“もし世帯主が亡くなったら……子育て遺族の住まいはどうする? “
ファイナンシャルフィールド / 2019年8月3日 10時0分
ご自身が亡くなったときの遺族の生活のために生命保険に加入する世帯主の方は多いです。 私は、FPとして毎年のように、若くして世帯主を亡くした方の相談を受けますが、実際に世帯主を亡くした場合に、遺族がどのように生活基盤を整えればよいのかを知っている方は少ないように思います。 皆さんもいつ同じような状況になるかわかりません。実際の相談体験をもとにした知識をお伝えします。なお、ここでは亡くなった世帯主がサラリーマンで、女性配偶者と幼い子どもが遺族という前提です。
まずは住むところを確保できるか
葬儀を終えて、遺族年金や生命保険の請求をする。世帯主の預金口座を相続人である自分名義に変更するなどの手続きを行う必要があります。そして、子どもや配偶者が健康保険に加入しなおすために世帯主が勤めていた会社に「被扶養者資格喪失届」の手続きをします。
この手続きで会社に連絡をした際に、もしも社宅や会社契約の賃貸住宅に住んでいた場合は、退去の通知を受けることとなります。配偶者は死亡とともに退職となるためです。退職して社員でなくなれば、当然社宅等に遺族が住み続けることはできません。
会社としても心苦しいとは思いますが、代わりの人材を配属させなければいけないといった対応のため、「〇ヶ月以内に退去してください」と伝えられます。その際に転居先のめどがつけられるかどうかを考えておかなくてはなりません。
すでにマイホームを購入していて、住宅ローンが団体信用生命保険の保険金で返済できれば当面の住まいの心配はありませんが、社宅等の場合は早急に住まいを確保する必要があります。
これからさまざまな手続きをする際にも住所が明確であることが大切になりますので、住まいの確保はとても優先度が高いです。
実家に住むことができるかどうか
もし、もともと世帯主(ご主人)の両親と同居していたのならば、そのまま住み続けられる可能性はあります。二世帯住宅のマイホームを世帯主名義で購入していればなおさらです。
世帯主の配偶者も両親も、この家で幼い子を一緒に支えたいという強い気持ちが最初はあります。しかし、時間とともにさまざまな感情が湧き出てきます。家族をつないでいた世帯主が亡くなったことで絆がゆるんでいくことは珍しくありません。
両親にとっては、大人になっていたとしても大事な子どもを亡くした気持ちが心を締め付けて、遺族(親子)と暮らし続けることが苦しくなることもあります。
また、遺族(配偶者)には時間がたてば新たに支えてくれるパートナーとお付き合いをして再婚するという選択肢も出てきます。そういった場合に世帯主の両親との同居は不都合が多くなります。
傾向として実家に住む場合、自分の両親の実家に住む方が精神的にも楽であり、子育ての協力も得やすいです。世帯主の両親との関係が修復不可能なまでに悪化してしまう前に、自分の実家や別の住まいに移ることは考えておくべきです。
あえて転居をする選択肢もあります
世帯主が亡くなった理由によっては、今の住まいから遠くに転居する方が精神的に楽になります。新聞やニュースで取り上げられるような事故や事件で亡くなった場合、報道関係の取材や近所からのお見舞いが負担となってしまうことがあるためです。
当然遠くに転居すれば、子どもが学校に通っている場合、転校を余儀なくされます。しかし、子どもが学校でどのように過ごしているのかをしっかりと学校に確認し、本人に相談したうえで転校した方が良い選択であることもあり得ます。
反対に、子ども本人が今の学校から転校したくない場合もあります。突然親を亡くした子どもの精神状態は非常に繊細であり、その後の成長にも影響を及ぼしますので、しっかり話し合ってほしいです。
新たに賃貸住宅を借りるのも大変
遺族が定職についていない場合、新たに民間の賃貸住宅の契約をするのは大変です。入居審査に通らないことも珍しくありません。定職についている兄弟・親族の協力を得てなんとか契約することになる可能性が高いです。
もし、定職についているけれども子どものそばにいたいので退職する気持ちならば、先に住まいを確保してから退職します。ささいなことですが、大きな違いとなります。
普通に不動産屋さんを回っても入居できる物件が見つからなければ、市営住宅や県営住宅への申し込みの窓口に相談して、そちらへの入居の可能性を相談したり、母子家庭の相談窓口を紹介してもらったりして解決することもあります。
保険金でマイホームを購入するべきか
賃貸住宅の契約など住まい探しで苦労することを知ると、早く住むところを決めたいと思い、マイホームを購入する遺族もいらっしゃいます。その場合、住宅ローンは審査が通るかわからないので現金一括で支払います。
マイホーム購入資金を払っても、保険金等が十分にありその後の生活資金を確保できていればよいのですが、手元の現金が無くなってしまい、その後の就職や子育てなど生活の選択視が狭くなると精神的な負担も大きくなります。
また、住まい探しに疲れた状態でしっかり検討することなくマイホーム購入を決めてしまうと後悔しがちです。マイホームを購入するしか住まいを確保する方法がない遺族もいます。購入資金を確保できるように生命保険に加入しておきましょう。
収入保障保険の場合、いったん保険金を年金で受け取ることを選ぶと、後で残りをマイホーム購入資金として一括で受け取ることができないことがありますので、気をつけてください。
家族のための生命保険を契約する際にはぜひ、万一のときの遺族の住まいのことも含めて検討してください。
執筆者:西村和敏
ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
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