うつで会社に行けない…生活費や治療費はどうすれば?助かる制度と利用時の注意点
ファイナンシャルフィールド / 2019年10月8日 23時0分
うつ病は、厚生労働省の調査で100万人以上の患者がいるとされ、年々増加している精神疾患です。もし世帯主がうつ病にかかってしまったら、家計を維持しながらどうやって治療を続けていけばよいのでしょうか? 万一、うつ病を発症したときのため、公的な支援制度について知っておきましょう。
うつ病で休職が必要なときは傷病手当金で収入保障を受けられる可能性あり
うつ病は医学的な研究が進んできているものの、まだまだ周りに理解されにくい病気です。環境によるストレスが原因とされることもありますが、そもそもうつ病は脳の働きに何らかの問題が起きた状態であり、自分ではどうしようもできないことが多いのです。
うつ病にかかると会社を休職せざるをえなくなることもあり、収入面で心配になることもあるでしょう。有給休暇などの会社の制度を利用して、少しの間は生活に支障をおよぼさずに済むかもしれませんが、治療期間が長期にわたる場合もあります。
そんなときは健康保険から「傷病手当金」を受けられる可能性があります。
傷病手当金は病気やけがで仕事を休んだ日から連続して3日間の後、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給され、給料のおよそ3分の2が支給される制度です。最長1年6ヶ月まで支給されるため、その間にゆっくりとうつ病の治療をするのがよいでしょう。
申請は自分でもできますが、難しい場合は社会保険労務士を通して申請するとスムーズです。なお、国民健康保険の人は傷病手当金を受けられないので注意してください。
うつ病の治療費は自立支援医療制度で負担を軽減できる
うつ病の治療費も心配になるでしょう。うつ病は治療が長引くこともあるため、十分な収入がない期間は医療費が負担になるかもしれません。そのような負担を軽減してくれる公的な制度として「自立支援医療」があります。
自立支援医療は、身体障がい者や精神疾患に関する医療費の利用者負担が過大にならないよう、所得に応じてひと月あたりの負担額を設定するものです。適用されると精神疾患の通院医療費が最低1割負担で済むのです。
ひと月の医療費が7000円の場合、通常の3割負担なら2100円ですが、自立支援医療適用後は1割の700円が自己負担になるため、大きな治療支援になるでしょう。自己負担には1ヶ月ごとに所得に応じた上限が設けられており、通院が長引いても安心して治療を続けられる制度になっています。
うつ病で自立支援医療を受けるときの注意点
自立支援医療はうつ病患者にとって心強い制度ですが、いくつか注意点もあります。
・入院医療費は対象外
・公的医療保険が適用されない治療費は対象外
・精神疾患と関係のない治療費は対象外
・有効期間は1年だが、必要な場合は3ヶ月前から更新の申請が可能
・負担額の軽減を受けられるのは「指定自立支援医療機関」での受診等にかかる医療費
最後の指定自立支援医療機関は、指定を受けていない病院もありますので、通院の前にあらかじめ確認しておいたほうが良いでしょう。医療機関に直接確認できますが、居住している市区町村の担当課でも教えてくれます。
申請は市区町村の担当課で行いますので、窓口か電話で相談してみましょう。
うつ病で利用できるその他の制度
上記以外でもうつ病で利用できる可能性のある制度として「心身障害者医療費助成制度」や「労災補償」があります。
心身障害者医療費助成制度は、都道府県や市区町村が独自に実施する制度で、自治体によって対象者や助成内容が異なります。所得制限があったりうつ病患者が対象外だったりすることもあるため、市区町村の障害福祉課などに相談してみるとよいでしょう。
また、仕事が原因でうつ病を発症した場合、労災認定されると労災補償が受けられます。労災では自己負担なしに治療が受けられたり、給料の約80%が支給されたりします。職場環境によるうつ病が疑われる場合は労働基準監督署に相談してみましょう。
うつ病の治療は公的制度を活用して無理せず治したい
うつ病は年々増えている精神疾患であり、今や他人事ではない身近な病気です。本人に気力があっても自力で治すのが難しいこともあるため、これまで紹介した制度を可能な限り利用して焦らず治していきたいですね。
公的制度があることを知っておけば、もしものときでも治療に集中しやすいので、覚えておいて損はないでしょう。
<参考・出典>
厚生労働省「知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス」『うつ病』
全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき」
厚生労働省「自立支援医療」
執筆者:國村功志
CFP(R)、証券外務員一種
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