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在職老齢年金の廃止見送りって、一体どういうこと? 私たちの生活にどんな影響があるの?

ファイナンシャルフィールド / 2019年10月16日 22時50分

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在職老齢年金の廃止見送りに関する報道が、新聞各社でされています。「廃止」が見送られるということですから、「在職老齢年金」が存続するということになります。   「在職老齢年金」。この字を見る限り、仕事をしている高齢者がもらう年金だとわかります。その廃止が検討されていたとなると、働いている人のもらえる年金がなくなるかもしれなかった……と考えられますね。   しかし実はそうではありません。むしろ逆で、「在職老齢年金」が廃止されると、もらえる年金額が増える可能性があります。  

「在職老齢年金」という年金は“ない”

実は、「在職老齢年金」という名前の年金はありません。「在職老齢年金」とは制度名であり、「年金額をカットする」仕組みのことです。お勤めだった人が老後にもらえる厚生年金には、勤務を続けていて一定以上の収入がある場合、年金の一部をカットして年金額を減らす仕組みがあります。
 
おおまかに言うと、60代前半で、年金と給与の合計が年額336万円を超えると、その超えた分の半額に相当する金額分、年金がカットになります。65歳以降では、564万円を超えるとカットの対象になります(実際は、年金の基本月額、給与の総報酬月額相当額という金額で計算します)。
 
老齢年金の支給開始は、60歳から徐々に引き上げられているところで、支給されている人も現在は厚生年金だけですが、カットの対象となる基準額がそれほど高くありません。カットされた年金が後からもらえるということもありませんので、カットされないように、収入を抑えている人もいます。
 
年金がカットされる仕組みにもかかわらず、「○○年金」という名前が付いているので、誤解を招きがちです。かつては、一定以上の収入がある人は年金額がまったく支給されませんでしたが、一部をカットした上で支給するようにしたので、「○○年金」という名前になりました。
 
それでも、働いていると、収入によって年金がカットされることには変わりありません。国としては「収入が十分にある人は、少しガマンしてくださいね」ということなのでしょう。
 

「在職老齢年金」の廃止は年金財政にはマイナス

「在職老齢年金」という年金額をカットする仕組みは、「高齢者の勤労意欲をそぐことにつながっている」という批判があります。今では65歳までの定年再雇用は珍しくなくなりましたが、「在職老齢年金」の仕組みを考慮しながら、働き方を抑えている人は少なくありません。
 
国は現在、人生100年時代の働き方と、人手不足の解消の両方を念頭に、高齢者にも働いてもらう施策を推進しています。そこで「在職老齢年金」という「制約」を取り払うことを検討しているのです。
 
「在職老齢年金」がなくなるということは、仕事を続けて収入が多い場合でも、規定の年金額が受け取れるということです。仕事をする上での「制約」がなくなり、現役でバリバリ働く人が増えることでしょう。年金に頼らないで済むぐらいの収入を得られる人も増えるわけです。
 
ただ、こと年金財政という面では、マイナスに作用します。今までカットしていたものを、フルで支給するため、国全体でも年金の支給額は多くなります。「在職老齢年金」の制度を廃止することで、年金財政が悪化し、現在の若者が将来に受け取る年金額が少なくなる、という試算もあります。
 
結局、今回の改正では「在職老齢年金」という制度は残すものの、カットの対象となる基準額を引き上げて、対象者を少なくする方針のようです。玉虫色の改正と言えそうです。
 
高齢者が早々に年金に頼るのではなく、元気なうちは働いて給与収入を得るのは良いことです。しかし、それによって年金の支給額が増え、年金財政が悪化するのであれば、本末転倒です。「在職老齢年金」は、その意味も、その効果も難しい仕組みです。
 
執筆者:村井英一
国際公認投資アナリスト

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