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自宅の権利者である妻が施設に入ってしまった……。 2020年4月施行の「配偶者移住者権」って?

ファイナンシャルフィールド / 2019年9月18日 10時0分

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改正相続法の中でも注目されている「配偶者居住権」が2020年4月から施行となります。これまで苦楽を共にしてきた妻に生涯の住居を確保するために、遺言することを検討されている方も多いようですが……。その遺言が残された家族に負担を強いることになることも。  

なぜ配偶者居住権が必要なのか?

夫が亡くなった後、相続分の関係で自宅を売却し住む場所がなくなったり、自宅を取得したりした場合に、金銭を受け取れず生活が苦しくなるという問題を回避して、夫亡き後の、妻の生活保障を確実にするというのが第1の目的です。
 

法定相続分は絶対じゃない

実は、遺産は法定相続分の割合で分けることが決まっているわけではありません。遺産分割の方法は、遺言があれば遺言、遺言がなければ相続人の協議により決められます。その際の目安としてあるのが法定相続分です。
 
ですから、法定相続分と違う割合の遺言や遺産分割協議は有効です。遺産分割協議がまとまらず、裁判所の調停などに進む場合には、法定相続分を基準に話が進められることになります。
 
ですから、円満に妻の生活が守られるのであれば、配偶者居住権を持ち出す必要はないでしょう。
 

配偶者居住権が設定された自宅の扱い

配偶者は死亡するまで自宅に住むことができます。(居住権の存続期間を設定することも可)。所有者は、配偶者が死亡するまで居住させるという負担の付いた所有権を取得します。配偶者の死亡により居住権が消滅し、完全な所有権になります。
 
(1)居住配偶者が施設に入所する場合
配偶者は建物を人に貸したり、居住権を処分したりすることはできません。所有者と合意解除して配偶者居住権の抹消をすれば期間途中でも売却可能ですが、認知症になっていると難しいでしょう。
 
(2)差押さえ
所有権は差押さえの対象となりますが居住権を差押さえすることができません。所有権を差し押さえても、居住権が消滅する(配偶者の死亡)まで換価することは困難です。
 
(3)存続期間
存続期間は、別段の定めをする場合以外は終身となります。原則、「別途協議して定める」などとすることはできません。更新や再設定もできません。結果として、配偶者が認知症で施設に入った場合、空き家となった自宅を、配偶者が死亡するまでその状態で管理する可能性が高くなります。
 

空き家状態はいつまで続くか?

表1のように、平均寿命と健康寿命との差は、男性8.95年 女性12.3年(平成28年)となっています。配偶者居住権を取得した妻が高齢者施設などに入所した場合、空き家状態で保存する期間が相当長期になることも覚悟しなければなりません。
 

表1
※厚生労働省「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」より筆者作成
 

まとめ

配偶者居住権は、残された配偶者の生涯の住処を確保するために作られた制度ですから、住めなくなったからといって売却することは簡単ではありません。空き家状態で保存するのは、所有者にとって大きな負担となります。
 
・老朽化が進む→財産価値の低下
・税金、事故に備えた保険加入、水道・電気の基本料金、定期的に風を通したり除草したりするなどの維持管理・・・など所有者に重くのしかかってきます。
 
配偶者の居住を確保する方法としては、以下の2つもあります。
(1)遺言で自宅取得者に配偶者の居住を負担させる「負担付き遺贈」
(2)受益として配偶者に居住する権利を与える「民事信託」

 
これらの方法であれば、配偶者が居住できなくなったときに、売却して現金化することが可能です。現金化できれば、そのお金で配偶者の生活を豊かにできることも考えられます。家族の状況や人間関係、財産の状況などを考慮して、どの制度を利用すべきなのか慎重に検討しましょう。
 
出典 厚生労働省「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」
 
執筆者:宿輪德幸
CFP(R)認定者、行政書士

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