気軽に乗れる「自転車」の事故こそ要注意?片手運転で人と衝突…6000万円超の賠償事例も
ファイナンシャルフィールド / 2019年8月18日 10時0分
最近、高齢者による自動車事故が相次いで発生し、世間を騒がしています。しかし、自転車による事故も大きな問題になっており、国土交通省では自転車保険の加入義務化を検討しています。その背景には、高額の損害賠償責任を負う事例が相次いでいることがあげられます。 今回は、自転車による過去の重大事故を振り返り、自転車事故にあった場合や事故を起こしてしまった場合の備えとしての保険について考えてみます。
相次ぐ自転車による高額な損害賠償事故
ご存じの通り、自転車は、自動車やオートバイと違って免許を取得する必要がなく、誰でもが気軽に乗ることができます。しかし事故を起こした場合、相手に大きなケガを負わせ、多額の損害賠償の支払いを命じられることがあります。下記は実際にあった判例です。
<自転車での加害事例>
(1)判決認容額6,779万円
男性が夕方、ペットボトルを片手に下り坂をスピードを落とさず走行し交差点に進入、横断歩道を横断中の女性(38歳)と衝突。女性は脳挫傷等で3日後に死亡した。(東京地方裁判所、平成15(2003)年9月30日判決)
(2)判決認容額5,438万円
男性が昼間、信号表示を無視して高速度で交差点に進入、青信号で横断歩道を横断中の女性(55歳)と衝突。女性は頭蓋内損傷等で11日後に死亡した。(東京地方裁判所、平成19(2007)年4月11日判決)
(3)判決容認額4,746万円
男性が昼間、赤信号を無視して交差点を直進し、青信号で横断歩道を歩行中の女性(75歳)に衝突。女性は脳挫傷等で5日後に死亡した。(東京地方裁判所、平成26(2014)年1月28日判決)
(※)判決認容額とは、上記裁判における判決文で加害者が支払いを命じられた金額です(金額は概算額)。上記裁判後の上訴等により、加害者が実際に支払う金額とは異なる可能性があります。
一般社団法人 日本損害保険協会HP「自転車事故と保険」より引用
また、2013年神戸では、自転車に乗っていた男子小学生(11歳)が女性(62歳)と正面衝突して、意識不明になるほどのケガを負わせてしまう事故がありました。
この事故では、男子小学生には、民事上の責任能力はありません。しかし、子供の監督義務を十分に果たしていなかったとの理由から親が9521万円もの損害賠償責任を負うことになりました。この事例からもわかるように、子供にも自転車保険の加入を検討する必要があります。
全国で広がる損害賠償保険への加入義務
上記で見てきたように、損害賠償額が高額化するなどで、自転車事故の被害者が十分な損害賠償を受けられるようにするため、国土交通省では、自転車利用者に損害賠償保険への加入を促す方策を検討しています。
また、2015年に兵庫県では、県の条例で自転車保険が義務付けられました。2018年12月現在では、大阪府、埼玉県、名古屋市などの6府県5政令市で加入を義務付けています。
また、東京都、千葉県、福岡市などの10都道府県3政令市では、加入を努力義務としています。今一度、ご自分が住んでいる自治体の条例がどうなっているか確認をしましょう。
自転車事故に備えて保険を検討しよう
高額な損害賠償を発生させるような自転車事故を起こさないために、安全な運転を心がけることや、自転車の点検・整備などを行ったりすることが必要です。特に、最近では、スポーツ用の自転車や電動アシスト自転車が普及してきており、自転車のスピードが速くなってきています。
そのような自転車で事故を発生させた場合、被害が大きくなり、損害賠償額も高額になる可能性があります。いざというときのためにも、自転車保険の加入を検討してみてはいかがでしょうか。
なお、保険の加入方法は、自転車保険としてだけでなく、自動車保険や火災保険の特約であったり、都道府県民共済やクレジット会社を通じた個人責任賠償責任保険であったりと、さまざまな方法があります。
補償の範囲、個人賠償責任額(支払限度額)や入院日額、死亡保険金、年間の保険料などを比較して、ご自分にあった保険に加入することも重要です。
出典
1.一般社団法人 日本損害保険協会 「自転車の事故」
2.国土交通省 自転車活用推進本部「自転車損害賠償保険の加入促進について」
執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー
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