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金融庁レポートで注目すべきは「認知症リスク」対策

ファイナンシャルフィールド / 2019年8月1日 8時30分

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令和元年6月3日に公表された金融審議会「市場ワーキング・グループ」報告書が、金融担当大臣から受け取りを拒否されたことは、皆さんの記憶にも新しいはずです。   報告書の内容は、高齢化やライフスタイルの多様化といった社会環境変化に関する基本的な視点や考え方、そして資産形成等に関する現役・リタイア前後・高齢のライフステージごとの対応策を示す優れたものでした。   実際、6月25日の日本経済新聞では、本報告書が契機となり現役世代を中心とするNISAの申し込みが急増するなど、個人による「じぶん年金」づくりが広がりつつあると報道されています。   期せずして、若いうちから資産形成に問題意識を持ち、具体的行動を促すという本報告書の目的の一部は達成されたようです。  

指摘された今そこにある危機「認知症リスク」

実は本報告書では、現役世代の自助努力喚起以外にも重要テーマが示されています。それは、男女問わず大幅に伸びている平均寿命の副作用としての「認知症リスク」です。
 
内閣府の調査によれば、2012年における認知症の高齢者数は462万人で、65歳以上の約7人に1人の有病率に対し、団塊の世代が65歳以上となる2025年には約700万人まで患者が増加し、有病率は約5人に1人の割合になると推計されています(※)。
 
いったん、認知症を発症すると介護保険サービスを受ける、あるいは財産管理のために成年後見制度などの適用が必要となりますが、成年後見の審判がなされると、進んでいた資産処分の契約などが事実上凍結されてしまうという制約があるため、わが国金融資産の約半分(株式や投資信託は約6割)が65歳以上の世代に保有されている事実を鑑み、本人および家族は、生活防衛のためにも認知症リスクに備えた以下「生前対策」も検討しておくべきでしょう。
 

1.成年後見制度

認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力が不十分となった人を保護し、支援する制度であり、以下の2つに分けることができます。
 
(1)法定後見
判断能力が既に失われたか、または不十分な状態であるため、自分で後見人等を選ぶことが困難な場合に、家庭裁判所が成年後見人を選ぶ制度です。
 
後見人は、本人に代わって財産を管理したり、契約を結んだりすることで本人を保護する役割を担いますが、財産の保全を重視した運用が行われる傾向がありうるというデメリットがあります。
 
(2)任意後見
本人が十分な判断能力があるうちに、自分で選んだ任意後見人に、生活、療養看護、財産管理に関する事務について代理権を与える任意後見契約を結んでおくものです。
 
この制度では、後見人や財産管理の内容を本人の意思で決めることができるのが最大の特長ですが、場合により任意後見監督人や家庭裁判所の同意を必要とするため、機動性に欠けるデメリットがあります。
 

2.民事信託(家族信託)

目的を定めて財産の管理・運用を信頼できる人に託すことが信託の仕組みですが、受託者を信託業者ではなく、家族や親族をとする場合を実務的に「家族信託」と呼んでいます。
 
特徴としては、委託者から信託された財産の所有権や登記は受託者に移転しますが、受託者は信託目的から外れた財産の管理・運用をしてはならず、善管注意義務、利益相反取引の禁止、分別管理義務などの厳しい義務を負います。
 

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先進的取り組み「金融ジェロントロジー」とは?

加齢による身体的能力や判断能力の衰えは万人の宿命ですが、認知症の発症などの事情は個人により異なります。
 
そこで、「予防医療・予防法務」という医療機関と税務・法務などの士業が連携した取り組みが開発されています。これは、認知症の早期発見と進行抑制を図ると共に、民事信託や生存・相続対策、資産管理などのコンサルティングをワンストップで行う民間サービスです。
 
今後、本報告書でも紹介された、高齢化による問題を医学や経済学、心理学などから研究する「金融ジェロントロジー」という新しい研究領域からの学問的見地も取り入れられ、わが国独自の発展を遂げていくことが予想されます。
 
出典
内閣府「平成29年版高齢社会白書(概要版)」
 
執筆者:
村田良一
CFP(ファイナンシャル・プランナー)1級ファイナンシャル・プランニング技能士、不動産鑑定士、中小企業診断士(同)村田鑑定評価・経営研究所 代表社員
 

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