「掛け捨て型保険」はホントに損? 今から契約するなら、定期保険がお得なワケ
ファイナンシャルフィールド / 2019年8月20日 23時15分
皆さんが保険に入る目的は何でしょうか? それは、「死亡や病気、ケガ、介護などの予期せぬリスクのほか、教育資金や老後資金などの備えとして、自分や家族に必要な保障を得るため」と言えるでしょう。 一方、これらの保険をコスト面から見ると、保険料が掛け捨て型になるものと貯蓄型になるものに分けられますが、単純に「掛け捨て型は損」という発想は持つべきではないと考えます。
掛け捨て型保険とは?
掛け捨て型保険とは、一定期間の保障に対して保険料を支払うタイプの保険で、支払った保険料が貯蓄型のように満期保険金や解約返戻金などの形で戻ってこないという意味で、掛け捨て型と呼ばれています。
この掛け捨てという言葉に、ムダとか、損するイメージを持つ人がいますが、保険の仕組みを知れば誤解であることが分かると思います。
そもそも保険は、多くの加入者が公平に保険料を負担し合い、死亡や病気、ケガなどの万一のことが起こった加入者に保険金を給付するという相互扶助(助け合い)のシステムです。
つまり、保険金という保障の原資は加入者の保険料で成り立っており、保険本来の役割である保障部分に対する保険料は、掛け捨て型も貯蓄型も実質的に掛け捨てなのです。
掛け捨て型にはどんな保険がある?
保険のカテゴリーは、大きく、(1)終身保険、(2)定期保険、(3)医療保険、(4)養老保険、(5)年金保険に区分され、このうち掛け捨て型は、(2)に属する定期死亡保険や収入保障保険、(3)に属する医療保険やガン保険などがあります。
保険料はどのように決まる?
保険料は人口構成や国内外の経済環境の影響で変動します。保険料を決める一つの指標に標準生命表というものがあり、長寿化で年齢ごとの死亡率が改善して保険会社の死亡保険金支払いが減れば、保険料の値下げ要因となります。
一方で、長寿化は医療費の増大から医療保険に対して値上げ圧力が働きやすくなります。また、現在のような低金利下で運用利回りが悪化すると、特に貯蓄部分の保険料は値上げ方向に働くため、保険商品を選択する際には頭に入れておく必要があります。
掛け捨て型保険のメリットとデメリット
掛け捨て型保険のメリットは、貯蓄型に比べて安い保険料で一定期間の大きな保障が確保できることと、ライフプランに応じた保険の見直しがしやすいことが挙げられます。
一方、デメリットとしては、解約返戻金や満期保険金などの受け取れるお金がないか、あっても少額なため、不要な保険や特約に数多く入ってしまうと、結果として普段の生活費に悪影響を及ぼしかねないということが考えられます。
保険は万一の備え、という位置づけで費用対効果も考えたうえで必要最小限とし、その後はライフステージに応じて貯蓄とのバランスを図っていくのが良いと考えます。
よって、保険の加入や見直しを検討する際は、まずは各自が考え得るリスクに優先順位をつけ、支出可能な保険料の範囲内に収まるようにする必要があります。
今は円建て終身保険より定期保険がお得
保険料と保険金額の間には一定の合理性があるほか、そもそも保険本来の役割が相互扶助であることを勘案すれば、保険と貯蓄を単純な損得勘定で比較することには意味がなく、優劣をつけないことが大事なポイントです。
ただ、現在のような低金利下で運用利回りが悪化すると、特に貯蓄部分の保険料は値上げ方向に働くため、円建て終身保険より掛け捨て型の定期保険の方が選択肢として優位です。
実際の保険商品で一例を示すと、40歳男性が保険料払込期間20年で保険金1000万円の終身保険か、定期保険への加入を検討しているケースでは、総支払保険料は、終身保険が1068万円(月額4万4490円×12ヶ月×20年)となるのに対し、定期保険は118万円(月額4920円×12ヶ月×20年)となりました。
※月額保険料などの数値は一例です。
20年後までに万一のことがなかった場合の単純な損得勘定では、終身保険は1000万円の保険金を得るのに1068万円の保険料を払うので▲68万円、定期保険は総支払保険料がそのまま▲118万円となるため、定期保険の方が損なのかと言えばそうではありません。
両保険の月払保険料の差額は3万9570円もあります。このため、定期保険に加入して差額分をNISAやiDeCo等の積立投資によって2%程度で運用できれば、20年間の積立元本950万円が1166万円に達し、▲118万円の定期保険料コストを吸収して100万円前後の運用益が期待できます。
まとめ
今回は保険本来の役割である保障部分に焦点を当ててお話ししましたが、貯蓄型の終身保険は相続や節税などで大きな役割を果たすほか、外貨建て終身保険は為替リスクがあるものの利回りが高く、長期的な資産形成にも役立つ商品です。
自分に合った保険を見極めることは大変難しいですが、保険に頼り過ぎないことも大事なポイントです。ライフステージに応じて貯蓄とのバランスを図っていくことを心がけましょう。
執筆者:青沼英明
ハッピーライフ・未来ラボ代表、CFP(R)、日本証券アナリスト協会検定会員、 宅地建物取引士、 トータル・ライフコンサルタント(生命保険協会認定FP)、第1種証券外務員
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