これからの消費は「所有から利用」へ。増税とともに、駅自動販売機の定額サービスが開始。
ファイナンシャルフィールド / 2019年9月30日 11時5分
駅の券売機からお金がおろせるサービス「キャッシュアウト」(東急)が今年5月8日に始まりました。 そして今年10月1日からは、駅構内の飲料自動販売機を定額制で利用できるサービスが試験的にスタートします。一体どんな内容なのでしょうか?
日本初の自販機のサブスクリプションサービスとは?
JR東日本ウォータービジネスのプレスリリース(末尾※参照)によれば、日本初の自販機のサブスクリプションサービス「every pass(エブリーパス)」の概要は次のとおりです。
リリース記事では、「仮に30日間150円の商品を受け取れば合計4,500円となり、本来かかる金額よりもお得にご利用いただけます。」とそのお得感がアピールされていました。
一方で、休日など用事がない日にドリンク1本だけのためにわざわざ駅まで行くのかとか、ペットボトル等飲料を毎日150円で買い続けなくてもスーパー・ドラッグストア・コンビニなどに行けばもっと安く買えるではないか、といった声があがるかもしれません。
それはさておき、消費増税と同じタイミングでスタートするこのサービス。サブスクリプション(定額制サービス)、スマホアプリやORコードを活用したキャッシュレス決済など、昨今の時流が随所に盛り込まれているようです。
そして、ユーザーの購買動向データを蓄積・分析することで自社の商品開発や自販機の販売効率向上などに生かそうといった意図もうかがえます。
いろいろな生活シーンに浸透しつつあるサブスクリプション
「所有から利用」、「モノからコト」、「購入から利用」。いずれも消費スタイルの変容を表現したフレーズですが、サブスクリプションはその象徴的なサービスで、いろいろな生活シーンに浸透しつつあります。
ざっと例示しても、音楽や映像、ソフトウエア、家電、衣料、家具、自動車、そして住まいにまで。ハード・ソフトを問わずさまざまな商品やサービスにその流れは広がっています。
大富豪の義父が、新車を安く買えるように自動車ディーラーに根回しをしておいたと恩着せがましく伝えると、娘婿がニヤリと笑いながら義父に『クルマは買うもの。そのお考え、お古いかと。』とドヤ顔でスマホ画面(定額支払いシステムを表示)を見せるテレビコマーシャル、最後には「まだクルマ買ってるんですか?」と挑発的なキャプションまで出ます。ご覧になったことがあるでしょうか。
有名男優の掛け合いが笑いを誘いますが、実はこれ、今年2月6日からすでにスタートしているトヨタ自動車の定額利用サービス「KINTO(キント)」のCMです。3年契約で、例えば車種「プリウス」ならば月額5万円くらいから定額利用できます。
世界有数の自動車メーカーでさえ、クルマの保有をある意味で否定するような取り組みまでも手掛ける時代なのです。
まとめ
こうしたサブスクリプションを時間軸(契約期間)で分けてみると、一番短いジャンルのひとつが、「飲み放題」・「食べ放題」の飲食サービスでしょう。“放題”でなければこんなに飲まなかった(食べなかった)のに……と暴飲暴食を後悔した経験、思い当たりませんか?
こうしたサービスで、例えば【飲み放題2000円】のお店。客(消費者)の目線は販売価格に向きます。1杯500円のドリンクならば時間内で5杯飲めば“勝った気分”になれます。
一方で、お店(供給者)の目線は販売原価。1杯500円のドリンクの原価(間接経費込)が仮に200円だとすると、5杯飲まれても1000円の利益が確保でき、10杯飲まれても収支トントンで収まる計算なのです。
これは極端な例ですが、サブスクリプションには「売っておしまい」というより、もっと後々までユーザーを囲い込みたいという、供給サイドの利害や目線も感じられます。新スタイルサービスという名の入り口から、消費者が知らず知らず供給者の陣地に深く取り込まれているような気がしないでもありません。
先ほどの消費スタイル変容の各フレーズの前半部分、つまり「所有」、「モノ」、「購入」は、一律に“時代おくれ”と決め付けられているような印象さえ受けます。
一方で「温故知新」という格言もあるのです。旧来のスタイルと新しいトレンドの“いいとこ取り”を生活シーンごとにしながら、自分にあったライフスタイルを構築していくのも一考だと思います。
出典
)JR東日本ウォータービジネス「プレスリリース」2019年度 2019/08/29お知らせ
「日本初!“サブスク戦国時代”に新規参入!自販機サブスクリクション<every pass>」
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士
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