退職・転職したら確定拠出年金は解約(脱退)できるの?
ファイナンシャルフィールド / 2019年9月23日 10時40分
30代以下を中心に働き方の価値観が大きく変貌しつつあるようです。一生一つの会社や組織に所属して安定的に働くという考え方から、自分自身に最適な職場や組織を求めて転職しながら、自分にふさわしい仕事と人生を求める人が多くなっています。 その際に問題となるのは、企業の退職金のしくみの中心になりつつある確定拠出年金制度です。退職・転職したら確定拠出年金はどうなるのか、途中脱退できるのかという疑問にお答えしましょう。
退職金と企業年金
多くの会社では退職金制度があり、退職時の一時受給と年金受給があります。この場合の年金とは、2000年以前は確定給付型年金で、退職者は会社が約束した期間や給与額に応じて、年金として受給をしてきました。
ところがこの20年程の間に、年金の運用環境が大変厳しくなり、多くの会社が年金の積立不足を回避できる確定拠出年金に移行しています。
したがって、現在は退職金・確定給付型年金・確定拠出型年金の3つがあり、会社によって3つ、2つあるいは1つを選び従業員に適用をしています。
確定拠出年金は2つある
確定拠出年金には、企業型確定拠出年金(DC)と個人型確定拠出年金(iDeCo)の2つがあります。
いずれも年金ですから、60歳までに給付を受けることは、例外的なケース(障害を負った場合など)を除いてできないことになっています。
企業型確定拠出年金(DC)
企業型確定拠出年金(DC)の運営主体はそれぞれの企業、加入者は企業の従業員ですが、運用する金融機関と資産内容は加入者である従業員が選ぶことになっています。また会社によっては、DCに従業員の追加拠出を認めているところもあります。
転職や退職をした場合には、DCの加入資格がなくなりますので、状況に応じた対応が必要ですが、脱退の場合は制約があり、後段で詳しく説明をします。
個人型確定拠出年金(iDeCo)
個人型確定拠出年金は、2017年から制度が見直されました。名称もiDeCoと名付けられ、官民のPRもあって知名度も高くなり、加入者が急増しています。
加入できるのは、DCや退職金制度のない企業に所属する従業員や、自営業・フリーランスで仕事に従事する個人などです。さらに、会社員や公務員の配偶者なども加入が可能です。
iDeCoにおいては、運用する金融機関や運用する金融商品の選定は、加入する個人が選ぶことができます。また大きな特徴として、掛け金の全額が所得控除の対象になり、節税効果を得ることができます。
iDeCo加入者が、DCのある会社に就職した場合は、その会社のDC規約に基づいてDCに移換加入ができる場合もありますが、確認が必要です。
iDeCoから脱退するには、以下の5つの要件をすべて満たす必要があります。
・国民年金の保険料免除者である
・企業型DCから脱退一時金の支給を受けていない
・資格喪失日から2年を経過していない
・通算拠出期間が1ヶ月以上3年以下、または個人別管理資産が25万円以下である
・障害給付金の受給者でない
したがって、現役世代の加入者がiDeCoを途中脱退することは、通常の状況では難しいと思われます。
退職・転職時に気をつけたいのは企業型確定拠出年金(DC)
DCに加入している人が、退職・転職時に気をつける必要のあるのは次のことです。
・転職先の年金制度がどうなっているのか、DCの有無の確認
・退職後すなわちDC加入資格喪失後6ヶ月以内に手続きが必要
6ヶ月を経過すると国民年金基金の仮口座に自動移管され、それに伴う費用等が発生するので、注意が必要です。
企業型確定拠出年金(DC)は退職したらどうなる?
転職や退職時には所属していた会社のDCの資格はなくなりますが、その後どうなるかは退職後の状況によります。
転職して新しい会社で勤務する場合
転職後の会社にDCがあり、他社からのDCの移換受入ができるという規約があれば、以前からのDCを移換して継続することができます。ただし、会社ごとにDCの運用金融機関や扱い商品が異なりますので、注意が必要です。
新しい会社にDCがない場合は、iDeCoへの変換をするなどの選択が必要になり、その場合は6ヶ月以内に手続きを終える必要があります。
自営業者、公務員、専業主婦(夫)になる場合
この場合は、iDeCoへの移換が必要となります。iDeCoでの運用方法などは既に記載の通りです。
Q&A
移換せずに放置した場合どうなりますか?
DCからの移換に際しては、6ヶ月以内という期限があり、期限内に手続きを済ませないと国民年金基金連合会の仮預かり口座に自動的に移換されてしまいます。
そうなると、移換や口座の保管のための手数料が発生するほか、年金資産の運用がストップする上に、年金の受け取り時期が遅れるなどの弊害が起きることもあるので、期限内の移換がのぞましいでしょう。
DCから脱退を望む場合はどうすればいいですか?
DCから60歳前に脱退して脱退一時金をもらう方法はありますが、その場合、3つの要件をすべて満たす必要があります。
・個人別管理資産額が1.5万円以下である
・資格喪失日から6ヶ月を超えていない
・その会社でDCの運用に関わっていない
まとめ
企業年金に占める確定拠出年金(DC)の比率は、制度開始以来連続して上昇しています。
何年かの後には、確定給付型を上回るのは確実と推定されます。一方で、加入者である企業の従業員は欧米型の転職志向が強くなってきており、転職後の職場で年金が継続できるのは大きなメリットです。転職や退職時はDC内やiDeCoへの移換がおすすめで、解約(脱退)は手続き上もハードルが高くなっています。
DCの運用の中で、投資信託などの株式保有のウエイトが高まることも、日本の経済界にとってプラスではないでしょうか。
執筆者:植田英三郎
ファイナンシャルプランナー CFP
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