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相続法改正で「預貯金の払戻し制度」が創設! 何がどう変わる?

ファイナンシャルフィールド / 2019年11月19日 9時15分

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前回から40年ぶりに大きく改正された「相続法」の改正ポイントについてご紹介しています。前回は自筆証書遺言の要件緩和についてお伝えしました。今回は「預貯金の払戻し制度」についてお伝えします。   相続が発生すると、金融機関からお金が引き出せなくなることはご存じだと思います。今回の相続法改正で、一定の条件のもと預貯金を引き出せる制度が創設されました。  

家族が亡くなった時、金融機関の口座は凍結される

人が亡くなると銀行など金融機関の口座は凍結されます。正確にいうと金融機関は口座の名義人が亡くなったことを知った時に口座を凍結します。
 
被相続人の預貯金も遺産分割の対象ですので、これまで、一度口座が凍結されると遺産分割について相続人全員が合意しなければ口座の凍結を解除できず、預貯金を単独で払い出すことができませんでした。
 
しかし、親族が亡くなるといろいろと費用がかかります。亡くなられた方名義の預貯金口座の資金が生活費であれば、1円も引き出せないのはとても困ります。葬儀費用も必要です。
 
相続債務、すなわち亡くなられた方に借金がある場合などに、債権者に返済する資金も引き出せなくなってしまいます。どうしても引き出さなければいけないような場合には、家庭裁判所の判断を受ける方法もありますが、時間もかかり「今必要なお金」を手当てすることは事実上できませんでした。
 
なぜ、口座は凍結されるのでしょうか? 原則として、相続は亡くなられた瞬間に発生します。被相続人の財産を確定するとともに、相続人同士での不公平やトラブルを防止するために口座は凍結されるのです。
 

預貯金の払戻し制度とは?

今回の改正で「預貯金の払戻し制度」が創設されました。しかし、金融機関の口座凍結は相続人間の公平性を維持する目的があり、無制限に引き出せるわけではありません。
 
改正により、預貯金について定められた範囲の金額内であれば、家庭裁判所の判断を経なくとも金融機関の窓口で払い戻すことができるようになりました。定められた範囲とは
 
相続開始時の預貯金の額×1/3×払戻しを行う法定相続人の法定相続分
 
です。ただし、ひとつの金融機関から引き出せるのは最大150万円までと定められています。また、あわせて改正された「家事事件手続法」の改正により、仮払いの必要性があると認められる場合には、ほかの相続人の利益を害しないと判断される限り、家庭裁判所の判断で仮払いが認められるようになりました。
 
これにより、遺産分割が完了する前でも故人の預貯金からの払出しが、これまでよりも容易に行えるようになりました。しかし、この改正で相続人となる人は当面の資金に困ることがないとはいえません。
 

金融機関の口座凍結が解けるわけではない

金融機関が最も危惧するのは、金融機関が共同相続人(相続人が複数いる場合のすべての相続人)のうちの1人に対し預貯金を払い出したことによって相続人間のトラブルに巻き込まれることです。
 
そのため、金融機関は払い出しをしようとする人が、間違いなくその権利を持つ人なのかどうかを厳重に確認することになります。
 
被相続人が名義人となっている預貯金について、遺産分割協議が終わるまでの間に払い出せるのは先述の範囲までです。まず払い出そうとする人は自分が間違いなくその権利がある人であることを自分で証明しなければなりません。
 
そのうち最も重要なのは払い出そうとする本人が正当な法定相続人であり、その法定相続割合を証明することです。そのためには故人の戸籍謄本を取り寄せ、故人と払い出す本人との関係を証明するだけでなく、他に相続人がいるか、いるならば故人とどのような関係なのかを明らかにしなければなりません。
 
払い出そうとする本人が被相続の配偶者である場合、配偶者は原則として常に相続人となるので比較的容易に払い出すことができるでしょう。しかし、払い出そうとする人が被相続人の子である場合は、ほかに子がいるか、何人いるか、認知されている婚外子がいないかなども調べる必要があります。
 
それにより法定相続人の人数が変わり、法定相続割合も変わってしまうからです。もし、被相続人に子がなく、兄弟姉妹が相続人になるような場合にはもっと複雑になり、戸籍を調べるだけで数週間かかってしまうこともあります。
 

まとめ

預貯金の払出し制度ができたことによって、これまで遺産分割が完了するまでまったく手を付けられなかった故人の預金を払い出すことができるようになり、当面必要なお金を確保しやすくなったことは確かです。
 
しかし、あくまでも緊急避難的な配慮に基づくものですので、相続人の誰かが代表して立て替えたり、生命保険を活用したりするなどの方法で資金手当てを行うほうが望ましいといえます。
 
仮に、相続放棄をする可能性がある場合などは、仮払いすることで単純承認したものとみなされ、後に放棄しようと思っても認められないことにもなりかねません。
 
相続発生直後の親族は何かと混乱していることかと思います。制度の利用にあたっては冷静に判断し、状況しだいでは専門家に意見を求めることなども重要です。
 
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役

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