【自己負担3割当たり前】健康保険制度が持っている色々な給付(サービス)を知っていますか
ファイナンシャルフィールド / 2019年7月21日 23時15分
日常生活においてなくてはならない健康保険制度。国民(健康保険加入者)が疾病、負傷、出産、死亡した際に必要な保険給付、つまり医療費を補助してくれるありがたい制度ですが、具体的にその内容はどういったものなのでしょうか? 多くの人は健康保険を、医療機関での病気やけがの治療、薬局での薬の処方の際に、自己負担分が3割(高齢者や小学生入学前の児童は2割)になるものとして認識していると思います。 しかし実は、この健康保険制度にはそれ以外にもいろいろな給付(サービス)があるのです。今回はその中の一つである傷病手当金を紹介します。
傷病手当金とは?
傷病手当金は健康保険(国民健康保険は含まれません)の被保険者が傷病(病気やけが)で働くことができず報酬が得られない場合に、その間の生活を保障するために支給されるものです。健康保険なのでサラリーマンや公務員などの勤め人が対象となり、自営業者などの国民健康保険加入者は残念ながら対象となりません。
また、傷病といっても業務上(および通勤中)のものであれば労災保険の対象となります。健康保険の対象とは、仕事以外の日常生活で起こった傷病です。最近急増する精神疾患(うつ病など)も対象になります。
支給要件は?
傷病手当金は病気やけがになったからといって誰にでも給付されるわけではありません。以下のような要件があります。
(1)傷病のため働けず(出勤できず)給与が出ない
いわゆる欠勤の状態です。ただし、働けないことについて医師の意見書が必要です。自分の判断で仕事を休んだ場合は対象にはなりません。
(2)療養(治療)していること
(3)3日間の待機期間が経過していること
労務不能となってから連続3日間が経過し、4日目から支給されます。待機期間には土日、公休日も含まれます。
支給額および支給期間は?
過去12ヶ月間の標準報酬月額(社員の給与額を便宜上一定の区分に当てはめた額)の3分の2が日単位で支給されます。おおよそ給与の3分の2とお考えください(ただし上限あり)。出勤しない間でも会社から一定の報酬があると傷病手当金は支給されません。その報酬が傷病手当金より少ない場合は差額が支給されます。
支給期間は支給開始日から1年6ヶ月です。この間、一時的に体調が回復し業務に復帰(出勤)したものの再度症状が悪化して再度休養した場合でも、この出勤期間は1年6ヶ月に含まれます。また、会社都合、自己都合にかかわらず、退職しても継続して受給することができます(ただし、「退職後の継続給付における注意点」を参照)。
支給手続きはどうすればいい?
手続きですが、保険者(協会けんぽまたは健康保険組合)所定の傷病手当金支給申請書(被保険者情報、期間、症状、医師の意見書などを記入)と報酬額などの事業主の証明書を提出する必要があります。通常は自分で手続きしますが、会社の福利厚生担当者が手伝ってくれたり、業者(社会保険労務士など)に代行依頼したりすることもできます。
手続きは遅れてもできますが、各支給対象日から2年を経過すると時効により申請できなくなります。
退職後の継続給付における注意点
傷病手当金は会社を退職しても継続して支給されますが、以下について注意が必要です。
・被保険者の資格喪失をした日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間 (健康保険任意継続の被保険者期間を除く)があること。転職の際、前の会社での加入期間との間に未加入期間があると通算できません。
・退職日に支給が開始されていることが必要です。言い換えると前述の待機3日間が経過し4日目もしくはその日以降に退職する必要があります。例えば、6月30日に退職する場合、傷病手当金の申請対象期間が6月27日以前でなければなりません。もし6月28日を申請対象期間としてしまうと、6月30日はまだ3日間の待機期間中で支給開始日となる7月1日は既に退職した後になり支給の対象とはなりません。したがって、医師の診察を受けるタイミングも重要です。
・同じ傷病で障害年金を受給している場合は、傷病手当金が支給されないかまたは金額が調整されます。
いかがでしょうか? こうした制度を利用しなくてもいいように、健康であることが一番ですが、万一そうなってしまった場合のリスク対策として知っておくとよいでしょう。
執筆者 : 蓑田透
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