遺言書は全部手書き、義父の介護をしてても相続なし…相続のモヤモヤが改正で変わる!
ファイナンシャルフィールド / 2019年8月11日 10時0分
民法における相続法が約40年ぶりに改正されました。 その改正内容のなかでも、大変有効な改正内容ではないかと思われる「自筆証書遺言」の改正と「特別の寄与制度」の創設をみていきたいと思います。
《自筆証書遺言の改正(方式緩和)》 ※2019年1月13日(日)施行
遺言の形式は、主に自筆証書遺言と公正証書遺言があり、今回は自筆証書遺言書についての改正になります。
自筆証書遺言書は簡便な方式の遺言方法であり、自身で書く能力さえあれば、いつでも自らの意思で作成することができます。決まった書式等もありませんので、他の方式と比べても比較的手軽です。
今回の改正により、財産目録部分については、自書しなくてもよくなりました。ワードプロセッサー等、パソコンの使用が認められたのです。
これにより、頻繁に増減するような財産等については、パソコン等で簡単に管理することができるようになります。
気をつけなければならないのは、パソコン等の利用が認められるのは “財産目録”部分だけであり、あくまで遺言書の本文は自書(手書き)で作成する必要があります。
《自筆証書遺言の保管制度の創設》 ※2020年7月10日(金)施行
自筆証書遺言については、作成後の保管場所に苦慮していたのではないでしょうか?
自筆で作成した遺言は、その遺言を作成した本人がどこかに保管しなくてはなりません。自身が管理している金庫や銀行の貸金庫などが、その代表的な保管場所かと思われます。
ただ、被相続人(亡くなった人)自身が管理していると、相続人は遺言書の存在の有無さえも把握できないことがあるようです。遺産分割協議が終了して無事に相続手続きが完了したと思ったら、自筆遺言がでてきた……。なんてケースもまれにあるようです。
このケース、結論から申しますと、ある一定の条件を除いて遺言書が遺産分割協議より優先されるのです。こういう、ややこしい事態を回避できるよう、今回の改正で保管制度が創設されました。
また、この制度により保管される遺言書については、これまで必要だった家庭裁判所の検認が不要となります。
〔保管制度の概要〕
・自筆証書遺言を作成した者は、法務大臣が指定する法務局にその保管を申請することができる
・相続人等は、遺言者の死亡後に遺言書が保管されているかどうかを確認することができる
・相続人等は、遺言書の写しを請求することができる
・相続人等は、遺言書保管所で遺言書を閲覧することができる
《特別の寄与制度の創設》 ※2019年7月1日(月)施行
改正前の民法にも、被相続人の介護や看病などに尽くした相続人には、遺産分割協議に際して、相続分を加増する「寄与分」の制度が存在しました。
しかし、改正前の民法では寄与分はあくまで“相続人”にしか認められていませんでした。
例えば、被相続人が先に他界した配偶者との間に、2人の子(長男、次男)をもうけていたとしましょう。
仮に長男が、被相続人が死亡する前年に亡くなっていて、その長男の妻が長い間、被相続人の介護・看病をするなど、特別大きな貢献をしていたとしても、長男の妻は相続人ではありませんので、遺産を相続する権利はありませんでした。
今回の特別の寄与制度の創設により、上記のようなケースでも、長男の妻は相続人に対して、金銭の請求をすることができるようになります。遺産分割の手続きが複雑になるのを防ぐため、あくまで遺産分割は相続人間で行うものとし、相続人に対して金銭の請求を認めることとしました。
《まとめ》
方式緩和等の改正により、自筆証書遺言はより積極的に利用されるのではないでしょうか。遺言書が見つからないリスクもかなり低減すると思われます。
上記の、特別の寄与があった長男の嫁のように、自筆遺言で受遺者として財産分与を約束されていたのに遺言書が見つからない……、といったケースも、これまでは多かったのかもしれません。
今回の改正により、相続人でなくとも特別の寄与があれば、相続人に対して金銭を請求する権利が認められることとなりましたので、ある程度、実質的な公平が図られるのではないでしょうか。
執筆者:内宮慶之
内宮慶之FP事務所代表、CFP認定者(日本FP協会所属)、ファイナンシャルプランニング
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