会社員の夫「老齢基礎年金、結婚後30年以上扶養に入っていた妻のほうが多いんです」なぜ?
ファイナンシャルフィールド / 2019年10月2日 23時0分
年金事務所の相談窓口、あるいは「ねんきんネット」「ねんきん定期便」で、将来受け取る老齢年金の見込額を知ることができ、夫婦でお互いの年金見込額を見比べることもあるでしょう。 しかし、「夫である私は大学卒業後厚生年金に加入し、40年も厚生年金保険料を払っていたのに、老齢基礎年金は、結婚後30年以上ずっと扶養に入っていた妻のほうが多い」ということも起きます。 厚生年金保険制度の老齢厚生年金(2階建て制度の2階部分)は会社員の長い夫のほうが圧倒的に多くなりますが、年金記録しだいでは、国民年金制度の老齢基礎年金(1階部分)は保険料を多く負担した会社員の夫より、専業主婦の妻のほうが多くなることがあります。
老齢基礎年金の計算方法
老齢基礎年金の計算方法は【図表1】のとおりで、40年(480月)保険料納付済期間があれば、満額78万100円(2019年度)で受給でき、40年ない場合はその分金額が減ることになります。その保険料納付済期間とは【図表1】の(1)のとおりです。
そのうち会社員として厚生年金にも加入し、厚生年金保険料を負担している期間については、2階部分の老齢厚生年金だけでなく、1階部分の老齢基礎年金の額にも反映されますが、保険料納付済期間として老齢基礎年金の計算の対象になる期間は、20歳以上60歳未満の期間に限定されています(【図表1】(1)の3)。
20歳から60歳までの期間であれば、老齢厚生年金の報酬比例部分と併せて老齢基礎年金が増えることになります。
夫が大学生時代に国民年金に加入していないと
1991年4月以降は、学生であっても20歳になれば第1号被保険者として国民年金に加入義務がありますが、1991年3月以前は大学生(昼間部)など一定の学生は加入が任意でした。
今、60歳台で、老齢年金を受給し始める世代の人は、大学生時代は任意であるために、国民年金に加入していない人も多く、大学を卒業して就職し、厚生年金被保険者として初めて年金制度に加入する人もいました。
そうなると、例えば、20歳になった月から大学卒業月まで36ヶ月ある人で、ちょうど3年分の未加入がある場合では、大学卒業後60歳まで勤務しても、その分、老齢基礎年金の額が少なくなります。
20歳から60歳までの480月のうちの、厚生年金加入444月分で計算されることになり、結果、夫の老齢基礎年金は72万1593円(78万100円×444月/480月)になります。
妻に40年納付済期間があると
一方、もし、妻が高校を卒業してから会社に勤務し、結婚後は60歳になるまで30年以上ずっと専業主婦であった場合、20歳以降の厚生年金加入期間(国民年金第2号被保険者期間)や、扶養に入って保険料負担のない第3号被保険者期間(【図表1】の4、1986年4月以降で20歳以上60歳未満が対象)は保険料納付済期間として計算されます。
このため、20歳から60歳まで当該期間であるとすると、妻自身は満額78万100円(78万100円×480月/480月)の老齢基礎年金を受給できます。結果、老齢厚生年金では夫よりかなり少なくなるものの、老齢基礎年金だけで比較した場合は先述の夫より金額が多くなります。
なお、夫が会社員として20年以上厚生年金に加入し、妻は厚生年金加入が20年未満であれば、妻の老齢基礎年金には、生年月日に応じた振替加算が加算されます(1966年4月1日以前生まれが加算対象)。結果、振替加算込みでは、妻の老齢基礎年金はさらに多くなります。
夫の60歳以上の勤務期間は老齢厚生年金として増える
大学を卒業して会社員を続けてきた夫が60歳以降も勤務する場合、60歳以降の期間は老齢基礎年金の計算の対象にはなりませんが、老齢厚生年金の経過的加算額(差額加算)として増えることになります(【図表2】)。
60歳で定年を迎え、継続雇用により厚生年金に加入すると、厚生年金加入月が合計480月に達するまでは、【図表2】の計算式で(1)は増える一方、(2)は増えないため、(1)から(2)を引いた額が経過的加算額として増額されます(なお、先述の高校を卒業して就職した妻についても20歳前の厚生年金加入期間は経過的加算額として計算されます)。
以上のように、夫と妻の年金加入記録しだいで老齢基礎年金、老齢厚生年金の内訳が変わります。一度、年金見込額とその内訳を確認してみると良いでしょう。
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
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