションは、今後空室が増える懸念があります。
管理状況によって資産価値が変わる
ご承知の通り、マンションは「共同住宅」。ひとつ屋根の下に複数の世帯が住むことになります。一戸建ては、維持管理・修繕などもすべて自己責任で行うことになりますが、マンションの場合には建物の共用部もあることから、修繕積立金や管理費を支払わなければなりません。
これまで、大量に供給されてきたマンションも人口が減れば空き家が増えます。その時には当然魅力の小さいマンションから空き家が増えていくことになるでしょう。
これからはマンションも選別が進み、常に満室で空室待ちになるような物件もあれば、空室の増加に歯止めがかからない物件も出てきます。空き家が増えれば、管理費や修繕維持費の滞納も増え、維持管理に支障をきたすケースも増えるでしょう。
これからマンションを購入する場合、生き残れる物件かどうかを見極める必要があります。
管理組合の財政状況や運営状態は重要なチェックポイント。新築マンションはこれから管理組合が組成されますので、確認できませんが、中古の場合は売買の際に管理組合の運営や財政状況などについては確認することができます。
現時点で滞納額が多かったり、修繕積立金の積み立て不足が露呈していたりする物件は論外ですが、今後のことを見極めるのは容易ではありません。物件の場所や住民同士のコミュニティの質も資産価値に影響するでしょう。
今後は、住民が全員一致でマンションの資産価値を落とさない、高める努力をしているかが問われることになります。
まとめ
一部の高級マンションには豪華なエントランスや共用部、ゲストルームやジム、キッズルーム、中には温泉やプール、サウナなどを備えた物件もあります。
こうした共用部も住民の管理費や修繕積立金で維持されます。
すべての住民が使うわけではありませんし、中にはなかなか予約が取れず、結局なかなか使えないということも少なくないようです。
新築販売時にはそれらが魅力的に映っても、築後20年、30年経ったときにはお荷物になってしまうこともあります。居住者はこうした施設の維持管理費も負担することになることを考慮しておく必要があります。
マンション購入時には一戸建てとは異なる支出があることも考慮しておかなければなりません。
その他に専有部のリフォームなどを行う必要も出てくるでしょう。特にキッチンや浴室・洗面廻りなどは20年もすると老朽化してくることになるため、リフォームの資金を作っておく必要も出てきます。
今後のマンション選びでは、将来にわたって「資産価値」が維持されるかどうかが重要なポイントになると考えられます。自分の世帯だけが頑張ってもどうにもなりません。
「共同住宅」である以上、それを維持しようとするコミュニティの姿勢が問われることになります。マンションを購入するということはそのコミュニティに加わることであるということを忘れてはいけません。
<参照>
国土交通省 不動産価格指数 平成31年2月・第4四半期分(住宅)
執筆者:西山広高(にしやま ひろたか)
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役
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