相続法改正で「遺留分」の請求権が変わった!そもそも遺留分ってなに?
ファイナンシャルフィールド / 2019年8月23日 8時30分
民法の相続法の改正に伴い、自筆証書遺言の方式緩和や保管制度の創設、配偶者の居住に関する保護制度の新設などさまざまな改正がなされています。 改正内容の一つに遺留分の取り扱いに関する改正があります。これまで私たちは「遺留分減殺請求権」との呼び名で聞き慣れていますが、改正により内容と名称が改められ、「遺留分侵害額請求権」となりました。施行日は2019年7月1日です。 それでは、その改正内容を確認してみましょう。
そもそも遺留分とは?
原則、ご自身の財産を誰にどのように引き継がせるかについては、ご本人が決めることができます。その方法としては、生前贈与や遺言による方法などが考えられるでしょう。
例えば、被相続人となった父A、相続人は配偶者B、子(長男)C、子(次男)Dだったとします。この時、被相続人Aが「全ての財産は長男Cに相続する」との遺言書を残しました。
遺言書の通りに相続すると、妻Bと次男Dは全く遺産を相続できないことになります。
そのことにより、状況によっては妻Bや次男Dの住居の問題やその後の生活にも影響を及ぼすことになります。そのため、「遺留分」という最低限取得できる権利を認め、一定の範囲で権利を請求できるものとしています。
言い方を変えれば、被相続人は自分の財産を全て自由にはできないとも言えるでしょう。(遺留分以外は自由分と呼ばれます)
遺留分が認められるのは、相続人のうち配偶者、直系卑属(子、孫)、直系尊属(父母、祖父母など)です。注意点は、相続人である兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺留分の割合は?
遺留分の権利者全員に割り当てられる遺留分の合計額を「総体的遺留分」といいます。そして、この総体的遺留分は、相続人が直系尊属のみの場合は被相続人の財産の1/3、それ以外の場合は1/2となります。
そして、総体的遺留分を遺留分を有する相続人の法定相続分で配分したものが、それぞれの相続人の遺留分(個別的遺留分)となります。
先ほどの事例ですと、総体的遺留分は1/2で、妻Bの法定相続分が1/2ですので、Bの個別的遺留分は1/4となります。また、次男Dは1/8の個別的遺留分を有することになります。
改正前と改正後
民法改正前の「遺留分減殺請求」は、遺留分を侵害されている人が、遺言などの効力を必要な範囲で失効させ、財産を取り戻すという制度でした。
この遺留分減殺請求権が相続財産である不動産に対して行使されると、その不動産は受遺者と遺留分減殺請求をした人との共有となり、自宅の権利関係が複雑となりました。
仮にAの資産の大部分が自宅の不動産だったような場合には、遺留分減殺請求をした遺留分権利者に対して、金銭など他の財産を支払うことが困難であり、自宅の共有関係を解消できないという弊害が生じました。
改正後は、遺留分を侵害されている人が、遺留分を侵害している人に対して、侵害している遺留分の額(侵害額)に相当する金銭の支払いを請求できるようなりました。そのため、名称も「遺留分侵害額請求権」となります。
いつまで請求できるか?
遺留分侵害額請求は、相続の開始および遺留分の侵害の事実を知ってから1年以内に行う必要があります。また、相続開始から10年経過した場合も行使できません。遺留分侵害額請求をする場合には、侵害している人に意思表示することで成立します。
つまり、口頭でも成立するということです。しかし、その後にトラブルが予見されるような場合には、配達証明付きの内容証明郵便を利用して証拠を残しておくべきでしょう。
なにぶん、財産(お金)が関わってくることですので、請求自体を無視されたり、争いにつながるケースも想定されます。どうしても解決できない場合には、訴訟となることもあるでしょう。
遺留分侵害額請求は、基本的には相続開始から1年という短い期間で請求する必要があります。身内の中(特に親子や兄弟の間)で金銭を請求するということへの遠慮や抵抗感がある場合も想定されます。
制度としては、他にも遺留分の放棄という方法があります。相続放棄と違い、遺留分の放棄は被相続人の生前にも行うことができます。
相続が「争族」とならないための対策には、ある程度の知識や適切なアドバイスが必要となるでしょう。不明な点は専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
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